中型・大型犬に多い甲状腺機能低下症とは?症状や治療法を獣医師が解説!

甲状腺機能低下症は、甲状腺から分泌されるホルモンが減少してさまざまな症状が現れる病気です。中型・大型犬に多い疾患ですが、その症状は年齢による体調の変化と間違いやすく、見逃してしまうことも少なくありません。ここでは甲状腺機能低下症の症状や治療法について詳しく解説します。

犬の甲状腺機能低下症とは

甲状腺ホルモンの働きが低下する疾患

甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの働きが低下する病気です。甲状腺ホルモンは、喉の近くに位置する甲状腺という小さな器官から分泌されていて、体の新陳代謝を活発にする働きがあります。甲状腺ホルモンの分泌量が減少すると、元気がなくなる、慢性的な皮膚病にかかる、食欲がないのに体重が増加するなどの様々な症状が現れ、重篤化すると昏睡状態に陥ることもあります。

甲状腺機能低下症の原因

シニア犬の場合、年齢とともに甲状腺が萎縮してしまい、甲状腺ホルモンの分泌量が低下することがあります。また、本来ならがん細胞やウイルスなどの異物を攻撃するはずの免疫機能に異常が生じて、甲状腺を攻撃するようになることもあります。ほかにも、甲状腺ホルモンは脳からの司令を受けて分泌されるため、脳の下垂体や視床下部などに異常がある場合も分泌が低下することがあります。

かかりやすい犬種は?

甲状腺機能低下症は、中型〜大型犬に多く見られる病気です。かかりやすい犬種としては、アフガン・ハウンド、ゴールデン・レトリーバー、コッカー・スパニエル、ボクサー、柴犬、ダックスフンドなどが挙げられます。6歳以上の中年齢~高齢の犬に多いと言われているので、かかりやすいと言われている犬種の飼い主さんは、愛犬が年を取ってきたら定期的に検査を受けて早期発見できるようにしておきましょう。

甲状腺機能低下症の症状について

甲状腺ホルモンは新陳代謝に関わっているため、甲状腺機能低下症になると代謝が低下し、以下のような症状が現れるようになります。

  • 元気がなくなる
  • 疲れやすい
  • 運動を嫌がる
  • 食べる量が増えていないのに太る
  • 寒さに弱くなる
  • 感覚が鈍くなる
  • 左右対称性の脱毛
  • ラットテイル(尾の脱毛)
  • 皮膚の乾燥や黒ずみ

このように、甲状腺機能低下症はあまり特徴的な症状がないため、年齢による変化と間違えることも多いです。適切な治療ができれば、健康な頃と変わらない生活を送らせてあげることができるので、少しでも異常に気付いたら「年齢のせいかな?」で終わらせず、早めにかかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。

甲状腺機能低下症の検査と治療法について

どんな検査をするの?

甲状腺機能低下症の検査では、血液検査、ホルモン検査、超音波検査などが行われます。

  • 血液検査:甲状腺機能低下症にかかると貧血や脂質異常症などが認められる場合があるため、血液検査でそれらの項目を確認します。
  • ホルモン検査:甲状腺ホルモンの量や、司令塔である脳から、甲状腺ホルモンの分泌を促すように指示が出ているかどうかを調べます。
  • 超音波検査:甲状腺の大きさや状態を確認します。麻酔は必要ありません。

一度の採血で血液検査とホルモン検査の両方を行うことが可能ですが、甲状腺ホルモンの分泌量は薬剤やほかの疾患の影響により低下することもあるため、1回の検査だけでは甲状腺機能低下症かどうか判断できないこともあります。その場合は検査を数回行い、病歴やほかの検査結果と合わせて、総合的に判断されます。

投薬による治療が一般的

甲状腺機能低下症と診断された場合、足りない甲状腺ホルモンを補うために投薬を行います。まず、薬を一定期間服用した後に身体検査や血液検査などを行い、必要に応じて薬剤の量を調整します。薬を服用して上手く状態がコントロールできれば、数週間~数か月で症状は改善に向かいます。抜けていた毛も徐々に生えてくるでしょう。

甲状腺機能低下症は治る?

甲状腺機能低下症では、毎日薬を飲み続ける必要はありますが、適切な治療を受けていれば、健康な時と同じ生活を維持することができます。現れていた症状も薬によって改善されていくので、早期発見・早期治療をすることが大切です。

最後に

甲状腺機能低下症は中型・大型犬のシニア犬で比較的よく見られる疾患です。元気がなくなったり、運動を嫌がるようになったときは、甲状腺機能低下症の可能性があります。「年のせいかな?」で終わらせず、早めに動物病院を受診しましょう。