シニア犬フードの選び方は?老犬に必要な栄養素を獣医師が解説!

年を取った愛犬に健康でいてもらうためには、日々の栄養管理が非常に大切です。年齢に応じて最適なフードを選び、愛犬の健康を栄養面からサポートしましょう。ここではシニア犬用フードの特徴や選び方について解説します。

愛犬がシニアになったらフードの切り替えを

愛犬が年を取ってきたと感じたら、シニア犬用フードへの切り替えを検討しましょう。年齢によって最適なカロリー摂取量は変化しますし、若い頃とは食の好みが変わることもあるからです。またシニア犬用のフードは、シニア犬に不足しがちな栄養素をバランスよく配合しているものが多く、愛犬の健康を維持するためにもフードの見直しは必要です。

小型犬であれば、一般的には7歳頃からシニア期と言われます。ただ、年の取り方には個体差があるので、健康診断などで獣医師からアドバイスをもらいつつ、愛犬の状況に合わせて最適なフードを選びましょう。

市販のシニア犬用のフード、成犬用と何が違う?

シニア犬用として販売されているフードは、成犬用のフードとどのような点が違うのでしょうか?ここではシニア犬用フードの特徴をご紹介します。

カロリーの違い

一概にシニア犬といっても、シニア期に入ったばかりの7歳頃とハイシニアといわれる12歳頃では、必要なカロリー摂取量は大きく異なります。

シニア期に入ったばかりの頃は運動量が低下し、代謝機能も衰えることから、多くの犬が若い頃よりも太りやすくなります。また、まだまだ食欲旺盛な時期でもあるため、この時期のシニア犬に向けて作られたフードは、食事の量を減らすことなく体形を維持できるよう、カロリー控えめに作られていることが一般的です。

一方、ハイシニア期の犬は消化吸収の機能が衰えることにより、栄養をうまく吸収できません。食べてもどんどん痩せてしまう上、食欲も徐々に衰えていきます。そのため、この世代のシニア犬に向けて作られたフードは高カロリーで、消化・吸収しやすいよう工夫がされています。

シニア犬に不足しがちな栄養素が強化されている

シニア犬に不足しがちな栄養素がバランスよく配合されている点も、シニア犬用フードの特徴です。含まれる栄養素はフードによってさまざまですが、関節をケアできるフードや免疫力を維持できるフードが多く見られます。中には認知症予防に効果があるとされる成分を配合したものや、歯周病予防のために歯石がつきにくい特殊な形状をしているものもあります。

老犬におすすめのフードは?

ここまで、犬の年齢に応じてフードを切り替える必要性についてお伝えしてきました。ただ、シニア犬用のフードにもたくさんの種類があるので、何を選べばいいのか迷いますよね。そこでここからは、愛犬に最適なフードを選ぶ際に何を基準にすればいいのか解説していきます。

良質なタンパク質が含まれているフード

犬の体はタンパク質からできている

犬の体のもととなっているタンパク質は非常に多くの種類があり、それぞれ異なる役割を持っています。体を動かす筋肉や食べ物を消化・吸収する消化管、体の健康を守ってくれる免疫細胞も、全てタンパク質からできています。そのため、良質なタンパク質はシニア犬にとっても重要な栄養素の一つで、必要摂取量は成犬と同等かそれ以上とも言われています。

タンパク質を構成しているアミノ酸が重要

では、良質なタンパク質が含まれているかどうか、どのように見極めたらいいのでしょうか?そのことを考えるには、タンパク質を構成しているアミノ酸について理解しておく必要があります。タンパク質を構成しているのはアミノ酸です。タンパク質はアミノ酸が鎖のように連なってできています。アミノ酸は全部で20種類しかありませんが、繋がり方の違いによって様々なタンパク質を作り出しています。

<イメージ図>

幅広いタンパク源を取り入れる

食事に含まれるタンパク質は、消化の過程でアミノ酸に分解され、体内に吸収された後、再びタンパク質として再合成されます。つまり、このアミノ酸を幅広く、バランスよく取り込むことが大切なのです。偏ったタンパク源よりも様々なタンパク源を組み合わせた方が、バランスよくアミノ酸を取り込むことができるので、動物性タンパク質と植物性タンパク質を複数組み合わせているフードを選ぶことが大切です。

関節ケアができるフード

関節トラブルはシニア犬によく見られる疾患の一つです。特に股関節形成異常や膝蓋骨脱臼(パテラ)を持っている場合は、年を取ってから関節に痛みが出やすいので、関節ケアができるフードを選ぶといいでしょう。コラーゲン、グルコサミン、コンドロイチンなどの成分を積極的に取り入れているフードがおすすめです。

必須脂肪酸が含まれているフード

体の中で合成できず、食べ物から摂取する必要のある脂肪酸を必須脂肪酸といいます。中でもオメガ3脂肪酸(DHA、EPA、αリノレン酸)とオメガ6脂肪酸(リノール酸)は、犬にとってさまざまな効果があると言われており、積極的に配合しているフードが数多く登場しています。

特にオメガ3脂肪酸は、皮膚や被毛、心臓や血管・血液、脳、関節や足腰の健康維持など、シニア犬にとって嬉しい効果が期待できるため、積極的に摂取したい栄養素の一つです。

グルテンフリーのフードは本当にいいの?

最近はグルテンフリー(小麦不使用)やグレインフリー(穀物不使用)のフードが非常に人気ですよね。「犬は穀物に含まれる炭水化物を消化できない」という理由から、これらのフードは大人気となりました。

確かに、生の穀物に含まれる炭水化物をそのまま食べても、犬は消化することができません。しかし、ドッグフードに含まれている穀物由来の炭水化物は、製造過程で加熱され、犬の体内でも問題なく消化吸収できるようになっています。そのため、穀物アレルギーさえなければ、グルテンフリーに特にこだわる必要はありません。特に食欲の衰えが見られるシニア犬の場合、グルテンの有無より食いつきを重視してあげることの方が大切です。

シニア犬にフードを与える際の注意点

(画像:Instagram / @hanahana.shii

愛犬に適した食生活を整えるためには、シニア犬用という点だけにとらわれ過ぎず、愛犬にとって最適なフードを選ぶことが重要です。ここではシニア犬にフードを与える際の注意点についてまとめました。

愛犬の状態に合わせて適切な栄養素を取り入れて

フードを切り替えるタイミングや最適なフードの選び方は、その犬の状態によって異なります。たとえば、もともと食が細く痩せ型の体格の犬は、年を取ったからと言って無理に低カロリーのシニア犬フードに切り替える必要はありません。一方、ハイシニア期であっても肥満気味の犬には、低カロリーのフードが適している場合もあります。

また、歯の健康を維持するためには、歯石が付きにくいドライフードが望ましいとされますが、食欲が落ちてきてドライフードを残してしまう犬にとっては嗜好性の高いウェットフードの方が適した食事といえます。

このように適したフードは犬によってそれぞれです。愛犬の状態に合わせて、必要な栄養素がしっかりと取れるものを選びましょう。自分だけで判断しにくいときは、かかりつけの獣医師に相談するのがおすすめです。

与えすぎに注意して

愛犬が徐々に年を取っていく様子を見て、不安な気持ちに襲われる飼い主さんもいらっしゃると思います。しかし「食欲があるのは元気な証拠!」と、必要以上に食べさせてしまうと、適正体重を大幅にオーバーしてしまうこともあるので注意しましょう。

肥満になると、関節や呼吸器にかかる負担が大きくなったり、心臓病や糖尿病などの病気にかかりやすくなるなど、様々なリスクが考えられます。低カロリーのシニア犬用フードも、与えすぎれば当然カロリーオーバーになってしまうので、体重を増やしすぎないための食事量の調節は、フードの種類を問わず必要です。

病気の治療中の場合は必ず獣医師に確認して

一般的にはシニア犬に良いとされている成分も、持病があると病気を悪化させてしまう可能性があります。持病がある場合は絶対に自己判断でフードを切り替えたりせず、必ずかかりつけの獣医師に相談しましょう。

また病気によっては、日々の食事から必要な栄養をバランスよく取り入れることが難しくなることもあります。そんなときは療法食を取り入れることで栄養管理がしやすくなります。療法食を導入する際も、必ず獣医師のアドバイスのもとで切り替えるようにしましょう。

シニア犬用のフードに切り替える際の注意点

愛犬にとって最適なフードを選んだら、いよいよフードの切り替えです。シニア犬のフードの切り替えは成犬の時より慎重に行う必要があります。ここではシニア犬のフードの切り替え方についてご紹介します。

※ここで記載しているのは一般的なフードの切り替え方法です。療法食へ切り替えるときは、獣医師の指示に従ってください。

3〜4週間かけて徐々に切り替える

成犬のフード切り替えの場合、初日は1割、2日目は2割といったペースで新しいフードの割合を増やし、1週間~10日程度でフードの切り替えを行うのが一般的ですが、シニア犬の場合はもう少しゆっくりとしたペースで切り替えます。3~4週間かけて徐々に切り替えるイメージで、最初は3〜5%程度からはじめて、少しずつ新しいフードの割合を増やしていきましょう。

フードを変えたあとは体調の変化に注意

フードの切り替えを開始したら、体調に変化がないか注意して観察しましょう。軟便や下痢など体調に変化が現れた場合は、いったん元のフードに戻して様子を見ます。元のフードに戻しても軟便や下痢が続くようであれば、動物病院へ連れて行くようにしましょう。

体調が完全に回復したら、もう一度新しいフードを混ぜてみます。2度目の切り替えを行う際は、1度目の切り替え時よりさらに少量ずつ混ぜて様子を見ましょう。再び体調が悪くなる場合は、新しいフードが愛犬の体に合っていない可能性もあります。一度体調の回復を待って、別のフードを試してみるとよいでしょう。

年齢とともに食欲が低下したら…

(画像:Instagram / @wankorokoro_

高齢になった犬の食欲が低下するのは珍しいことではありません。しかし食べる量が少なくなると摂取できる必要な栄養素も不足してしまうので、食事の内容を工夫する必要があります。愛犬の食欲が落ちたときの対処法については『老犬の食欲が落ちたとき、食欲を促すためにできること』の記事で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。

最後に

犬も年を取ってくると色々な変化が現れるようになります。愛犬に変化が現れたときは「年だから仕方ない。」で終わらせず、変化に応じて最適なサポートをしてあげてください。フード選びもその一つ。愛犬が年を取ってきたと感じたら、フードの見直してあげましょう。