老犬が食欲旺盛なのは元気な証拠?食べても痩せるのはなぜ?【獣医師が解説】

年を取った愛犬がごはんをもりもり食べているのを見ていると、「今日も元気でなにより。」なんて幸せな気持ちになりますよね。しかし、ある時から急に愛犬の食欲が増えたり、食べても食べても痩せていく様子を見ていると不安になることもあるでしょう。今回はペットの栄養学に詳しい獣医師丸田先生に、シニア犬の食欲と体重の変化について伺います。

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愛犬の食欲が旺盛なのは元気な証拠?

若い頃からずっと食欲旺盛なのはいいこと◎

犬は年を取ると体力が衰えて運動量が減るため、徐々に食欲が落ちていきます。しかし、年の取り方には個体差があるので、同じ年齢でごはんをあまり食べてくれない子もいれば、今までと変わらず食欲旺盛な子もいます。若い頃からずっとごはんが大好きで、年を取ってからも変わらずごはんが大好きな場合は、元気な証拠と言えるでしょう。

ただし、体重管理は忘れずに

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愛犬が年を取ってもずっと元気で、食欲もしっかりあることは、飼い主さんからするととても嬉しいことですよね。しかし、だからと言って愛犬の望むまま食べさせてしまうと適正体重を維持できなくなってしまいます。

特に、シニア期に差し掛かったばかりの犬は、運動量や代謝が落ちていても食欲は旺盛なことが多いです。太りやすい時期なので、飼い主さんがしっかり食事を管理してあげましょう。肥満になると心臓や関節にかかる負担が大きくなるだけでなく、糖尿病や気管虚脱などの病気を発症するリスクも高まります。肥満のリスクについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

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食欲旺盛でも痩せていく原因は?

病気が隠れていることも

今までと同じ量を食べているのに体重が減っていくときは、病気が隠れている可能性があります。シニア犬でよく見られる腫瘍(ガン)や糖尿病などの病気は、いくら食べても体内にうまく栄養を吸収できず、徐々に痩せていくのが特徴です。食べる量が変わっていないのに体重が落ちてしまったときは、できるだけ早めにかかりつけの獣医師に診てもらうようにしましょう。

年齢的な原因

徐々に痩せていく愛犬を見て、不安を感じる飼い主さんもいるでしょう。しかしシニア犬の場合、病気にかかっていなくても体重が落ちることはあります。年齢と共に消化吸収機能が衰えると、体内にうまく栄養を取り込めなくなり、少しずつ体重が落ちてしまうのです。獣医師に診てもらって、痩せている原因が年齢的な問題であると診断されたときは、フードの見直しを行いましょう。シニア犬のためのフードの選び方や切り替え方法については、こちらの記事に詳細をまとめています。

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ちなみに、年齢とともに痩せてしまうのはある程度仕方のないことですが、痩せすぎは体力を低下させる原因になります。愛犬の体重が落ちてきたらかかりつけの獣医師と相談しながら早めにケアしてあげてください。こちらの記事では痩せてしまった時の対策について詳しくまとめているので、ぜひあわせてご覧ください。

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2匹の寝ている老犬

急に食欲旺盛になった時は病気を疑って

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若い頃から変わらず食欲が旺盛な場合は問題ありませんが、あるときから急に食欲が増した、食べ終わったばかりなのに何度も食事をねだってくる、というケースでは注意が必要です。単に年を取ってわがままになっているだけかもしれませんが、病気が原因で食欲旺盛になっている可能性もあります。

 クッシング症候群

クッシング症候群とは、腎臓の近くにある副腎という臓器からホルモンが過剰に分泌される病気です。脳の下垂体、もしくは副腎にできた腫瘍が原因で、悪化すると命に関わる深刻な合併症を引き起こすこともあります。

食欲が旺盛になる他、お水をたくさん飲んでおしっこをたくさんする「多飲多尿」、腹部の異常な膨らみ、皮膚の状態が悪化する、などの症状が見られます。犬のクッシング症候群についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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糖尿病

糖尿病にかかると、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きが低下し、細胞にとって重要なエネルギー源であるブドウ糖をうまく吸収できなくなります。細胞が飢餓状態に陥るため食欲は増えますが、いくら食べてもエネルギーを取り込むことはできません。そのため、食べても食べても痩せていくのが特徴です。

糖尿病を放置すると昏睡状態に陥ったり、命に関わる重大な合併症を引き起こすこともありますので、愛犬の異変に気付いたらすぐに動物病院を受診しましょう。食欲の増進以外に、多飲多尿、体重減少などの症状が見られます。犬の糖尿病についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方はあわせてご覧ください。

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認知症

食べた直後なのにごはんを欲しがる、一日に何度もごはんを欲しがるのは、年齢と共にわがままになっているだけかもしれませんが、認知症を発症している可能性もあります。脳に記憶障害が起こり、食べたこと自体を忘れてしまうのです。認知症にかかると食欲が異常に増える他、トイレの失敗、夜鳴き、昼夜逆転などの症状が現れます。愛犬を呼んだ時に反応が鈍いのも、認知症の犬によく見られます。

残念ながら今の獣医療で認知症を完治させることはできません。しかし、症状の進行を遅らせることはできるので、できるだけ早く治療を開始することが大切です。犬の認知症についてはこちらの記事に詳しい情報を載せています。

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最後に

(画像:Instagram / @mt0315

食欲を元気のバロメーターにしている飼い主さんは多いと思います。確かに、愛犬が年を取ってもごはんが大好きだと安心しますよね。ただ、中には病気が隠れていることもあるので、違和感を感じたらできるだけ早めにかかりつけの動物病院に相談してみましょう。愛犬がシニアになったら、定期健診を受けさせることも病気を早期発見する助けになります。