シニア犬は様々なケアが必要ですが、寝たきりになってしまうとさらに多くのサポートが必要となります。ここでは寝たきりになった犬に必要なケアをまとめています。かかりつけの獣医さんに相談しながら、最適なサポートをしてあげてください。
老犬介護の基本
できないことだけサポートする
弱ってしまった愛犬の姿に、「できることはなんでもしてあげたい」と考える飼い主さんもいるでしょう。しかし、介護の基本はできていないことだけをサポートすることです。なんでも手助けしてしまうと愛犬のためになりません。
一度寝たきりになっても、適切な介護やリハビリによって再び歩けるようになることもあります。老犬介護の基本的な考え方については『老犬の介護は何が必要?介護の基本的な考え方と役立つ介護用品』で詳しくご紹介しているので、合わせて読んでみてください。
ストレスを溜めまないこと
愛犬が寝たきりになってしまった様子をそばで見ていると、つらくなるときもあるでしょう。精神的な苦しみを感じることはもちろん、体力的にも苦しくなる時があると思います。特に飼い主さんが高齢の場合や、体の大きな犬が寝たきりになってしまったときは、飼い主さん側の負担が大きくなってしまいます。介護の疲れから飼い主さんがストレスを溜め込んでしまうのは、飼い主さんにとっても犬にとっても不幸なこと。
疲れた時はかかりつけの獣医師に相談したり、老犬ホームを頼ってみるのもおすすめです。老犬ホームにはデイケアのサービスもあるので、うまく活用するとよいでしょう。老犬ホームについては『愛犬を手厚く介護してくれる老犬ホーム。施設選びのポイントは?』の記事で詳しく解説しているので、興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。
寝たきりの犬は床ずれに要注意!
愛犬が寝たきりになったとき、まず注意しなければならないのは床ずれです。床ずれは飼い主さんの工夫で防ぐことができますので、かかりつけの獣医師にも相談しながら、床ずれしない環境を整えてあげてください。
床ずれとは
寝たきりの状態でずっと同じ場所が圧迫されていると、皮膚に血液が通わなくなり、その部分が壊死してしまいます。これが床ずれです。進行が早く、一度床ずれを起こしてしまうと再発しやすいため、愛犬が寝たきりになってしまったらすぐに予防してあげてください。
骨が出っ張っている肩、ひじ、腰、かかとなどの部分は床ずれができやすいため、特に注意して見てあげる必要があります。皮膚が赤くなっていたり、皮膚が湿っていたりするのは床ずれの初期症状なので、気づいたらすぐに動物病院で診てもらいましょう。早期治療により悪化を防ぐことができます。
寝返りのサポートが必須
床ずれができるのは、長時間同じ部分が圧迫されることが原因なので、定期的に寝返りのサポートをしてあげることで予防できます。2~3時間を目安に、愛犬の体勢を変えてあげましょう。
寝返りをさせるときは、仰向けにしないよう気をつけて。寝たきりの犬にとって、仰向けの体勢は内臓に負担がかかってしまいます。可能であれば一度立たせた状態から、難しい場合は伏せの体勢にして後ろ足を曲げておから、反対側を向かせるようにしましょう。デリケートな老犬の皮膚を守るため、引きずったりこすったりしないように気を付けることも大切です。
床ずれ防止グッズも活用して
寝返りのサポートは毎日必要なので、飼い主さんの負担を押さえる工夫も大切です。頻繁に寝返りのサポートをすることが現実的に難しい場合は、床ずれ防止の効果が期待できるグッズをうまく活用してください。体重による圧力を分散してくれる「床ずれ防止マット」を使うと、寝返りの回数を減らすことができます。また、床ずれができやすい箇所を部分的に保護できる床ずれ防止クッションもあるので、愛犬の状態に合わせて選びましょう。
床ずれの予防や治療法については、『寝たきりの犬は床ずれ(褥瘡)に要注意!寝返りのサポートやマットで予防して』の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
マッサージで血行促進を
血流の不足によって引き起こされる床ずれを防ぐためには、血行促進のマッサージも効果的です。強く押す必要はありません。デリケートな老犬の肌を傷つけることのないよう、優しく撫でるようにマッサージしてあげてください。愛犬とのスキンシップを兼ねて、毎日できるといいですね。
寝たきりの犬の食事は焦らないことが大原則
(画像:Instagram / @pino_hana )
寝たきりになった犬は食欲が低下することも多いです。そうなると飼い主さんの方が不安になってしまうかもしれませんが、寝たきりの犬の食事は焦らないことが大切です。ここでは寝たきりの犬の食事事情について解説します。
食べることはとっても大切
ハイシニアと言われる高齢の犬は、消化吸収機能が衰えることからきちんと食べていても痩せやすくなります。そのため、しっかりカロリーと栄養を摂取できる、消化吸収の良いフードを食べさせる必要があるのですが、寝たきりになった犬は食欲が落ちてしまうケースも少なくありません。
急に食欲が低下した場合は病気が隠れている可能性もあるので、できるだけ早くかかりつけの獣医師に相談してみましょう。痛みが原因で食欲が落ちている場合には痛みを和らげる処置をしてくれますし、食欲を維持するためのアドバイスをもらえることもあります。
だけど絶対無理しない
体力をつけるためにも、しっかりごはんを食べることはとても大切です。しかし、なんとか食べてほしくて飼い主さんが必死になりすぎると、犬にとって負担になってしまう場合もあります。食事の体勢を取ることも、ものを飲み込むことも、寝たきりの老犬にとっては大変な作業です。愛犬のペースに合わせて、絶対に無理しないようにしましょう。
また、愛犬が食べてくれないことに落ち込んだり、悲しんでいたりすると、犬は敏感にその雰囲気を察知します。食事の時間が暗くなると、さらに食欲が落ちてしまうこともあるので、つらい気持ちはグッと堪えて、できるだけ楽しい雰囲気を作ってあげてください。
食事のサポート、どうしたらいい?
自分で食べられるなら体勢をサポート!
寝たきりになってしまった犬でも、飼い主さんに支えてもらって食事の体勢を取ることで、自分で食事できるケースもあります。そんなときは飼い主さんがしっかり支えて、できるだけ自分で食べさせてあげてください。
首の筋力が落ちてくると床に置かれた食器まで顔を下げるのが大変になります。少し高さのある台などに食器を乗せてあげると食べやすくなるので、ぜひ試してみてください。犬の食べやすさや飼い主の扱いやすさを考えた介護用のフードボールなどもあるのでチェックしてみるとよいでしょう。また、床がフローリングの場合は滑り止めを敷いてあげることで食べやすくなります。
自力での食事が困難になったら
体勢をサポートしても自力で食事をすることが困難になったときは、フードを口の中に入れてあげる必要があります。スプーンに一口分のフードをすくったらゆっくり口の奥へ入れ、舌の上にそっとのせてあげましょう。いきなりスプーンを口に入れると驚かせてしまうため、まずはフードを鼻に近づけて匂いを感じさせたり、スプーンで軽く口に触れたりして、食事の時間であることを知らせてあげます。介護用のスプーンなどもあるので使いやすいものを選んでくださいね。
流動食は道具を使って
飲み込む力が弱った犬には流動食を与える場合もあります。流動食に切り替えるタイミングや切り替え方については、かかりつけの獣医師に相談しながら進めましょう。
流動食を与える時は、シリンジやスポイトなどの道具を使って一口分ずつ口に入れてあげます。犬の介護専用のものもあるので、使いやすいものを見つけられるといいですね。流動食がシリンジに詰まってしまうときは、ミキサーなどを使って滑らかな状態にすると与えやすくなります。
また、流動食を作るときは水分量もポイントになります。水分量が多いと犬は飲み込みやすくなりますが、水分量が増えるとその分食事の量は増えてしまいます。飲み込みやすさと食事の量のバランスを考えて、適した水分量に調節してあげてください。
飲み水も、器を口元に寄せても自力で飲めないときは、スポイトなどを使って口に入れてあげます。
誤嚥には要注意!
老犬の食事をサポートする上で特に気をつけなければならないのが誤嚥です。年をとって飲み込む力が弱くなると、食べた物が気管に入りやすくなります。気管に入ってしまった食べ物が肺の中で炎症を起こす誤嚥性肺炎は、老犬によく見られます。
誤嚥性肺炎については『老犬や寝たきりの犬は要注意!誤嚥性肺炎の症状を理解して早急に対策を!』も記事で詳しく解説しているので、合わせて読んでみて下さい。
寝たきりになると排泄の介護も必要に
(画像:Instagram / @rii.m915 )
愛犬が寝たきりになると、排泄の介護も必要になります。オムツを利用している子も多いです。オムツの選び方については『愛犬のオムツ、どうやって選ぶ?よくあるトラブルと対処法も解説!』の記事も参考にしてくださいね。
排泄の姿勢を保ってあげて
足腰の筋力が低下すると、排泄の姿勢を保つことが難しくなります。飼い主さんの支えてもらって自分で排泄できるなら、排泄の姿勢が保てるように体を支えてあげてください。愛犬の後ろから両脇を抱えるような形で支えてあげるとよいでしょう。
排泄のサポートが必要なことも
腹筋やお尻の周りの筋力が低下すると、排泄自体しにくくなる場合があります。こうしたケースでは、排泄するためのサポートが必要になります。下腹部をさする、肛門付近の筋肉を刺激するなどして排尿や排便を促しましょう。また老犬は便秘になりやすいので、水分をしっかり与えるなどの便秘対策も有効です。老犬の便秘対策については『老犬は便秘になりやすい!食事の見直し、マッサージなどで予防して』で詳しく扱っていますので、参考にしてみてください。
マッサージをしても出ないときは、浣腸や摘便(ウンチをかき出すこと)も必要となります。こうした処置が必要になったときは、かかりつけの獣医師に相談の上、詳しいやり方を教えてもらいましょう。
清潔さを保つためのお手入れ
皮膚のかぶれや床ずれを防ぐためにも、清潔な状態を保つことは大切です。排泄の後はすぐに体を拭き、きれいにしてあげてください。お尻周りの被毛は汚れが付きやすく、お手入れをするとき邪魔になるので、毛の長い犬種の場合は短くカットしておくとよいでしょう。
また、しっぽの毛が長い場合も排泄時に汚れる可能性が高くなりますので、伸縮性のある包帯で巻くなどしてしっぽの毛が邪魔にならないようにするのもおすすめです。テープを使わなくても留められるペット用の包帯などもあるので、うまく活用してみましょう。
その他やっておきたいこと
ここまで、愛犬が寝たきりになったときに必ず必要となる体のケアについて解説してきました。ここからは愛犬のシニアライフをより快適にしてあげるためのお世話について解説していきます。
朝はきちんと起こして日光浴を
愛犬が寝たきりになってしまったからといって、ずっと寝かせておくのはよくありません。こまめに声をかける、マッサージなどでコミュニケーションをはかる、日光浴をさせるなど、気分転換も必要です。寝かせっぱなしの生活をさせると認知症にもかかりやすくなってしまうので、できるだけ脳に刺激を与えてあげましょう。
また、寝たきりになると生活リズムが乱れやすくなり、昼夜逆転の生活になってしまうケースも珍しいことではありません。愛犬の夜鳴きがひどくなると飼い主さんの負担が大きくなってしまうで、朝になったらきちんと起こして日の光を浴びせてあげましょう。日光浴のメリットと注意点については『犬が大好きな日光浴。実は老犬の健康維持にもおすすめです!』で解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
お外が好きな子は連れ出してあげて
自力でお散歩ができなくなっても、もともとお外が好きだった子にとって、外出することは嬉しいこと。抱っこでお外に連れ出してあげましょう。お家の中では立てない子でも、お外に出ると立てることもあるので無理のない範囲で試してみてください。お外を散策するうちに筋力が戻って、再び立ち上がれるようになることもあります。
抱っこするのが難しい場合は、犬用カートがおすすめです。犬用カートにはいろいろな種類があり、中には老犬の介護用のカートもあります。愛犬が楽な姿勢をとれるか、乗せ降ろしがしやすいかなどをチェックして、使いやすいものを選びましょう。
体を清潔に保つためのシャンプー
寝たきりの犬は排泄物で体が汚れることも多いです。清潔を保つことは大切ですが、とはいえ全身シャンプーは体への負担が大きくなるため、できれば避けたいもの。
汚れやすい場所は部分洗い、それ以外はお湯で濡らしたタオルなどで拭いてあげると、犬にかかる負担を最小限に抑えつつ、清潔な状態を保つことができます。排泄で汚れがちなお尻周りやお腹周り、涙やよだれがつきやすい顔、汗をかく部分である足の裏などは、こまめに部分浴をしてあげましょう。
飼い主さん一人で部分浴をするのが大変なときは、道具を使うとうまくいきます。愛犬を簀子の上に寝かせて、レンガやブロックなどを使って傾斜を付けて部分シャンプーすると、体全体が濡れてしまうのを防げます。
最後に
寝たきりの愛犬の介護は、飼い主さんに大きな負担がかかります。介護の疲れから精神的に苦しくなったときは、かかりつけの獣医師や老犬ホームに早めに相談してみましょう。かかりつけの獣医さんに気軽に相談できないときは、セカンドオピニオンを考えるのもおすすめです。愛犬と過ごせる時間をできるだけ楽しめるといいですね。