【老犬のトイレの失敗】対策を獣医さんに聞きました◎

老犬になるとトイレの失敗が増えてきますが、シニア期の粗相は子犬の粗相と異なり、しつけやトレーニングで改善することは難しいです。愛犬が歳を取ってトイレを失敗するようになったら、飼い主さんはどのように対処したらいいのでしょうか?ここでは動物の行動治療に詳しい獣医師、菊池先生にお話を伺います。

老犬のトイレの失敗、しつけで改善できる?

シニア犬になってからトイレの失敗が増えるのは、珍しいことではありません。トイレ以外の場所で粗相をしたり、トイレシートからはみ出したり、排泄物の上に座り込んでお尻を汚してしまうこともあります。中には寝ているときにお漏らしをして、体を濡らしてしまう場合もあるでしょう。

高齢になってからのトイレの失敗は、しつけで改善されないケースがほとんどです。むやみに叱ったりせず、愛犬が快適に過ごせる環境を整えて、上手に付き合っていきましょう。

老犬がトイレを失敗する原因は?

体力の衰えによるもの

高齢になって足腰の力が衰えると、トイレの場所まで間に合わずに粗相をしたり、膀胱におしっこを溜めておく力が弱くなってお漏らしをしてしまったりします。また、年を取ると筋力の低下や消化機能の衰えから便秘や下痢になりやすく、踏ん張っている時によろめいてトイレシートからはみ出してしまったり、急に便意をもよおしてトイレに間に合わないことも多くなります。

不安が原因のことも・・・

いつもはきちんとトイレでできていても、飼い主さんが外出してお留守番をしている間に、トイレを失敗することもあります。年を取って目が見えにくくなったり、体が思うように動かなったりすると、犬自身が不安を感じるケースも多いです。若い頃以上に、飼い主さんがそばにいてくれないと不安になってしまって、つい粗相をしてしまうことは珍しくありません。

なお、飼い主さんが留守のときに限ってトイレを失敗するようなら、もしかしたら分離不安の可能性があります。分離不安とは飼い主さんから離れることで極度の不安を感じる心の病気で、高齢になると発症しやすいので注意が必要です。分離不安についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。

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トイレの失敗が増えたらどうすればいい?

老犬のトイレの失敗はしつけやトレーニングで改善できるものではありません。下手にトレーニングしようとすると、かえって悪化してしまうこともあります。それではどのように対処したらいいのでしょうか?

失敗を責めないで

年とともにトイレの失敗が増えると、愛犬が年老いた事実を突きつけられたような気がして悲しい気持ちになってしまうこともあるでしょう。また、粗相が続いて何度も片付けをしなければならない時は、飼い主さんもついイライラしてしまうかもしれません。しかし、犬も失敗したくてしているわけではなく、思うように体が動かないだけかもしれません。また、以前できていたことができなくなっていることに、犬自身が強い不安を感じているかもしれません。飼い主さんが愛犬のトイレの失敗に対して負の感情を表に出してしまうと、犬はますますナーバスになってしまい、余計にトイレを失敗するようになることもあります。愛犬がトイレを失敗したとき、飼い主さんはまるで何事もなかったかのようにサッと片付けてあげましょう。

まずは動物病院へ

愛犬がトイレを失敗するようになったら、まず何が原因なのかを把握しましょう。足腰が弱ってトイレに間に合っていないのか、それとも気持ち的な問題なのか、それとも病気が隠れているのか…。トイレを失敗する原因によって対処法は変わってきます。ただ、飼い主さんが自身で原因を解明することは難しいので、まずは動物病院を受診しましょう。動物病院では原因を調べるだけでなく、どう対処すればいいのか、具体的なアドバイスをもらえることもあります。

病気が原因でトイレを失敗することも

老犬になると様々な病気にかかりやすくなります。病気が原因でトイレを失敗するようになることもあるので、老犬がトイレを失敗するようになったら、年齢のせいと決めつけず、早めに動物病院を受診した方がいいです。例えば、膀胱や腎臓、前立腺などの異常や、糖尿病などの病気にかかるとトイレを失敗しやすくなります。また、認知症を発症しているときにもトイレの失敗が増えます。もしくは、椎間板ヘルニアや関節症で体に痛みがあり、移動するのがつらいのかもしれません。

〜考えられる主な病気〜

  • 腎臓病
  • 肝臓病
  • 子宮蓄膿症(避妊手術をしていない高齢犬は要注意)
  • 糖尿病
  • クッシング症候群
  • 副腎皮質機能低下症
  • 膀胱炎
  • 腫瘍、ポリープ
  • 関節疾患
  • 椎間板ヘルニア
  • 前立腺肥大症
  • 認知症など

これらの病気の中には、「多飲多尿(お水を大量に飲み、大量におしっこをすること)」の症状が現れることもありますので、トイレの失敗が気になる、トイレが近くなったような気がするときは、お水を飲む量にも注意しておくとよいでしょう。飲水量をチェックする方法はこちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方は合わせてご覧ください。

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老犬のためにできるトイレ対策

愛犬がトイレに失敗したときはおおらかな気持ちで見守ること、ということは頭では理解していても、毎日何度も片付けに追われるとなると、体も気持ちも疲れてしまうことがありますよね。飼い主さん側の負担を減らすためにも、愛犬がシニア期に差し掛かったら、一度トイレの環境を見直してみましょう。

老犬のためのトイレ対策① トイレの場所を増やす

トイレが遠いと行き着くまでにお漏らししやすくなってしまうので、トイレの場所を増やしてみてください。普段愛犬が寝ている場所の近くにトイレを設置してあげるのもおすすめです。寝ている時にお漏らしをしてしまう場合は、あらかじめ寝ているところにペット用のシートを敷いてあげるとよいでしょう。トイレシートの上に直接寝かせることに抵抗があるなら、まずはトイレシートを敷き、汚れてもいいバスタオルやタオルケットをかぶせてあげるのもおすすめです。

トイレシートの上に寝ている犬

(画像:Instagram / @rii.m915

老犬のためのトイレ対策② トイレの場所を見直す

足腰の筋力が低下している老犬は、滑りやすいフローリングの上にトイレがあると、踏ん張りがきかずに上手く排泄できません。また、トイレの設置場所が玄関などで、段差を降りたり登ったりしなければならない場合も、トイレに辿り着けなくなる可能性が高くなります。愛犬がトイレを失敗するようになったら、まずはトイレの場所を見直してみましょう。

ただ、犬はキレイ好きな動物なので、ごはんを食べる場所やお水を飲む場所とトイレは離してあげたほうがいいです。

老犬のためのトイレ対策③ 体を支えてあげる

トイレ時の体の支え方

筋力の衰えからトイレの途中でふらついてしまう場合は、排泄時に飼い主さんが腰を支えてあげることでトイレの失敗を防ぐことができます。初めのうちは慣れないことに犬が嫌がるかもしれませんので、そんなときは一旦サポートをやめて、また他のタイミングで試してみてください。根気よく続けることが大切です。

老犬のためのトイレ対策④ トイレに連れていく

就寝前や食後など、決まった時間にトイレに行く習慣がある場合や、ソワソワする、くるくる回す、匂いを嗅ぐなど、犬がトイレに行きたそうなサインを出してくれる場合は、飼い主さんが誘導してトイレに連れていってあげるのも効果的です。トイレまで間に合わないことが多いなら、抱っこして連れていってあげてもよいでしょう。

老犬のためのトイレ対策⑤ トイレの後はすぐに片付けを

筋力がないとしゃがむ姿勢が辛くなるだけではなく、そこから元の体勢に戻るのも時間がかかってしまいます。ときにはそのままペタンと尻もちをついてしまい、体を汚してしまうこともあるでしょう。体が汚れると犬にとって大きなストレスになりますし、皮膚炎などの病気の原因にもなりますので、排泄の後はできるだけ早く犬をトイレから離し、排泄物を処理してあげてください。

老犬のためのトイレ対策⑥ 足腰の筋力を鍛える

高齢になってあまり動きたがらなくなった愛犬を見て、「できるだけゆっくりさせてあげたい。」と思うかもしれませんが、そのままにしているとますます筋力が衰え、よりトイレを失敗するようになってしまいます。さらに筋力が衰えると寝たきりになってしまう可能性もあるので、愛犬の足腰が弱ってきたら早めにケアをしてあげましょう。

もちろん無理は禁物ですが、愛犬のペースに合わせてお散歩、マッサージ、トレーニングなどをしてあげることで、弱った足腰を鍛えることができます。足腰のトレーニングについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

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老犬のためのトイレ対策⑦ 下痢気味の場合はフードの見直しも効果的

シニア犬は胃腸の働きや消化液の分泌が衰えることから、今まで食べていたフードが合わなくなって下痢気味になることがあります。もし軟便や下痢になっていることでトイレの失敗が増えているのなら、消化の良いフードに切り替えてあげることで改善が期待できます。

消化機能が衰えるハイシニア期ならではのフードの選び方、ハイシニア期におすすめなフードについてはこちらの記事をご覧ください。

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室内トイレのトレーニングがおすすめ

(画像:Instagram / @hanahana.shii

愛犬が屋外でしかトイレができない場合、シニア期になってから思わぬトラブルが起きる可能性があります。年を取ってからは室内でもきちんとトイレできるようにしておいた方がよいでしょう。

室内トイレをできるようにしておこう

室内でトイレをする習慣がないままシニア期を迎えると、筋力の衰えによって散歩の回数や距離が減り、思うように排泄できなくなってしまうことがあります。また、気温の高い日や寒すぎる日は、外に出ること自体が犬にとって負担となるため、飼い主側もお散歩を躊躇ってしまうこともあるでしょう。必然的に犬は長時間トイレを我慢することになってしまい、膀胱炎や腎臓病などにかかりやすくなります。外でしかトイレできない犬は、室内でもトイレできるよう、できるだけ早めにトレーニングをしておくことをおすすめします。

老犬とトレーニングするときの心構え

室内トイレのトレーニングは、できればシニア期に入る前からしておいた方がいいですが、シニア期に入ってからでも遅くありません。ただ、熱心に教えようするあまり、つい叱ってしまうことのないように注意しましょう。長年、外でトイレをすることが当たり前だったのに、年を取ってからその習慣を変えるのはとても難しいものです。シニア期のトイレトレーニングは長期戦を見据え、気長に向き合ってあげてください。

室内でのトイレトレーニング、3つの方法をご紹介

トイレトレーニングを成功させるコツ

犬がトイレを覚えるときに拠り所とするものは、①肉球の感覚(トイレシートを踏んだ感覚)と②場所、③飼い主さんのかけ声や「トイレ」という言葉です。

  • 踏んだときにゴワゴワした感じがする場所(トイレシートの上)はトイレをしていいところ。
  • この場所はトイレをしていいところ。
  • 「ワンツー」「シーッ、シーッ」などの掛け声や、「トイレ」などの言葉をかけられたときはトイレをしていいタイミング。

このどれかを覚えてもらうことができれば、トイレトレーニングは成功します。

老犬のためのトイレトレーニング①

トイレの場所を決めたら、そこをケージで囲います。(※トイレの場所を決めるときは「トイレの場所を見直す」を参考にしてください。)ケージ内にトイレシートを敷き詰め、おしっこをしそうな気配があればケージの中へ連れて行き、排泄を促してみましょう。トイレシートの上で排泄ができるようになったら、トイレシートを徐々に減らしていきます。トイレシートの上で排泄ができたら、その都度しっかり褒めてあげ、おやつをあげるとより効果的です。

老犬のためのトイレトレーニング②

外でトイレをする場所が決まっているなら、お散歩に出かけるとき、トイレシートを持参します。そして、いつものトイレスポットにシートを敷き、シートの上で排泄をするよう促します。トイレシートの上での排泄に慣れてきたら、トイレシートを置く場所を少しずつ自宅へと近づけていきましょう。お散歩ルートから玄関前、玄関前から玄関内、玄関内から室内へと段階を踏むのがおすすめです。

老犬のためのトイレトレーニング③

なかなかトイレシートの感覚に慣れてくれない場合、こんな方法もあります。まず、室内に大きめのトイレ用のスペースを確保し、そこにトイレシートを敷き詰めます。トイレシートの上に砂や土、草などをかぶせ、外に近い環境を作ってあげてください。外と勘違いをしてトイレをしてくれることがあります。徐々に砂や土の量を減らしていき、トイレの場所を覚えてもらいましょう。

元気なうちから犬用おむつに慣れさせておこう

(画像:Instagram / @rii.m915

愛犬のトイレの失敗が増えてきたら、犬用おむつを検討する飼い主さんも増えてくるでしょう。ただ、トイレで粗相を繰り返すようになってから慌てて犬用おむつを着用させても、犬がひどく抵抗して、うまくいかないこともあります。そのため、シニア期に入ったらトイレを失敗するかどうかに関わらず、犬用おむつの練習を始めておくとよいでしょう。最初は短い時間だけ着用し、少しずつ時間を伸ばして慣らしていきます。詳しくはこちらの記事で解説しているので、合わせてご覧ください。

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最後に

老犬がトイレに失敗してしまうのはある程度仕方のないことですが、毎回片付けるとなると飼い主さんにとって大きな負担となってしまいますよね。愛犬が粗相をしても叱ったりせず、温かい気持ちでを見守ってあげることも大切ですが、それと合わせて飼い主さん自身の負担を軽くするための工夫も必要です。愛犬がシニア期に入ったら、犬用おむつの練習や、室内トイレのトレーニングを始めるとよいでしょう。