犬はもともと便秘になりにくい動物だと言われていますが、年を取ると便秘をしやすくなります。愛犬が便秘になったら、どうしたらいいのでしょう?便秘を予防するためにはどんなことに気をつけたらいいのでしょうか?ここではシニア犬の便秘について、獣医師の石川先生に詳しいお話を伺います。
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老犬の便秘について
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何日からが便秘なの?
犬は高齢になると便秘になることが多くなります。健康な状態であれば、1日の排便回数は1~3回程度ですので、もし2日以上ウンチをしていない状態が続くなら便秘と言えるでしょう。
日頃から、愛犬のウンチの状態(量・色・形状)や回数、排泄の時間帯を日誌などに記録しておくと、ちょっとした変化にも気づきやすくなります。便や尿のチェックは、健康管理の一環として取り入れられるといいですね◎
毎日排便があってもこんな時は要注意
健康なウンチはある程度柔らかさがあります。しかし便秘になるとウンチが硬くなり、ポロポロと数センチでちぎれるようになることもあります。毎日排便があっても、このような状態が続くと便秘になっていると考えられます。トイレの後に片付けをする際には、ウンチの色や見た目だけでなく、柔らかさもチェックしてあげるとよいでしょう。つまんだ時、軽く指の跡が残るくらいが適度な硬さと言えます。
また、便秘がひどいとウンチが硬くなり、排泄時に肛門付近が切れたり、腸が傷ついたりして、ウンチの表面に血が付着することがあります。血便が出ると慌ててしまうかもしれませんが、他に症状がなく、コロコロしたウンチの表面に赤い血がついているだけなら、そこまで緊急性は高くないと思われます。ただし、出血量が多かったり頻繁に出血したりする場合は、早めにかかりつけの獣医師に相談してください。
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老犬が便秘になりやすい理由
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便秘の原因① 飲水量の低下
シニア犬は喉の渇きに鈍感になったり、水飲み場まで歩いていくのが億劫になったり、様々な理由から水を飲む量が減っていきます。運動量が減って寝ている時間が多くなることも、飲水量の低下を招く要因の一つ。中には犬自身も気づかないうちに脱水状態に陥っているようなケースもあります。体内の水分が不足していると便が硬くなり、便秘を引き起こします。
便秘の原因② 筋力の低下
高齢になって運動量が減っていくと、筋力は徐々に衰えていきます。特に犬は後ろ足から弱ってくることが多く、後ろ足に力が入らないとトイレの姿勢を取るときに踏ん張りが効かなくなるのです。また、きばるときに必要な腹筋が衰えることも便秘の原因になります。
便秘の原因③ 腸内環境の変化
年齢とともに腸内環境が変化することも、便秘を引き起こす要因の一つです。犬の腸には腸内の健康を維持して老化を防いでくれる善玉菌と、腐敗や毒素を生成して体の健康を害する悪玉菌、それから健康なときは害がないのに、体が弱ると悪さをする日和見菌が生息しています。本来、これらの細菌は一定のバランスを保って腸の健康状態を維持していますが、加齢によって善玉菌が減ると悪玉菌や日和見菌が悪さをするようになり、便秘や下痢などの排泄トラブルが起きやすくなるのです。
便秘の原因④ 運動量の低下
運動量が低下することも、便秘を引き起こす要因の一つです。シニア犬は運動量が低下し、寝ている時間が長くなります。そうすると筋力はどんどん衰え、ますます動きたがらなくなるという悪循環に陥ります。また、運動量が落ちると腸の働きも弱まりやすく、その結果便秘をしやすくなります。
便秘の原因⑤ 誤飲や病気
排泄をしない状態が続くときや、その他なにかしらの症状が現れているときは、誤飲や病気が原因となっている可能性があります。愛犬の様子に違和感を覚えた時は、なるべく早めに動物病院で診てもらいましょう。
老犬の便秘対策のためには水分補給が大切
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1日あたりの飲水量の目安
便秘を解消するために、水分をたっぷり取ることは大切です。犬が1日あたりに飲む水の量は、体重1kgあたり40~60mlが目安。体重5kgの犬の場合、1日に200〜300mlの水を摂取する必要があります。
愛犬が高齢になってきたら、毎日の飲水量をチェックしてあげましょう。水を飲む量が減ると便秘がひどくなるだけでなく、腎臓病や泌尿器系の病気を発症するリスクも高まります。反対に、ガブガブ大量の水を飲むような場合も、病気の可能性があるので注意が必要です。
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老犬が水を飲みやすい環境づくり
シニア犬になって体力が低下し、水飲み場まで歩くのが面倒になっているのなら、お水の器をベッドの近くに移したり、複数の水飲み場を作ってあげるとよいでしょう。お水を飲む体勢を取るのが辛そうであれば、器を台の上に載せてあげたり、床に滑らないマットなどを敷いてあげたりすると飲みやすくなります。口元まで水の入ったお皿を運んであげるのもおすすめ。シニア犬の水を飲む量が減ったときの対策については、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。
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老犬の便秘解消のために食事も見直そう
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食事で水分補給
シニア犬の便秘対策には食事内容の見直しも効果的です。お水を飲む量が減っているのなら、日々の食事から水分を摂取できるようにしてあげるとよいでしょう。ドライフードにお湯をかけてふやかしたり、ウェットフードに切り替えてあげると食事から水分を摂取できるようになります。ただ、あまりたくさんの量を食べられない子は、水分が多すぎると食べきれない場合がありますので、水の量を調整してあげてください。
老犬が消化しやすいフードを選ぶ
もし、愛犬の消化機能が衰えてしまっているのなら、消化のいいフードを選んであげることも大切です。一概にシニア犬用フードと言っても、シニア期に差し掛かったばかりの犬に向けて作られたフードと、消化吸収機能が衰えているハイシニア期の犬に向けて作られたフードは異なります。愛犬の状態に応じて最適なフードを選んであげましょう。フードの選び方についてはこちらの記事に詳しくまとめているので、あわせて読んでみてください。
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食物繊維が豊富な食材を取り入れる
さつまいもやかぼちゃなどの食物繊維が多く含まれる食べ物を取り入れるのも、お腹の調子を整え、排便を促す助けとなります。特にさつまいもを好む子は多いので、おやつやフードのトッピングとして取り入れてみてください。ただし、持病がある子や食事制限をしている子は、必ずかかりつけの獣医さんの許可をもらうようにしましょう。また、さつまいもやかぼちゃはカロリーが高いので、与えすぎには注意が必要です。
ヨーグルトなどの整腸作用がある食べ物を取り入れる
便秘を解消するためには、整腸作用のある食品を積極的に取り入れるとよいでしょう。生きた善玉菌を多く含む食材や善玉菌の働きを助ける食材がおすすめです。フードにトッピングしたり、おやつとして与えてみてください。
<善玉菌を多く含む食材>
- ヨーグルト
- チーズ
- 納豆
- 味噌など
<善玉菌の働きを助ける食材>
- アスパラガス
- ゴボウ
- トウモロコシ
- 大豆
- りんご
- バナナなど
ただし、犬に砂糖入りのヨーグルトや人間用のチーズや味噌を与えると、糖分過多・塩分過多となる恐れがあります。犬に与えるときは無糖のヨーグルトや無塩の味噌、犬用のチーズを選ぶとよいでしょう。
その他、便秘解消のためにできること
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便秘解消マッサージ
お腹のマッサージも便秘解消に効果的です。愛犬を仰向けにした状態で、おへそを中心に優しく円を描くように時計回りにマッサージをします。この時、強く押さないようにくれぐれも注意してください。お腹はデリケートなので、優しく撫でるようなイメージでマッサージをしてみましょう。嫌がるようなら無理に押さえつけたりせず、できる範囲で取り入れてください。
適度な運動を取り入れて
老犬になると体力の衰えからお散歩に行くのを嫌がったり、おもちゃで遊ばなくなったりすることもあるでしょう。しかし、運動をしなくなると筋力が衰え、足腰がどんどん弱って、排泄時に踏ん張りがきかなくなってしまいます。適度な運動で筋力を保ちましょう。
また、運動をすると消化管の働きが刺激されて腸の動きが活発になり、スムーズな排便を促すことができます。愛犬の体調を見ながら、無理のない範囲で適度な運動を取り入れられるといいですね。
筋力が衰えやすい時期のケアについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。ぜひ日々の生活の中に取り入れてみてください。
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排泄をサポートしてあげる
足腰が弱くなってトイレの姿勢を維持できないのであれば、飼い主さんが体を支えてあげることで排泄をサポートできます。体を両脇から抱え、排泄の体勢を維持してあげましょう。初めは犬も戸惑って嫌がることがあるかもしれません。そんな時は無理をせず、一度時間をあけてからまたサポートしてあげてください。
また、トイレの姿勢をサポートするための介護用ハーネスなどもあるので、そういったアイテムを活用するのもおすすめです◎介護用ハーネスには色々な種類があるので、どれを選べばいいか悩んだときはぜひこちらの記事も参考にしてください。
シニア犬になって筋力が低下すると、自分の力で立ち上がったり歩いたりするのが難しくなることがあります。そんなとき、介護ハーネスがあればサポートがグッと楽になります◎そこで今回は介護ハーネスの選び方・作り方について、シニア犬の介護とリハビリに詳[…]
トイレシートの上で滑ってしまってうまく姿勢を維持できないようなら、トイレシートの上に100均の滑り止めを敷いたり、脚に装着するタイプの滑り止めを活用したりするのもいいでしょう。
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腸内環境を整える
腸内環境が乱れると、便秘しやすくなるだけでなく、免疫力が低下しやすくなります。実は全身に存在する免疫の70%は腸で作られると言われているので、腸内環境を整えることは健康な体を維持するためにもとても大切なことなのです。
こちらの記事では腸内環境を整えるためにできることを解説しているので、ぜひ合わせてご覧ください。
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良質な油をプラス
いつもの食事に適量のオイルをプラスすると、便の滑りがよくなることがあります。オイルと言っても色々ありますが、愛犬の食事にトッピングするなら亜麻仁油やエゴマ油に含まれる「オメガ3脂肪酸」がおすすめです。
オメガ3脂肪酸は体の炎症を抑えたり、血行を良くしたりする他、健康な脳や皮膚を維持する効果もあると言われており、シニア犬が積極的に摂取したい栄養素の一つです。具体的な効果や取り入れ方のポイントについてはこちらの記事にまとめているので、ぜひあわせてご覧ください。
愛犬が高齢になったら特に、栄養バランスには気をつけてあげたいですよね。必要な栄養全てをフードから摂取することができたらいいのですが、中には日々の食事でまかなうことが難しい栄養素もあります。例えば、炎症抑制や認知症予防などの効果がある「オメガ[…]
老犬の便秘対策におすすめのサプリメント
便秘対策のためのサプリメント4選
生きた善玉菌をや善玉菌の働きを助ける栄養素を、サプリメントで取り入れるという方法もあります。ここでは整腸作用のあるサプリメントをご紹介します。初めてサプリメントを取り入れる際は、事前にかかりつけの獣医師に相談しておくと安心です。
■ラキサトーン
動物病院でも処方されるチューブタイプのサプリメント。本来、猫の毛玉を流すためのサプリメントですが、成分の流動パラフィンが便をツルッと出させる潤滑剤になります。指にとってペロペロ舐めさせるようにして与えます。
■ディーエイチシー (DHC) 愛犬用おなか健康60粒
食いつきがいいよう、チキン&ポーク風味にした粒状のサプリメント。ビフィズス菌、フェカリス菌、有胞子性乳酸菌の3種類の善玉菌と、その働きをサポートする成分が配合されています。そのまま与えることもできますし、フードに混ぜて与えてもいいでしょう。
■クロノーブペッツ
乳酸菌だけでなく、酵母や納豆菌など複数の菌をバランス良く配合した、ペットの腸活のためのサプリメント。人も食べることができるヒューマングレードで、動物病院や牧場などでも利用されています。いつものごはんにふりかけて与える粉末タイプです。
■ビヒズスオリゴ
1包あたり10億個以上のビフィズス菌と、300mgのミルクオリゴ糖を配合したサプリメント。こちらも粉末タイプなので、フードにふりかけて与えてください。
人間用のビオフェルミンを犬に与えてもいい?
人間の整腸剤として有名なビオフェルミンですが、実は犬用のビオフェルミンもあります。人間用と同じく、腸内に不足した善玉菌を補充し、腸内環境を整え、排泄トラブルを解消する効果があります。ただし、人間用と犬用のビオフェルミンでは用量や配合されている成分に違いがあるので、自己判断で人間用のビオフェルミンを与えることはやめましょう。
「量を調整できるのであれば人間用を飲ませても良い」という獣医師もいますが、飼い主さんが適切な量を判断するのは難しい上、まれにアレルギー反応を起こして体調が悪化する場合もあります。ビオフェルミンを初めて使用する場合は、かかりつけの獣医師に相談して、動物病院で処方されたものを与えるようにしましょう。
尚、ビオフェルミンは下痢をしている時に使用することが多く、便秘をしている時に処方することはあまりありません。
動物病院へ行くタイミングは?
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便秘対策をしてもダメなら動物病院へ
便秘になっても愛犬に元気や食欲があるのであれば、まずは水分補給やフードの見直しをして様子を見ていても構いません。もちろん、早めにかかりつけの獣医師に相談して、便秘の解消法についてアドバイスをもらうのもおすすめです。しかし、色々対策をしても便秘が解消されない場合は、浣腸や摘便などのウンチを取り出す処置が必要となるケースもあります。愛犬の便秘が3日以上続くようであれば、動物病院へ連れて行ったほうがよいでしょう。
痛みや他の症状がある時はすぐに動物病院へ!
愛犬が元気で、食欲もあるなら様子を見ていても構いませんが、排便時に痛みがあったり、便秘以外にも嘔吐や食欲低下、体重減少などの症状が見られるときは注意が必要です。なにかしらの病気が原因となっている可能性があるので、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。便秘を引き起こす病気としては、以下のものが考えられます。
- 会陰ヘルニア
- 腸閉塞
- 腫瘍、ポリープ(腺癌・悪性リンパ腫など)
- 腸炎
- 肛門嚢炎
- 慢性腎臓病
- 異物誤飲
- 甲状腺機能低下症
- 前立腺肥大(男の子)
動物病院に連れて行く際は、愛犬の便も一緒に持って行くとよいでしょう。ラップなどで包み、ナイロン袋に入れて持参するようにしてください。
内服薬を飲んでいるときも必ず獣医師に相談して
医原性便秘と言って、他の病気の治療などで処方された薬が便秘を引き起こすこともあります。薬を飲み始めてから便秘になったのであれば、処方された薬が体に合っていない可能性があるため、獣医師に相談してください。医原性便秘を引き起こす可能性があるものとして、以下が考えられます。
- 鎮痛剤
- スクラルファート(胃薬)
- 利尿剤
- 抗ヒスタミン薬
- 鉄剤
- 抗コリン剤
- 吐き気止め
最後に
愛犬が年を取って便秘がちになるのはよくあることです。食事の見直しや無理のない範囲で運動を取り入れ、できるだけ予防してあげられるといいですね。あまりに便秘が続くようであれば、早めにかかりつけの獣医師に相談してみましょう。