老犬は鍼灸も上手に取り入れて。鍼灸の効果や取り入れ方を獣医師が解説

最近は犬の治療に鍼灸を取り入れる動物病院も増えてきたので、なんとなくその存在を知っている方もいると思います。具体的にはどんなことをするのでしょう?鍼灸にはどんな効果があるのでしょうか?今回はペットの鍼灸について、東洋医学に詳しい獣医師の丸田先生にお話を伺いました。

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老犬に鍼灸がおすすめな理由

犬の鍼灸治療には様々な効果があります。病気を予防したり、血行を改善したり、認知症や麻痺などの症状にも効果があると言われています。しかも副作用がほとんどなく、体への負担も少ないので、特に治療の選択肢が狭くなりがちなシニア犬にはとてもおすすめです。一般的な動物病院での治療とあわせて取り入れるのもよいでしょう。東洋医学に詳しい獣医師をセカンドオピニオンに選ぶのもいいと思います。

犬の鍼灸とは

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鍼灸は東洋医学の一つ

一般的な動物病院では、西洋医学の考えに基づいて治療を行っています。鍼灸は西洋医学ではなく、東洋医学の治療法の一つ。人間の医療も西洋医学が主流となっているため、東洋医学と言われてもピンと来ないかもしれませんね。

けれど、東洋医学の考え方は意外と私たちの身近なところに存在しています。例えば目が疲れた時にツボを押したり、冷えた時に生姜を飲んだりするのは東洋医学の考えがベースになっていますし、病気にならないように日頃から免疫を高めておこうとする考え方は、まさに東洋医学の教えそのものなのです。

それぞれに得意分野がある

西洋医学では、体の中の悪い部分に直接アプローチし、手術や投薬で原因を取り除いて治療をするのが基本です。一方、東洋医学では体全体に働きかけて、体を健康な状態へ導くことを目的としています。

ガンのように検査で異常が見つかるもの、手術で切除できるものは西洋医学の得意分野ですが、反対に不眠やアレルギーのように、原因がはっきりとわからないもの、原因を取り除くことができないものに関しては、西洋医学では対症療法(症状を緩和するための治療)しかできません。このようなケースでも東洋医学なら治療をすることが可能です。

最近は人間の医療でも西洋医学と東洋医学を併用して治療するケースが増えてきています。それぞれにいい面があるので、西洋医学だけでどうにもならないときには、東洋医学を頼ってみるのもいいと思いますよ。

鍼灸の流れ

犬に鍼灸治療ができるのは獣医師なので、愛犬に鍼灸治療を受けさせたい時は鍼灸を扱っている動物病院を受診する必要があります。犬の鍼灸では、飼い主さんへの問診と触診を行い、その子の体の状態を見てから鍼灸治療に進みます。そして東洋医学の考え方に基づき、体のツボを鍼やお灸で刺激していきます。鍼とお灸のどちらを使うのか、もしくは両方使うのかは、体の状態を見た後で決定します。

老犬が鍼灸を取り入れると良いタイミング

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神経症状が出たときに

鍼灸は椎間板ヘルニアによる麻痺や、平衡感覚を司る前庭神経の異常によるめまい、斜頚(首が傾いてしまうこと)などに効果があります。他の病気が原因で麻痺やしびれが現れている場合でも鍼灸は効果的なので、病気の治療と並行して鍼灸で神経症状のケアを取り入れてみるのもよいでしょう。

足腰が弱ったときに

鍼灸は人間の関節炎やリウマチ、腰痛などに効果がありますが、それは犬の場合も同じです。シニア犬は関節にこわばりが出てきたり、椎間板ヘルニアや関節疾患などで体に痛みが出てくるようになります。高齢になって運動量が低下しているところに足腰が弱ってしまうと、余計に運動をしたがらなくなって、あっという間に寝たきりになってしまうこともあります。鍼灸には血行を促進し、体の痛みを和らげる効果があるので、愛犬の足腰が弱ってきたと感じたらぜひ一度試してみてください。

不眠や認知症などの症状に

西洋医学で具体的な治療法がない場合にも、鍼灸はおすすめです。原因に直接アプローチする西洋医学では、原因が明確にならなければ治療をすることができません。しかし、東洋医学では体全体の状態を整えるような治療を行うため、原因がはっきりわかっていない病気に対しても有効だと言われています。

シニア犬に多い認知症や、夜になっても愛犬がなかなか寝てくれないことに悩まされている方は、鍼灸を試してみるといいでしょう。

なんとなく元気がないときに

シニア犬はこれといった原因がなくても、「今日はいつもより調子が悪そう」「なんとなく元気がない気がする」「あんまりごはんを食べてくれない」という日が増えてきます。動物病院に連れて行くほどではなくても、そんな日があると心配になりますよね。

東洋医学では、この病気になる一歩手前の状況を未病(みびょう)と呼んでいて、未病の段階から治療を開始することができます。免疫力を高めて活力を取り戻せるだけでなく、病気を予防する効果もあります。

西洋医学で手の施しようがないと言われたときに

治療の難しい病気が見つかったとき、西洋医学ではもう手の施しようがないと言われたときは、東洋医学を頼ってみるのも一つの手です。鍼灸をすることで、重症の状態から症状が軽くなったり、今までぐったりして動けなかった子がごはんを食べられるようになったりするケースも報告されています。

他にも様々な効果がある

シニア犬になると体が冷えやすくなり、特に足先が冷たくなってしまう子は多いです。また、血行が悪くなって体の末端の方まで栄養が行き届かず、被毛が薄くなったり、毛が抜けやすくなったりします。鍼灸には血行を促進する効果があるので、体の隅々まで血液を巡らせ、こうした問題を解消してくれるのです。

鍼灸が老犬に優しいと言われる理由について

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体本来の力を引き出す治療

鍼灸をすると、細胞に小さな傷がつきます。傷と言っても犬自身も気づかないほどの小さなものですが、体はこの傷を修復しようとして免疫の働きを活性化します。その結果、自然治癒力が高まり、免疫力が向上するのです。

薬のように科学的に作られたものを取り入れるのではなく、体が本来持っている力を引き出すことで健康な状態に導くものなので、副作用が少なく、体への負担も少ないと言われているのです。

麻酔なしでできる

鍼灸は麻酔をする必要がありません。全身麻酔には血圧低下や呼吸困難などの副作用があり、高齢になるとこうした副作用が大きく現れることもあります。鍼灸は全身麻酔をしなくてもできるので、シニア犬の体に負担をかけずに施術することができるのです。

痛みのない施術

鍼で体を刺激すると聞くと、「なんだか痛そう。」と感じる方もいると思います。しかし、鍼治療で使用するのは髪の毛よりも細い鍼。極細の鍼で皮膚の表面だけを軽く刺激するので、痛みはほとんどありません。もちろん、出血することもありません。お灸もじんわりあたたかさを感じる程度の熱なので、火傷をするようなこともありません。

施術に慣れるまではぎこちない犬もいますが、ほとんど犬がおとなしくしていて、中には気持ちよさそうにリラックスしている子もいます。

鍼灸の取り入れ方

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愛犬のケアに鍼灸を取り入れるなら、東洋医学に詳しい獣医師を探しましょう。まずはかかりつけの動物病院に相談してみるといいと思います。かかりつけの動物病院が鍼灸に対応していない場合でも、東洋医学に詳しい獣医師を紹介してもらえることがあります。

また、ペットの東洋医学に特化したサイト『一針多助』では、鍼灸治療に対応している動物病院を検索することができます。もし、かかりつけの獣医さんから紹介してもらえなかった時は、こうしたサイトでセカンドオピニオンを探すのもよいでしょう。

最後に

鍼灸は東洋医学で用いられる治療法の一つで、血行促進、免疫力向上など様々な効果があります。特にシニア犬で、体力や免疫力が低下している場合、慢性的な痛みや神経症状にお悩みの場合は、治療の選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。