老犬が嘔吐したらどう対処すべき?動物病院へはいつ行けばいいの?【獣医師監修】

犬が嘔吐することは珍しいことではありません。しかし、老犬が嘔吐したときは若い頃以上に注意して様子を見てあげる必要があります。ここでは老犬が嘔吐する原因、注意すべきポイント、正しい対処法について解説しますので、シニア犬の飼い主さんはぜひ参考にしてください。

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犬は比較的嘔吐をしやすい生き物だけど…

犬は、胃が横を向いている、胃液が濃いなどの理由から、比較的嘔吐しやすい生き物です。長時間空腹が続いたり、ごはんを勢いよく食べたりしたなどの理由で嘔吐することもあるので、吐いた後に元気があれば自宅で様子を見るというご家庭も多いかもしれませんね。

ただし、シニア犬の嘔吐は若い頃よりもリスクが高くなっているので注意が必要です。病気が隠れている可能性もありますし、吐しゃ物が気管に入って誤嚥性肺炎を引き起こす恐れもあります。吐くという行為自体が体に与える負担も大きく、体力の消耗を招くことも頭に入れておかなければなりません。

老犬が嘔吐する原因は?

年齢を重ねたことで、これまでは大丈夫だったことが嘔吐の原因になることもあります。ここでは、シニア犬が嘔吐する原因の中で、比較的よく見られるものをご紹介します。

フードが合っていない

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犬は年を取ると消化機能が低下します。今まで問題なく食べれていたはずのフードやおやつをうまく消化できなくなったり、今までと同じ量を食べていても食べ過ぎになってしまって嘔吐することがあります。また、食べ物を飲み込む力も衰えるため、フードをうまく飲み込めずに吐き出してしまう(吐出)ことも珍しいことではありません。

ストレス

普段慣れていない長時間のお留守番の後や、預けていたペットホテルから帰ってきたとき、来客があったときなど、ストレスが原因となって嘔吐をすることもあります。

犬はもともと環境の変化に対応するのがあまり得意ではありませんが、年を取ると若い頃以上に大きなストレスを感じるようになります。また、今までできていたことができなくなったり、視力や聴力が衰えたりすることから、老犬はストレスを感じやすくなるのです。

誤食

誤食は若い犬に多いイメージがあると思いますが、シニア犬でも起こります。若い犬は食欲が旺盛で、いつも食べ物を探していたり、おもちゃをガジガジに砕いて遊んだりして誤食を起こすことが多いですが、シニア犬の場合は少し異なり、病気が根底にあることが多いです。ホルモンや脳の病気などで食欲が異常になっていたり、食べ物以外のものを口にしたがる「異嗜症(いししょう)」によって誤食を起こすことが多く、原因となる病気をきちんと治療してあげないと、誤食を繰り返してしまう子もいます。

病気が原因なことも

病気が原因で嘔吐することももちろんあります。中には重篤な病気が隠れていることもあるので注意してください。特に老犬になると免疫力も体力も衰えているので、できるだけ早急に治療をする必要があります。

ここでは、老犬がかかりやすい病気の中から、嘔吐の症状が現れる病気をいくつかご紹介します。

  • 胃腸炎
  • 腎臓病
  • 肝臓病
  • 糖尿病
  • 悪性腫瘍(ガン)
  • 感染症

また、老犬が嘔吐をしたときは、誤嚥性肺炎についても注意が必要です。誤嚥性肺炎とは、本来食道を通るべき食べ物や唾液、嘔吐物などが気管に入り込み、肺が炎症を起こしてしまうもので、シニア犬に多く見られます。特に嘔吐物が気管に入ってしまうと重篤化しやすいため、老犬が嘔吐したときは特に注意して様子を観察しましょう。誤嚥性肺炎については『老犬や寝たきりの犬は要注意!誤嚥性肺炎の症状を理解して早急に対策を! 』で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

様子を見ていても大丈夫な嘔吐は?

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嘔吐したのが一度だけで、吐いた後に元気食欲がある場合は様子を見ていても大丈夫です。ただし、老犬の場合は嘔吐によって体力を消耗し、一気に具合が悪くなることもあるので、よくよく注意して見てあげる必要があります。

また、愛犬が若い頃、嘔吐した後は絶食をして胃腸を休ませるよう指示されたことがあるかもしれませんが、体力が落ちてきている老犬の場合、こうした対応が危険なこともあります。「嘔吐はこれまでも経験があるから」と安易に自己判断せず、絶食させるときは必ず動物病院に相談してからにしましょう。休んでいる愛犬を動物病院へ連れて行くべきか悩んだら、まずはかかりつけの獣医師に電話で相談してみるのもおすすめです。

こんな嘔吐の仕方は要注意!すぐに動物病院へ

危険度の高い嘔吐とは

自宅で経過を観察してよい場合とは逆に、以下のような様子が見られたときはすぐに動物病院へ連れていきましょう。緊急処置が必要なこともあるので、夜間であっても夜間対応のできる救急病院へ連れて行くことをおすすめします。

  • 下痢が見られ、何度も嘔吐を繰り返す
  • 咳が出る、呼吸が苦しそう
  • 嘔吐後もぐったりしている
  • 食欲がなく、ごはんを食べない
  • 水をたくさん飲む
  • 他の病気の治療中の場合
  • 嘔吐物が茶色、血が混じっている

動物病院へ連れて行くときのポイント

動物病院へ連れていく際は、必ず嘔吐物を持っていきましょう。ラップに包んでから袋などに入れて持って行くと、診断の助けになります。また、動物病院では以下のようなことを聞かれることが多いので、きちんと答えられるようにしておくと診断がスムーズです。

  • 元気や食欲はあるか。
  • 直近でフードを変更したか、食べ慣れないものを食べたか。
  • 周辺の工事や来客など、環境の変化があったか。
  • 嘔吐がはじまったのはいつからか。
  • 嘔吐の回数と頻度はどの程度か。
  • 嘔吐のタイミングはいつか(食べてすぐ、水を飲んでもなど)
  • どんな物を吐いたか。
  • 吐いた後の様子はどうか(吐いた物を食べようとする、よだれが多いなど)
  • 下痢など他に気になる症状があるか。
  • 愛犬に普段と異なる点はあるか。

老犬の嘔吐を予防することはできる?

老犬の場合は嘔吐をすること自体が体に大きな負担をかけます。中には飼い主さんの工夫次第で予防できるケースもありますので、ぜひ以下のことを試してみてください。

胃腸に優しいフード選び

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食後に嘔吐することが多く、嘔吐をした後も元気にしている、きちんと消化されていない原型が残っているフードを吐いている場合には、消化機能の衰えが原因と考えられます。特にシニア犬は脂肪分の消化が苦手になります。そんなときはフードを見直してあげましょう。

シニアに差しかかったばかりの頃は、運動量が低下する一方で食欲旺盛なことが多いため、カロリーを抑えてたくさん食べられるようなフードが向いています。しかし、消化吸収機能が衰える高齢の犬に与えると消化不良を引き起こすだけでなく、どんどん痩せてしまう恐れがあります。『シニア犬フードの選び方は?老犬に必要な栄養素を獣医師が解説! 』の記事も参考にしながら、愛犬の年齢に応じて最適なフードを選んであげてください。

フードの与え方も見直す

噛む力や飲み込む力が衰えてフードを吐き出してしまうときは、フードの与え方も見直すといいです。例えば、ドライフードにお湯をかけてふやかしてあげたり、スープや無糖ヨーグルトなどをトッピングしてあげたりして、愛犬が食べやすいように工夫してあげましょう。

また、消化吸収力が衰えているときは、一度にたくさんの量を食べられなくなっているので、一回あたりの食事量を減らして回数を増やしてあげるのもおすすめです。

環境を見直して

(画像:Instagram / @wankorokoro_

ストレスによる嘔吐は、その要因を取り除くことで防止できます。できるだけ愛犬が快適に過ごせる環境を整えてあげてください。例えば、来客がストレスになっているなら、できるだけ人と会うときは外を選び、赤ちゃんが生まれたこと、新しく子犬を迎えたことがストレスになっているなら、愛犬が安心して過ごせるスペースを作ってあげるとよいでしょう。また、老犬は体温調整が苦手になるので、こまめに室温を調節してあげることも必要です。

老犬はストレスが原因でで急激に体調を崩してしまうこともあるので、『シニア犬にストレスは禁物!ストレスサインを見落とさないで 』の記事を参考にしつつ、できるだけストレス要因を取り除いてあげてください。

最後に

愛犬が嘔吐したとき、「今まで通り、様子を見ていて大丈夫かな?」と考える飼い主さんは多いかもしれませんね。しかし、シニア犬の場合は嘔吐すること自体が体に大きな負担をかけます。ぜひこの記事を参考にして、適切な対応をしてあげてください。