老犬に優しいお散歩の仕方。注意点や参考になるアイデアをご紹介

シニア犬になるとだんだん体力がなくなったり視覚が衰えたりして、昔と同じようなお散歩を楽しめなくなります。でも、お散歩には色々なメリットがあるので、できるだけ続けてあげたいもの。そこで今回は、動物の行動学に詳しい獣医師の菊池先生に、シニア犬のお散歩に関する様々な疑問について詳しく伺います。

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老犬になってもお散歩は必要ですか?

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シニア犬は若い頃と比べると体力が衰えるため、疲れやすくなったり、歩きたがらなくなったりすることが増えます。しかし、だからと言ってそのままにしておくと、筋力はどんどん低下し、ますます歩きたがらなくなります。シニア犬は歩かなくなってからあっという間に寝たきりになってしまうこともあるので、愛犬のQOL(生活の質)を維持してあげるためにも、無理のない範囲でお散歩を続けてあげましょう。

お散歩にはどんなメリットがありますか?

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筋力維持に

お散歩に限らず、適度な運動をすることは健康な体を維持する上で非常に大切です。適度に体を動かして筋力を維持することができれば、いつまでもお散歩を楽しめますし、自分の好きなタイミングでお水を飲んだりトイレに行くこともできます。筋力が低下して寝たきりになってしまうと、食事やトイレ、寝返りすらも自分ではできなくなってしまうので、筋力を維持することはとても大切なのです。

シニア犬になると後ろ足から衰えていくケースが多いので、後ろ足は特に気をつけて見てあげましょう。こちらの記事で後ろ足のケアについて詳しく解説しています。

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血行促進

運動量が減るとだんだん筋肉量が落ちて、血行が悪くなります。そうすると免疫力が低下したり、消化管の働きが低下したり、心臓病や腎臓病などの持病を悪化させる原因にもなります。また、体を動かさないでいると飲水量が減るため、ますます血行が悪くなるという悪循環に陥ります。運動をすることで血行を促進することができるので、可能であれば1日に1回以上は無理のない範囲で体を動かしてあげるよう意識しましょう。

脳の健康を維持

「体が弱ってきたから」「持病があるから」といってお出かけを制限し、家の中でおとなしく過ごさせていると、認知症を発症するリスクが高まります。認知症は脳の機能が低下する病気で、一度発症すると完治することはありません。

認知症を予防するには、脳にいい刺激を与えてあげることが大切です。お散歩中、犬は土や草の匂いを嗅ぎ、太陽の光や風を浴びて、たくさんの人間や他の犬、猫、鳥などの動物に出会います。こうしたたくさんの刺激は、愛犬の脳の健康をサポートしてくれるでしょう。認知症を発症してしまった時も、脳にいい刺激を与えることで進行を遅らせることができます。

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元気になれることも

家の中でじっとしていると、だんだん体を動かすのが億劫になって、1日のほとんどを寝て過ごすようになります。こうなると、体力よりも先に気力が衰えてしまいますよね。お家の中では歩けない子が、大好きな公園までいくと元気に歩けたりすることもるので、愛犬を元気付けてあげるためにもお出かけする習慣を続けてあげてください。

大好きなお友達と楽しい時間を過ごしたことで、元気になれたという子もいました♡

 

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老犬とお散歩するときの注意点を教えてください

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お散歩前のウォーミングアップ

シニア犬になって寝ている時間が長くなると、足腰が固まりやすくなります。急な運動は関節や筋肉に負担をかける恐れがあるので、お散歩の前にマッサージをしてあげたり、室内で少し歩かせるなど、ウォーミングアップをしてから出かけるといいでしょう。

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気温と時間帯をチェック

犬は年を取ると体温調節が苦手になり、暑さや寒さに弱くなります。夏場は熱中症にかかりやすくなるので、日中のお散歩は避け、涼しい時間帯に出かけるようにしましょう。視力が低下していると暗いところを歩くのが苦手になるので、早朝のお散歩がおすすめです。

冬のお散歩も注意が必要です。暖かい部屋から外に出て急に気温が下がると、心臓や気管に負担がかかります。寒い季節は防寒用の服を着せてあげ、できるだけ暖かい日中に出かけるようにしましょう。

持ち物にも一工夫

シニア犬とのお散歩には予期せぬ事態が起こる可能性があります。万一の事態に備えて、お散歩に行くときはかかりつけの動物病院の診察カードや携帯電話、ある程度の現金を持っていきましょう。また、一人で抱きかかえるのが大変な大型犬の場合は、大判の風呂敷を一枚持っていくといいです。いざというとき、風呂敷を広げてその上に愛犬を寝かせれば、担架の替わりになります。

お散歩中に足を引きずる、倒れる、呼吸が乱れるなどの異変が現れたら、すぐにかかりつけの動物病院へ連絡して指示を仰ぎましょう。慌てて動かすと危険な場合もありますし、緊急処置が必要なら、事前に電話をしておくことで受け入れ態勢を整えてもらうことができます。

絶対に無理をしない

シニア犬はちょっとしたことが原因で急激に体調を崩すことがあります。絶対に無理をせず、体調が悪そうな日はお散歩に行かない、お散歩の途中に辛そうな様子を見せたら早めに切り上げるなどして、愛犬の様子に合わせて臨機応変に対応してあげましょう。歩く速さも愛犬のペースに合わせてあげることが大切です。疲れてきたら途中で休憩を入れつつ、のんびりとお散歩を楽しみましょう。

お散歩に行っても歩かないときはどうしたらいいでしょう?

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まずは動物病院へ

シニア犬になると徐々に体力が減っていくので、以前のようにお散歩に行きたがらなくなったり、出かけても歩きたがらなくなることがあります。しかし、中には病気が原因となっていることもあるので、愛犬の様子に変化が見られたときは必ずかかりつけの動物病院に連れて行きましょう。

関節炎や椎間板ヘルニアなどで体に痛みが出て歩きたがらないのかもしれませんし、心臓病や気管支疾患などが原因で疲れやすくなっているのかもしれません。「きっと年齢的な問題だろう。」と安易に自己判断せず、必ず獣医師に診てもらうようにしましょう。

こんなときは要注意!

多くの場合、病気が初期のうちに治療を開始することができれば、その後の経過はグッとよくなります。ただ、小型犬に多い心臓病や気管虚脱などの病気は、目立った初期症状が現れないことも多く、治療を開始するのが遅れてしまうケースも少なくありません。以下のような様子が見られたときは、早めにかかりつけの獣医師に相談しておくと安心です。

  • お散歩に行きたがらない
  • お散歩に行っても立ち止まってしまう
  • 走った後に咳をする
  • リードを引くと毎回咳が出る
  • 歩いているときの呼吸音に違和感がある
  • 歩き方に違和感がある
  • 階段を嫌がる

きちんと動物病院で診てもらって、年齢的な問題と診断された場合には、お散歩コースを見直したり、お散歩の仕方を工夫したりして、愛犬が無理なくお散歩を楽しめるような環境を整えてあげましょう。

老犬とのお散歩ではどんな工夫をするといいですか?

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愛犬が高齢になってきたら、一度お散歩コースを見直してみましょう。その子の性格や状況によって最適なお散歩コースは異なります。愛犬と一緒にお気に入りの場所を探してみてください。

落ち着ける場所を選んで

シニア犬は素早く動けないので、車や自転車の往来が激しい場所を歩かせるのは危険です。また、視力や聴力が衰えていると、人通りの多い場所や子供が遊んでいる近くなど、周囲の動きが激しい場所は落ち着きません。そういう道は抱っこやカートで移動して、落ち着いて散策できる公園などに連れていってあげましょう。無理なくゆったり歩くことができて、途中に日向ぼっこやおやつタイムなどの小休憩を挟める場所がおすすめです。

歩く時間を調節する

愛犬が疲れやすくなったと感じたら、お散歩コースを短くしたり、行きは抱っこで帰りだけ歩きという風に、歩く時間を調節してあげるといいでしょう。お出かけ好きな子ならカートがあると便利です。疲れたらカートに乗って休憩することができますし、歩きたいところはカートから降りてお散歩を楽しむことができますよ。

歩きやすい道を選ぶ

体力が落ちてきたら、歩きにくい砂利道や疲れやすい坂道、階段などは避けましょう。背の高い草むらもシニア犬にとっては歩きにくいです。歩きやすい平坦な道を選んであげましょう。芝生なら歩ける、土の上なら歩ける、という子もいます。

愛犬の状況に合わせてコース選びを

高齢になっても元気に歩ける場合は、無理にコースを変える必要はありません◎。お散歩をずっと楽しめるように、できるだけ後ろ足の筋力を保ってあげようと、坂道を見つけたらなるべく登るようにしているという飼い主さんもいらっしゃいました。

老犬になって視力が低下してもお散歩に行けますか?

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視力が衰えてもお散歩は楽しめる◎

シニア犬になると視力が低下してしまうこともあります。「目が見えていないのにお散歩に連れて行ってもいいのだろうか?」と不安に感じるかもしれませんが、犬は嗅覚や聴覚に優れた動物なので、歩き慣れた道なら問題なくお散歩を楽しめることも多いです。

視力が低下していると、暗い場所はさらに見えづらくなるので、お散歩に行く時はできるだけ明るい時間を選ぶといいでしょう。人や自転車などが行き交う場所は危ないので、静かにゆったり散策できるところをコースに選んであげるといいですよ。

中には嫌がる子もいます

目が見えなくなったり、耳が聞こえなくなったりすると、犬も不安を感じやすくなります。今までと同じようにお散歩を楽しめる子もいますが、中にはお出かけを嫌がるようになる子もいます。そんなときは無理に歩かせなくて大丈夫。

歩き慣れた道だけ歩けるようなら、お散歩コースを変えないようにしましょう。慣れているはずの道も怖がるようなら、無理せず抱っこやカートで連れ出してあげるのもおすすめです。少しずつ慣らしていくと、再び元気よくお出かけできるようになることもあるので、愛犬の様子を見ながら無理のない範囲で練習してみてください。

保護帽もおすすめ

視力が落ちると日向と日陰の移動が苦手になったり、縁石などにぶつかって怪我をしてしまうこともあります。そんなときは帽子をかぶせてあげるのもおすすめ◎。視力が低下した子のために作られた保護帽もあるので、そうしたアイテムを上手に活用しながらお散歩を楽しんでください。

 

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持病があってもお散歩には行けますか?

高齢になると色々な病気にかかることが増えてきます。「病気だから安静にしていないと…。」と思われるかもしれませんが、基本的には獣医師から絶対安静を指示されている場合を除いて、多少お散歩を楽しむくらいの運動は問題ありません。慢性疾患と上手に付き合いながらお散歩を楽しんでいる子はたくさんいます。不安なときはかかりつけの獣医師に確認してみましょう。

 

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自力で歩けないときはどうしたらいいですか?

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シニア犬になって足腰が弱くなると、自力での歩行が少しずつ難しくなることもあります。そんなときは色々なアイテムを活用して、無理のない範囲でお散歩に連れ出してあげてください。

介護用ハーネス

介護用ハーネスはシニア犬の足腰にかかる負担を軽くし、歩行や立ち上がりをサポ―トをしてくれるものです。色々なタイプがありますが、お散歩に使うなら排泄しやすいタイプを選びましょう。

また、愛犬の状態によってハーネスのサポート力を見極めることも大切です。前足だけ、後ろ足だけを部分的に補助するタイプもあれば、全身をしっかり包み込んでサポートするタイプもあります。必要以上に補助してしまうと筋力の低下を招いてしまうので、最初は部分補助できるものから試してみてください。補助されているうちに筋力がついてきて、ハーネスがいらなくなることもあります。

犬用車椅子

自力での歩行が難しい場合は、犬用の車椅子もおすすめです。気持ちは歩きたいのに体を思うように動かせないでいると、ストレスが溜まって夜鳴きをするようになることもあります。車椅子があれば、少しの力でしっかり歩けるので、運動不足やストレスの解消に役立ちます。歩行をサポートしてくれるだけでなく、介護用として使えるものもあるので、愛犬の状況に合わせて最適な車椅子を選んであげてください。

車椅子の選び方や入手方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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カートでのお散歩やお出かけもおすすめ

自力で歩くことができなくなったら、抱っこやカートを活用してお外に連れ出してあげましょう。カートに乗せるときは天井をあけ、存分に日光浴を楽しませてあげてください。子犬のように自ら飛び出すことはあまりないと思いますが、筋力の低下から踏ん張りがきかないことがあります。飛び出し防止のリードホルダーは必ずつけておきましょう。

落ち着ける場所まで来たら、地面に下ろしてあげるのもおすすめです。お家の中では歩けなくなっても、外では歩けることもあります。

最後に

日々のお散歩は愛犬の健康を維持するだけでなく、精神的にもいい影響があります。もし愛犬が歩きたがらなくなっても、飼い主さんの工夫次第でまたお散歩を楽しめるようになることもあります。無理せず、愛犬のペースに合わせてお気に入りのお散歩道を見つけてあげてください。