【老犬のための筋力トレーニング】お家で気軽にできる筋トレをご紹介します!

シニア犬は運動量が低下し、それに伴い筋肉量も徐々に落ちていきます。高齢になって筋肉が落ちるのはある程度仕方のないことですが、できるだけ筋力をつけてあげたいと考える方も多いでしょう。そこで今回は、犬の介護やリハビリに詳しい獣医師の丸田先生に、自宅でできるおすすめの筋トレ方法について詳しいお話を伺いました。

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シニア犬になって筋力が落ちるとどうなるのでしょう?

(画像:Instagram/ @alotofraisingrans

立ち上がりが苦手になる

足腰の筋力が衰えると、立ち上がるまで時間がかかったり、ふらつきがでたり、自力で立ち上がれなくなったりします。体を起こすのが億劫になり、トイレや喉の渇きを我慢するようになることもあります。そうして動きたがらなくなると、ますます筋力が衰えてしまうという悪循環に陥ってしまうでしょう。

血行が悪くなる

筋肉は心臓と同じく、血液を体に送り出すポンプの役割を果たしています。そのため、筋肉が衰えると血行が悪くなって、体が冷えやすくなったり、胃腸機能が低下したりします。また、運動量が減って寝ている時間が増えると、ますます血行が悪くなって皮膚の状態が悪化しやすくなり、床ずれのリスクも高まります。

トイレの失敗が増える

足腰の筋力が衰えると、トイレに行こうとして間に合わなかったり、体勢を維持できずに排泄物の上に尻もちをついてしまったりして、トイレの失敗が多くなります。このような時は愛犬がトイレしやすい環境を整えてあげると同時に、筋力もしっかりつけてあげられるといいですね。

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食欲が低下することも

筋力が落ちると食事の態勢を維持することがだんだん難しくなっていきます。食べること自体が大変になって、食欲が衰えるケースも珍しくありません。また、体を動かす時間が短くなると、消費カロリーが減ってお腹も減りにくくなります。食欲の低下は体力の低下に繋がるため、できるだけ早めに対策を講じておきたいところです。

寝たきりになるケースも

シニア犬は立てなくなってから短期間のうちに寝たきりになってしまうことがあるので注意が必要です。寝たきりになると愛犬のQOL(生活の質)は大きく低下し、飼い主さんのお世話も大変になります。もちろん、寝たきりになっても幸せに暮らしている子はたくさんいますが、できるだけ自力で生活できるよう早めにケアしてあげましょう。

シニア犬の足腰が弱ってきた時の特徴を教えてください

お昼寝中の老犬

(画像:Instagram/ @kayololo

一度筋力が衰えても、しっかりリハビリすることで再び筋肉がついて、今までと変わらない暮らしができるようになることもあります。足腰の筋力が衰えると以下のようなサイン が現れるので、ぜひチェックしてみてください。

  • 太ももが細くなる。
  • ふらついたり、つまずいたりすることが増える。
  • 足を引きずる、前かがみで歩くなど、歩き方に違和感が見られる。
  • シニアになってから座るときに足を崩して横座りをする 。
  • 横たわるときにドサッと横たわるようになる。
  • 起き上がるまでに時間がかかる。
  • 階段の上り下りが苦手になる。
  • 後ろ足が棒のようにまっすぐ伸びている。(健康な場合は「く」の字型。)
  • 段差を踏み外す。
  • 背中が曲がっているように見える。
  • 腰が下がっている。(お尻の位置が下がっている。)
  • お尻が小さくなる。

筋力トレーニングをする上で大切なことを教えてください

きょとんとした老犬

(画像:Instagram/ @ayae_k

シニア犬とトレーニングをする上で何よりも大切なのは、「絶対に無理をしない」ということです。無理なトレーニングは愛犬の体だけでなく、心にも大きな負担をかけてしまいます。愛犬に健康でいてもらうためにやっているはずのトレーニングがストレスになってしまっては、本末転倒ですよね。
おやつやご褒美を使って、愛犬の「楽しい」という気持ちを上手に引き出してあげましょう。また、飼い主さんの楽しい気持ちは自然と犬にも伝わります。飼い主さん自身が愛犬とのトレーニングの時間を楽しむことも忘れずに。ぜひ一緒に楽しみながら取り組んでみてください。
ちなみに、お外やお散歩が好きな子の場合は、毎日のお散歩でも十分筋肉を鍛えることが可能です。こちらの記事ではシニア犬に優しいお散歩の仕方を紹介しているので、あわせてご覧ください。

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筋力維持におすすめなお散歩コースはありますか?

走る老犬

(画像:Instagram/ @turbo_dad )

芝生のお散歩

踏ん張る力が弱くなって、コンクリートの上を上手に歩けなくなっても、芝の上ならしっかりと歩けることがあります。芝生には程よいクッション性があり、適度に爪が刺さるので踏ん張りやすいのです。芝生を歩いているうちに筋肉がついて、普段のお散歩も楽しめるようになる可能性があります。近くにお散歩できる芝生エリアがあったらぜひ連れて行ってあげてください。

砂浜のお散歩

踏ん張りやすいのは砂の上も同じです。歩くたびに適度に沈み込むので、しっかり体を支えてくれますし、関節にも優しいです。シニア犬の足腰に適度な負荷をかけることができるでしょう。
ただし、砂浜のお散歩は足を取られてしまう分、体力がない子にとっては少しハードかもしれません。そんなときは水で固められた波打ち際の方が歩きやすいと思います。愛犬の状態に応じて最適なお散歩エリアを選んであげたいですね。

 

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坂道のぼり

シニア犬は、後ろ足から弱ってくる場合が多いです。そこでおすすめなのが坂道のぼり。上り坂は後ろ足に適度な負荷がかかるため、いいトレーニングになります。お散歩の途中に緩やかな坂道を見つけたら、無理のない範囲でぜひ登ってみてください。
ただし、体力がない子は坂道を嫌がって歩かなくなってしまうことがあります。そんなときは無理せず、歩きやすい平らな道を選んであげましょう。

階段は注意が必要

階段を歩くときは、愛犬の様子を確認してみてください。足の力だけで上れる高さの階段なら、いいトレーニングになるでしょう。しかし、体全体でぴょんぴょん飛ぶように上らないといけない場合は、腰に負担がかかる可能性があるので避けたほうが無難です。
一方、階段のくだりは肩に大きな負担 がかかる上、踏み外した時に落下の可能性があるので、特に体力が落ちている子は避けてください。他のルートを探したり、階段をおりるときだけ抱っこしたりしてあげるとよいでしょう。

お家の中でできるトレーニングはありますか?

肩に寄り添う老犬

(画像:Instagram/ @aim_mai

お外に出るのが苦手な子や、雨などでお外に出られない時は、お家の中で上手に体を動かせるといいですよね。実は身近なものを使って、お家の中でできるトレーニングもたくさんあります◎

体幹トレーニング

体幹とは胴体を支えている筋肉のこと。体幹が衰えると歩くときにふらついてしまったり、食事の態勢を維持するのが難しくなったりします。無理のない範囲で鍛えてあげましょう。
体幹トレーニングにはクッションを使います。クッションをいくつか並べて道を作り、おやつなどで誘導しながらその上をゆっくり歩かせてみてください。バランスを取ろうとして自然と体幹が鍛えられます。
すでにふらつきが出ている子や足元がおぼつかない子の場合は、ひとりで歩かせると転倒の恐れがあります。まずは前足か後ろ足のどちらかをクッションに乗せて、その場で少し体を揺らしてあげるとよいでしょう。もう少しハードルを上げるなら、4本足全てをクッションに乗せたまま体を揺らすと 、負荷を高めることができます。ただし、転ばないように必ず飼い主さんが付き添ってあげてください。

 

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スクワット

足を鍛えるならスクワットがおすすめです。スクワットというとものすごいトレーニングのように思えるかもしれませんが、内容はとっても簡単。立ち姿勢とおすわり、伏せを繰り返すだけです。おやつタイムの時などに、ぜひ取り入れてみてください。上手にできた時は思いっきり褒めてあげましょう。
ただし、関節に痛みがある場合はこのトレーニングで痛みが悪化してしまう可能性があるので控えてください。

後ろ足を鍛えるトレーニング

後ろ足を鍛える方法はいくつかありますが、ここでは二通りのトレーニング方法をご紹介します。まず一つは、立ち姿勢の状態で前足だけクッションにのせる方法。おやつを使って上手に誘導してください。じわじわと後ろ足に体重が乗るので、無理のない範囲で何度か繰り返すとよいでしょう。愛犬がおやつに夢中になってくれれば、楽しく鍛えることができますね。

 

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もう一つは、棒をまたがせる方法です。適度な太さと長さの棒であればなんでもOK。はじめは棒を床に置いた状態からスタートします。棒をまたいで歩くよう、おやつを使って誘導してください。棒をまたぐときに足を上げる必要があるので、足の付け根から筋肉を動かすようになります。徐々にクッションや本などを使って高さを出していくと、無理なく鍛えることができますよ◎

その他、みんなが実践しているトレーニングをご紹介します!

足腰に優しいスイミング

 

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泳ぐのが得意なパピィちゃん。水の中は浮力があるので、関節に負担をかけることなく体を動かすことができます。水を怖がらない子は、定期的に泳がせてあげるといいでしょう。ただし、若い頃泳ぎが得意だった子でも、年をとって体力が落ちてくると、溺れてしまう恐れがあります。水に入る時は必ず犬用ライフジャケットを着用し、飼い主さんがそばで見守るようにしてください。

水中トレッドミル

 

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黒豆ちゃんが使っているのは、犬のリハビリ施設などに設置されている「水中トレッドミル」。水の浮力を利用しながら無理なく鍛えることができるトレーニング装置です。こうした専門施設は全国でもまだまだ少ないですが、専門家の指導のもと愛犬にとって最適なトレーニングをさせてあげられるのが魅力です。

SUPで体幹トレーニング

 

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海が大好きなケンタロウちゃん、なんとSUPの名人なのです!確かにSUPはボードの上に乗っているだけで体幹が鍛えられそうです。大好きなママさんと一緒にSUPを楽しめるなんて、とっても素敵な趣味ですね♡

トレーニングの前後はマッサージを取り入れる

ヘッドマッサージ中の老犬

(画像:Instagram/ @reon_mom

シニア犬になって寝ている時間が長くなると、体が固まって関節もこわばりやすくなっています。寝起きすぐのトレーニングは避け、トレーニングの前は準備運動を兼ねて体を優しくマッサージしてあげましょう。
トレーニングの後も疲れが溜まらないよう、マッサージを取り入れて。マッサージは愛犬とのよいスキンシップになるだけでなく、体の異変の早期発見にも繋がります。

最後に

一度筋力が衰えて思うように体を動かせなくなってしまっても、トレーニングをしているうちにまた筋肉がついて、元気に動けるようになることもあります。犬も飼い主さんも無理のない範囲で、ぜひ楽しみながらトレーニングを取り入れてみてくださいね。