【獣医師監修】老犬が立てないとき、後ろ足に力が入らないときはどうすべき?

歩くことが大好きだった愛犬が年とともに立てなくなってしまうのは、飼い主さんにとっても犬にとってもつらいことですよね。老犬が立てなくなったとき、どのように対処したらよいのでしょうか?ここでは動物のリハビリに詳しい獣医師、丸田先生にお話を伺います。一度立てなくなった犬でも、リハビリがうまくいけば再び歩けるようになることもあるので、ぜひ参考にしてくださいね!

老犬がうまく立てないときは病気が原因かも

高齢になった犬が歩けなくなるのは珍しいことではありません。しかし、中には病気が隠れているケースもあるので注意が必要です。愛犬がうまく立てなくなったときは「年齢のせいかな?」で片付けず、必ず動物病院で診てもらうようにしましょう。

関節疾患

骨と骨の継ぎ目である関節部分に痛みが出る関節疾患は、シニア犬でよく見られる病気です。関節が痛むことから歩くのを嫌がったり、寝ている時間が長くなったり、食欲が低下することもあります。投薬や注射で痛みを抑え、愛犬のQOL(生活の質)を維持することができるので、違和感に気付いたら早めに動物病院を受診しましょう。

関節疾患についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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椎間板ヘルニア

脊髄が圧迫される椎間板ヘルニアは、ダックスフンドやコーギーなどの特定の犬種がかかるもの、というイメージがあるかもしません。しかしどの犬種も、シニアになると発症する可能性があるので注意しましょう。発症すると痛みが出たり、麻痺が現れることもあります。麻痺があると足を引きずったり、ふらつきが見られるなど、歩行に違和感が出てくるようになります。

椎間板ヘルニアについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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脳の障害

脳炎や脳腫瘍などで脳に障害が出ているときも、うまく立てない、フラフラするなど、歩き方に違和感が現れます。特に脳腫瘍はシニア犬で比較的よく見られる病気です。脳の障害が悪化すると、歩けなくなるだけでなく様々な症状が現れる可能性があります。早めに動物病院を受診しましょう。

老化が原因で後ろ足に力が入らないときはどうすべき?

(画像:Instagram / @kayololo

老化が原因で歩けなくなることもあります。その場合、どのように対処したらよいのでしょうか?ここでは老化が原因で立てなくなっているときの対処法について解説します。

こんなときは要注意

高齢になって足腰の筋力が衰えてきたシニア犬では、以下のようなサインが見られます。

  • 太ももが細くなる。
  • ふらついたり、つまづいたりすることが増える。
  • 足を引きずる、前かがみで歩くなど、歩き方に違和感が見られる。
  • 座るときに足を崩して横座りをする。
  • 横たわるときにドサッと横たわるようになる。
  • 起き上がるまでに時間がかかる。
  • 階段の上り下りが苦手になる。
  • 後ろ足が棒のようにまっすぐ伸びている。(健康な場合は「く」の字型。)
  • 段差を踏み外す。
  • 背中が曲がっているように見える。
  • 腰が下がっている。(お尻の位置が下がっている。)

ただし、これらの変化が老化によるものなのか病気によるものなのかは見極めが難しいため、まずはかかりつけの動物病院で診てもらうようにしましょう。動物病院で「年齢によるもの」と診断されたら、お家できちんとケアをしてあげてください。

早めのケアが大切◎

年齢とともに足腰の筋力が衰えてくると、少しずつ自力で起き上がったり歩いたりすることができなくなっていきます。そのままの状態にしておくと筋力はますます衰え、食事の体勢やトイレの体勢を維持することが難しくなり、やがて寝たきりになってしまうこともあります。

シニア犬の場合、立てなくなってから短期間で寝たきりの状態になることもあるので、筋力の低下に気付いたら早めにケアしてあげましょう。

老犬の後ろ足のケア① 筋力を鍛える

ここでは老犬におすすめな筋力を維持する方法をご紹介します。一度立ち上がれなくなっても、筋力がつくと再び自力で立ち上がれるようになることもありますので、無理のない範囲で試してみてください。

お散歩

(画像:Instagram / @moyumori

愛犬がお散歩中にふらついたり、歩きたがらなくなる様子を見て、お散歩をやめたほうがいいのか悩んでしまう飼い主さんもいるでしょう。しかし、日々のお散歩で筋力を維持することができますし、愛犬の精神的な健康維持にも繋がります。体力が衰えても無理なくお散歩を楽しめるよう、お散歩に行く時間帯やコースを工夫してあげてください。

シニア犬のお散歩するときのポイントはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

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尚、自力で立ち上がれなくなっても、立ち上がりをサポートをしてあげると歩けることもありますし、お家の中では歩けなくても、お外に出ると歩くことができるケースもありますよ◎

リハビリで筋力アップ

動物病院のリハビリテーション科や老犬ホーム、リハビリ専用施設などで、筋力トレーニングをお願いできるところもあります。バランスボールを使ったトレーニングや関節に負担のかからないプールトレーニングなどを組み合わせて、愛犬の状態に応じて最適なトレーニングをサポートしてくれるでしょう。愛犬が体を動かすのが好きだった場合はこのような専門家を頼るのもおすすめです。

マッサージ

老犬の筋力を鍛えるにはマッサージも効果的です。硬くなった筋肉や関節を緩めて血流を良くし、関節の痛みや衰えた筋肉をケアすることができます。お散歩前のウォーミングアップにマッサージを取り入れるのもおすすめ。愛犬の背中やお腹、太ももや足先などを優しく撫でたりブラッシングをするだけでもマッサージの効果を得られます。

立ち上がりが苦手な場合は、ぜひ肉球マッサージを試してみてください。愛犬の指を広げるように、肉球を優しく押し上げるのがポイントです。マッサージのやり方や注意点はこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ合わせてご覧ください。

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老犬の後ろ足のケア② 過ごしやすい環境を整える

(画像:Instagram / @renrina.mk

シニア犬の筋力が落ちてきたときは、筋力維持のトレーニングと合わせて生活を見直すことも大切です。できるだけ愛犬の体に負担をかけないよう、過ごしやすい環境を整えてあげてください。

居住環境を見直して

筋力が落ちると、フローリングの上は滑って歩きにくくなります。今まで普通に乗り降りできていた段差もだんだん苦手になっていくでしょう。そうなっても、できるだけ今までと同じような生活が送れるように居住環境を見直してあげてください。床には滑にくいカーペットやタイルマット、人工芝などを敷き、玄関の段差やソファーなど愛犬が登りたがる場所にはスロープやステップを取り付けてあげましょう。

体重をしっかり管理

シニアになっても愛犬が食欲旺盛だと安心しますよね。しかし、だからと言って必要以上に食べさせすぎて肥満になってしまうと、足腰や関節にかかる負担がその分大きくなります。心臓や呼吸器への負担も大きくなりますし、糖尿病や尿路結石のリスクを高めることにも繋がるので、飼い主さんは肥満にならないようきちんと体重を管理してあげてください。

肥満のリスクとダイエットの方法についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。

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食べ物を工夫する

愛犬に与えているフードはきちんと年齢に合ったものを選んでいますか?シニア犬用に作られたフードは、健康な関節を維持するための栄養が配合されていたり、太りすぎないようカロリー調節がされていたりして、シニア犬の健康な暮らしをサポートしてくれます。

シニア犬におすすめなフードについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。

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また、筋力が衰えると食事を取る姿勢を維持することが難しくなるので、食事の時はごはんの器を台の上にのせてあげると食べやすくなります。

ハーネスなどの介護用アイテムもうまく活用して

(画像:Instagram / @rii.m915

愛犬が自力で立ち上がれないときや、歩行中ふらつくようになったときは、飼い主さんがうまくサポートしてあげましょう。愛犬の状態に応じて介護用アイテムを使用するといいですよ。

最初は介護用ハーネスを試してみて

介護用ハーネスとは、立ち上がりの補助やお散歩中の歩行補助、転倒防止に役立つアイテムです。介護用ハーネスは大きく分けると以下の3つのタイプがあります。

  1. 体全体を支えるもの
  2. 前足だけを支えるもの
  3. 後ろ足だけを支えるもの

立ち上がりだけサポートすれば自力で歩ける場合、後ろ足だけ支える部分ハーネスを選びましょう。自力で歩ける状態で体全体を支えるハーネスを利用すると、かえって筋力が衰える原因になります。

また、介護用ハーネスの中にはお尻の部分が覆われているタイプもあります。普段オムツをつけているならそれでもいいとですが、お外でトイレをさせたい場合は排泄できるデザインを選びましょう。

車椅子を使ってみるのもおすすめ

介護用ハーネスで支えるのが難しい場合は、犬用の車椅子を使ってみるのもおすすめです。車椅子にも2輪と4輪がありますので、愛犬の状態に合わせて最適な方を選んであげてください。車椅子は介護用ハーネスに比べて費用が高額なため、先輩飼い主さんや動物病院、老犬ホーム、トリミングサロンなどで相談してみるといいでしょう。試し乗りをさせてもらえたり、レンタルさせてもらえることもあるかもしれません。

犬用の車椅子については、こちらの記事で詳しく解説しているので合わせてご覧ください。

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寝たきりの老犬が吠える(鳴く)ようになったら

自力で立てなくなった犬が寝たきりになってしまうと、食事や排泄、寝返りのサポートなど様々な介護が必要となります。中には寝たきりになって、ずっと吠え続けたり鳴き続けたりする犬もいます。そんなときはどうしたらよいのでしょうか?

まずは動物病院へ

シニア犬が吠えたり、鳴き続けるのにはさまざまな原因が考えられます。思うように体を動かせなくなってストレスや不安を感じて鳴くこともありますし、飼い主さんに「水を飲ませて欲しい」「ごはんを食べさせて欲しい」などと訴えたいことがあって吠えることもあります。中には体の痛みや認知症が原因となっていることもあるので、むやみに叱らない方がいいです。きちんと原因を把握するためにも、まずはかかりつけの獣医さんに相談してみましょう。

老犬の吠えや夜鳴きに関してはこちらの記事で詳しく解説していますので、気になる方は合わせてご覧ください。

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マッサージや日光浴で気分転換を

寝たきりになった犬はストレスが溜まりやすいので、うまく気分転換させてあげる必要があります。お散歩好きな子であれば、カートや抱っこでお外に連れていってあげるだけでいい気分転換になるでしょう。マッサージには不安を解消する効果があるので、無理のない範囲で取り入れてみてください。

また、犬はひなたぼっこが大好きなので、日中は日当たりの良い場所に移動させてあげるといいです。朝きちんと起こして太陽の光を浴びせてあげることは気分転換になるだけでなく、生活リズムを整える効果も期待できます。ただし、自力で移動できない犬が日光浴をするときは、熱中症にならないよう飼い主さんが注意して見てあげましょう。

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老犬ホームなどの専門家を頼って

残念ながら色々な工夫をしても状況が改善しないこともあります。そうすると飼い主さんの方が精神的にも肉体的にも疲れてしまって、辛くなってしまうこともあると思います。もしかかりつけの獣医さんが気軽に相談できる相手なら、一度相談してみるとよいでしょう。何かアドバイスをもらえるかもしれません。

また、最近は老犬ホームのデイサービスや介護専門のペットシッターなど、要介護の犬と暮らす飼い主さんのためのサービスが少しずつ増えてきています。それらをうまく活用するのもおすすめです。上手に息抜きをしながら愛犬の介護と向き合ってください。

最後に

愛犬の異変にいち早く気付くことができるのは飼い主さんです。愛犬の歩き方や立ち方がいつもと違うと感じたら、動物病院で早めに検査しましょう。また、日頃から愛犬の筋力の強化や維持を心掛けて、積極的にお散歩に連れ出したりやマッサージをしてあげてください。