老犬の睡眠時間が変化したときに注意すべきこと

犬は高齢になると、睡眠時間や睡眠の質が変化するようになります。体力の衰えから寝ている時間が長くなることもあれば、上手に眠れなくなって睡眠時間が短くなることもあります。中には病気が原因で睡眠時間が変化しているケースもあるので注意しましょう。ここでは、犬の行動学に詳しい獣医師の菊池先生に、シニア犬の睡眠の変化について詳しく伺います。

(トップ画像:Instagram / @kayololo

老犬の睡眠時間はどのくらいなのでしょう?

(画像:Instagram / @erilyerily

そもそも犬は睡眠時間が長い

睡眠には、レム睡眠という浅い眠りと、ノンレム睡眠という深い眠りの2種類があります。私たち人間は90分ごとにレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返していますが、犬の場合はレム睡眠が約80%、ノンレム睡眠が約20%と言われています。これは野生で暮らしていた頃の名残で、何か異変があったときにすぐ飛び起きて対処するためだと考えられています。眠りが浅い分、犬は人間よりも長い睡眠時間が必要なのです。

老犬の平均睡眠時間はどのくらい?

睡眠には疲れた脳や身体を休ませ、回復させる働きがあります。成犬の平均睡眠時間は12~15時間なのに対し、7歳以上のシニア犬の平均睡眠時間は18~19時間程度。年を取って体力が衰えると疲れやすくなるため、若い頃よりもたくさんの睡眠時間が必要になります。

ただし、中にはうまく眠れなくなって睡眠時間が短くなってしまうこともあります。愛犬の睡眠時間が短くなると、飼い主さんまで寝不足になり、飼い主さんにかかる負担が大きくなってしまいます。早めに対処すれば改善できるケースも多いので、愛犬の睡眠時間に悩まされたらすぐにかかりつけの動物病院などに相談してみましょう。シニア犬の不眠についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事

愛犬が高齢になると、夜なかなか寝てくれなくなってお困りの飼い主さんは多いと思います。なぜシニア犬は寝ないことが増えるのでしょうか?寝てくれない時はどう対処したらいいのでしょうか?ここではシニア犬の介護に詳しい獣医師の丸田先生に、シニア犬が寝[…]

老犬になると睡眠中、どのような変化が現れますか?

(画像:Instagram / @nanahana.shii

変なところで寝る

シニア犬は体力や筋力が衰えるため、運動量もだんだん少なくなっていきます。そのため、家の中を歩き回っている途中に力尽きて寝てしまったり、ベッドに入る途中で眠ってしまうこともあります。「なんでこんなところに…。」と思うような場所で寝ていることもあるので、若い時以上に愛犬がどこにいるのか、気をつけて見てあげるようにしましょう。

いびきが激しくなる

若い頃はすやすやと寝ていた愛犬が、年を取ってからフゴフゴと大きないびきをかくようになって、びっくりした飼い主さんもいるでしょう。年を取ると喉や首回りの筋肉が衰えるため、気管が狭くなっていびきが増えることがあります。

また、肥満気味な子も首周りの脂肪が気管を圧迫するようになるのでいびきをかきやすいです。特にシニア初期の子は運動量や代謝が低下するため、今までと同じような食生活を続けていると太りやすくなります。太り過ぎはいびきだけでなく、色々な病気を引き起こす原因になるので、きちんと適正体重を維持してあげてください。

関連記事

健康面での心配ごとが増えるシニア犬の飼い主さんにとって、食欲旺盛な愛犬の姿は嬉しいものです。「よく食べるのは元気な証拠!」と、たくさんごはんをあげたくなる気持ちはわかりますが、太りすぎてしまっては本末転倒。肥満には様々なリスクが潜んでいます[…]

寝相が豪快になる

丸まって眠るのは犬の基本的な寝姿です。丸くなると急所である内臓を守ることができますし、寒い時にも体温を逃すことがありません。鼻先をしっぽの中に埋めれば、全身暖かくして眠ることができます。

ただ、安心できるおうちの中で眠るときは寝相が豪快になりがち。例えば手足を投げ出して横向きで眠っている状態は、犬にとって寝心地の良い快適な姿勢です。リラックスしているサインと言えるでしょう。さらに、無防備にお腹を丸出しにして仰向けで寝ている寝姿は「へそ天」と呼ばれ、完全にリラックスしているときに見られます。年々愛犬の寝相が豪快になっていくのは、大好きな飼い主さんのいるおうちで、安心し切っているからなのでしょうね。

老犬の睡眠が変化した時、注意すべき点はありますか?

(画像:Instagram / @rii.m915

高齢になると睡眠時間や睡眠中の様子が変化することは多いです。しかし、中には病気が隠れているケースもあるので、愛犬の睡眠に変化が見られたときは必ずかかりつけの獣医さんに相談するようにしましょう。

睡眠時間が長くなった

関節に炎症が起きていたり、椎間板ヘルニアを発症していると、動いた時に痛みが出るようになるため動きたがらなくなります。飼い主さんからは眠っている時間が長くなったように見えるでしょう。また、心臓に疾患があるときも疲れやすくなるため、運動するのを嫌がるようになります。尚、心臓病の子は夜中から明け方にかけて咳が増えるので、「最近寝ている時に咳が出るな。」と感じたら、すぐに動物病院へ連れて行ってあげてください。

寝相が変化した

寝相が変化した時も注意が必要です。犬は身体に痛みがある場合は丸くなったり、呼吸が苦しい時にはうつ伏せで寝ることが多いです。もし、いつも無防備に気持ちよさそうに寝ていた愛犬が突然眠り方を変えたときは、体調に問題がないか注意して見てあげてください。

いびきの悪化

突然大きないびきをするようになったら、気管虚脱という病気が隠れているかもしれません。気管虚脱は小型犬に多い病気で、空気の通り道である気管支が潰れて「ガーガー」という音がするようになります。

関連記事

気管虚脱は、空気の通り道である気管が何らかの原因でつぶれてしまう病気で、小型犬に多く見られます。ここでは気管虚脱の症状や治療法、愛犬が気管虚脱と診断されたときの生活上の注意点などを解説します。 気管虚脱とは 気管が潰れてしまう病気 気[…]

また、フレンチブルドッグなどの短頭種によく見られる「軟口蓋過長症」を発症したときも、呼吸が苦しくなっていびきが出るようになります。以下のような場合は、早めにかかりつけの獣医師に相談してください。

  • 急にいびきをかくようになった
  • いびきが悪化している
  • 寝苦しそう、呼吸が苦しそう
  • ガーガーという大きないびきをかく
  • 起きているときもいびきのような呼吸音が出る

睡眠トラブル

腎臓病やホルモン疾患などで頻尿になっている時は、夜中トイレに行くために頻繁に起きることがあります。また、なかなか寝付けなかったり、昼夜逆転の生活になってしまう時は、認知症の可能性が考えられます。認知症は悪化すると一晩中夜鳴きや徘徊をするようになることもあるので、早めに治療を開始してあげましょう。

関連記事

愛犬が高齢になると、夜なかなか寝てくれなくなってお困りの飼い主さんは多いと思います。なぜシニア犬は寝ないことが増えるのでしょうか?寝てくれない時はどう対処したらいいのでしょうか?ここではシニア犬の介護に詳しい獣医師の丸田先生に、シニア犬が寝[…]

起こそうとすると怒る

眠っている愛犬を起こそうとしたら、唸り声を上げて威嚇してくる、触ったら怒る、などの様子が見られたときは要注意です。眠っているのではなく、体のどこかに痛みがあって、できるだけ動かないようにしているのかもしれません。こんなときはできるだけ早く動物病院を受診しましょう。

睡眠時間が長くなることで、なにか問題はあるのでしょうか?

(画像:Instagram / @wankorokoro_

床ずれのリスクも

愛犬の睡眠時間が長くなった時、特に注意してあげたいのが床ずれです。長時間同じ体勢で寝ていて体の一部が圧迫された状態が続くと、血行不良になって皮膚の細胞が壊死してしまいます。寝たきりになっていなくても、寝ている時間が長くなったシニア犬は床ずれができやすくなるので注意しましょう。床ずれは悪化するのが早いため、もし愛犬の皮膚に異変を見つけたらすぐに動物病院へ連れていくようにしてください。

関連記事

愛犬が年を取って寝たきりになるとさまざまなケアをする必要が出てきますが、特に注意したいのが床ずれです。ここでは犬の床ずれについて、予防法や治療について解説します。 愛犬が寝たきりになったら床ずれ(褥瘡)に注意 犬も人間と同じで、寝たきり[…]

血行不良になる

寝ている時間が長くなると運動量が低下するため、血液の流れは滞りがちになります。そのため、体が冷えやすくなったり、胃腸の働きが弱くなってしまうことがあります。また、血液の巡りが悪くなると、耳の先などの末端の毛が抜けてしまったり、皮膚の状態が悪くなることもあるので、マッサージや適度な運動を取り入れて、血行を促進してあげましょう。

関連記事

シニア犬は寝ている時間が長くなり、体を動かす機会も減るため血行が悪くなりがちです。飼い主さんが優しくマッサージしてあげることで、血流を促すだけでなく愛犬のストレスを緩和してあげることもできます◎ここではシニア犬のマッサージのやり方について解[…]

太りやすくなる

シニアに差し掛かったばかりの時期は、運動量が低下して寝ている時間が長くなる一方で、食欲は旺盛なままの子が多いです。代謝も衰えるので、今までと同じ食生活をしているとすぐに太ってしまうので注意しましょう。肥満になると心臓や関節にかかる負担が大きくなり、糖尿病などを発症するリスクも高まります。きちんと適正体重を維持し、肥満になったときは獣医師に相談しながらダイエットをしてあげましょう。

関連記事

健康面での心配ごとが増えるシニア犬の飼い主さんにとって、食欲旺盛な愛犬の姿は嬉しいものです。「よく食べるのは元気な証拠!」と、たくさんごはんをあげたくなる気持ちはわかりますが、太りすぎてしまっては本末転倒。肥満には様々なリスクが潜んでいます[…]

関節がこわばりやすくなる

寝ている時間が長くなると、関節がこわばりやすくなります。スムーズに体を動かせなくなると、ますます動くのを嫌がるようになるでしょう。運動量が減って筋力が低下すると、さらに関節に負担がかかるという悪循環に陥ります。シニア犬は関節に痛みが出やすくなるので、炎症を起こす前にきちんとケアしてあげてください。

関連記事

シニア犬になって関節の軟骨が徐々にすり減ると、痛みが出るようになります。愛犬にいつまでも元気でいてもらうために、早めに関節をケアしてあげましょう。ここでは、動物の栄養学に詳しい林先生に、シニア犬の関節ケアの仕方とおすすめサプリメントについて[…]

お散歩中の老犬

睡眠時間が変化した時は、どのようにケアするといいでしょう?

(画像:Instagram / @kplan_haru

水飲み場を近くに設置

シニア犬は喉の渇きに鈍感になり、水を飲む量が少なくなることがあります。特に寝ている時間が長くなると、犬自身も気付かないうちに脱水状態に陥ってしまうこともあるのです。ベッドの近くに水飲み場を作ってあげたり、寝ている愛犬の口元に水を運んであげたりして、しっかり水分補給ができるよう、気をつけてあげましょう。飲水量が低下すると、腎臓に負担がかかりますし、泌尿器系の病気にもかかりやすくなります。

関連記事

犬は年を取ると、様々な理由から水を飲まなくなることがあります。ひどいときには脱水状態に陥ってしまうケースもあるので、シニア犬と暮らす飼い主さんは注意して見てあげてください。ここでは、犬の介護に詳しい獣医師の丸田先生に、シニア犬が水を飲まなく[…]

快適なマットを選ぶ

横になった時の体勢が辛そうな時、なかなかおさまりのいいポジションを見つけられない時は、ベッドを見直してみるのもおすすめです。介護用マットには色々な種類のものがありますので、愛犬の状態によって使い分けてあげましょう。自力で寝返りが打てるのなら、高反発のマットを敷いてあげると寝返りがしやすくなります。

関連記事

シニア犬になって寝ている時間が長くなると、血行不良になったり、床ずれになったりするリスクが高くなります。愛犬にリラックスして過ごしてもらうためにも、体にやさしいベッドマットを選んであげたいですよね。愛犬の負担をできるだけなくしてあげるために[…]

ベッドで横になる老犬

トイレの失敗が増えてきたら

シニア犬は足腰が弱ってトイレまで移動するのが大変になったり、膀胱におしっこを溜めておく力が弱くなったりして、寝ている間にお漏らししてしまうことがあります。このようなときはオムツをつけたり、トイレシートや赤ちゃん用のおねしょシーツを敷いておくと、ベッドや愛犬の体を汚さずに済みます。トイレの失敗が増えてきたら、トイレの環境だけでなく寝場所も見直してみましょう。

関連記事

シニア犬になるとトイレの失敗が増えてきますが、シニア期の粗相は子犬の粗相と異なり、しつけやトレーニングで改善することは難しいです。愛犬が歳を取ってトイレを失敗するようになったら、飼い主さんはどのように対処したらいいのでしょうか?ここでは動物[…]

最後に

可愛い寝姿で飼い主さんをほっこり温かい気持ちにさせてくれるシニア犬たち。年齢とともに犬たちの睡眠事情は少しずつ変化していきますが、飼い主さんはその変化を楽しみながらも、異変があったときはすぐに察知してあげられるといいですね。