高齢になった愛犬の健康を維持するために、サプリメントを取り入れたいと考えている飼い主さんも多いでしょう。しかし犬用のサプリメントは非常に種類が多いので、どれを選べばいいか悩んでしまいますよね。かつて、サプリメント会社に勤務されていた獣医師の林先生に、サプリメントの選び方やシニア犬におすすめなサプリメントについて詳しく伺いました。
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老犬にサプリメントがおすすめな理由
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サプリメントの効果① 必要な栄養を強化できる
シニア犬になると胃腸の働きが衰えたり、免疫力が低下したり、体の状態が大きく変化します。そのため、若い頃と同じ食生活を続けていると、体が必要としている栄養素を十分摂取できなくなってしまうことがあります。そんなときは、食事の見直しとあわせて、サプリメントで必要な栄養を補強してあげるとよいでしょう。
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また、食欲が低下してあまり量を食べられなくなった時も、少量でしっかり栄養を補給できるサプリメントがおすすめです。
サプリメントの効果② 病気の予防に
サプリメントは食品の一種で、薬ではありません。しかし、サプリメントで不足しがちな栄養素を補うことは様々な病気の予防に役立ちます。症状が現れてからサプリメントを与えるよりも、元気なうちからコツコツ続けていくことが大切なので、愛犬が高齢になってきたら早めにサプリメントの導入を検討してあげてください。
動物病院でも予防医療や治療の一環としてサプリメントを処方しているところは多いです。どんなサプリメントを与えればいいか悩んだときは、かかりつけの獣医さんに相談してみましょう。
老犬が摂取すべき栄養素は?
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シニア犬になると色々なトラブルが現れるようになりますよね。ここでは、シニア犬でよく見られるトラブルを予防するために、どのような栄養素を摂取すればいいか解説します。
健康な関節を維持する
関節の軟骨を形成しているグルコサミンやコンドロイチンは、犬の体内で生成されていますが、高齢になると徐々に生成量が減ってしまいます。その結果、関節の軟骨がすり減って痛みが出るようになるのです。
痛みがあると犬のQOL(生活の質)は大きく低下し、運動量が減って筋力も衰え、最悪の場合寝たきりになってしまうこともあります。グルコサミンやコンドロイチンはシニア犬が積極的に摂取するとよい栄養素と言えるでしょう。
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肝臓をいたわる
高齢になると様々な臓器に負担がかかるようになります。肝臓もその一つ。年齢とともに肝臓の機能が低下してしまうのはよくあることです。幸い肝臓は再生できる臓器ですので、早めにケアして健康な状態を保ってあげましょう。
肝臓をいたわるためには、BCAA、亜鉛、発酵性食物繊維、L-カルニチン、抗酸化成分、SAMeなどの成分を摂取するとよいと言われています。それぞれの役割については、こちらの記事で詳しく解説しています。
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皮膚の健康を守る
シニア犬になると免疫力が低下し、皮膚のバリア機能も低下して、皮膚トラブルを起こしやすくなります。皮膚の状態が悪くなると被毛の状態も悪化してしまうので、皮膚が弱い子は早めにケアをしてあげましょう。
健康な皮膚を維持するためには、皮膚の代謝をサポートする亜鉛、皮膚のバリア機能を維持するオメガ6系脂肪酸、血流をよくしたり皮膚の炎症を鎮めるオメガ3系脂肪酸が必要です。
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脳の健康を守る
認知症は人間だけでなく犬にも見られる病気で、発症すると脳神経や自律神経がうまく機能しなくなります。残念ながら根本的な治療法は確立されていませんが、ある程度予防をすることは可能です。
細胞の老化を防ぐ抗酸化成分や亜鉛、脳神経に働きかけることができるDHA(オメガ3脂肪酸の一種)を摂取することは健康な脳を維持することに繋がります。
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腸内環境を整える
腸の中には無数の細菌が存在していて、それらは大きく3つのグループに分けられます。一つは腸内の健康を維持してくれる善玉菌、もう一つは毒素を生成して体の老化を早めてしまう悪玉菌、そして健康なときは害がないのに、体が弱ると悪玉菌と同じように悪さをするようになる日和見菌です。シニア犬になると善玉菌が減ってしまうので、腸内環境が乱れやすく、お腹の調子が悪くなりがち。乳酸菌などの善玉菌や、善玉菌のエサとなる食物繊維を積極的に摂取するとよいでしょう。
シニア犬になると腸内環境が変化して、便秘がちになったり下痢や軟便をしやすくなります。腸内環境を整えてあげるために、私たちにできることはあるのでしょうか?ここでは、自宅でできる「おうちケア」に注力されている獣医師の林先生に、シニア犬の腸活につ[…]
健康な目を維持する
瞳が白く濁って視力が低下してしまう白内障は、シニア犬が注意したい病気の一つです。症状が進行すると合併症を引き起こし、痛みが出てQOL(生活の質)が大きく低下したり、最悪の場合失明することもあります。また、病気にかからなくても、年齢とともに視力が低下していくのは珍しいことではありません。
健康な目を維持するためには、網膜の脂肪を構成するDHA(オメガ3脂肪酸の一つ)や、網膜に働きかけるルテインやアントシアニン、アスタキサンチンなどを積極的に摂取するとよいでしょう。
白内障はシニア犬によく見られる目の病気で、完治させるためには手術が必要になります。しかし、高齢になってからの手術は愛犬にかかる負担が大きく、治療方針について悩む飼い主さんも多いでしょう。そこで今回はシニア犬によく見られる白内障という病気につ[…]
歯周病を防ぐ
歯周病はシニア犬が注意したい病気の一つです。口の中に残った食べカスを餌にして細菌が増殖し、口内環境を悪化させ、腎臓や心臓などにも悪影響を与えるようになります。予防のためには日々の歯磨きが何よりも大切ですが、歯磨きとあわせて歯周病予防の効果がある乳酸菌を与えるとよいでしょう。
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シニア犬に不足しがちなミネラル
ビタミンやミネラルは健康な体を保つのに必要不可欠な栄養素です。ただ、摂取量が多くても少なくても体調不良を引き起こすため、バランスの調節が難しいと言われています。市販の総合栄養食にはビタミンやミネラルなどがバランスよく配合されているので、総合栄養食を与えていれば問題ないはずなのですが、年齢とともに消化吸収力が衰えてしまうと、特に鉄分やカルシウムなどのミネラルが不足しやすくなってしまいます。
このような場合には鉄分やカルシウムを補ってあげるとよいのですが、前述の通り過剰摂取は体調不良の原因となりますので、取り入れる際はかかりつけの獣医師に相談しながら取り入れると安心です◎
老犬がサプリメントを取り入れる時の注意点
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サプリメントはあくまで食事の補助
愛犬の健康のために、ついあれもこれもと複数のサプリメントを取り入れたくなるかもしれませんが、サプリメントはあくまでも栄養補助食品です。食事で摂取できる栄養は食事から取り入れ、足りないものだけを補うようにしましょう。たくさんのサプリメントを与えるのではなく、愛犬の状態にあわせて最適なものを選んでください。
与えるときはかかりつけの獣医師に相談して
新しいサプリメントを取り入れる際は、事前にかかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。特に持病がある子の場合は、サプリメントのせいで持病が悪化してしまうこともあります。必ずかかりつけの獣医師の指示に従ってください。
もし、かかりつけの獣医師以外に相談したいのであれば、ペットの栄養学に詳しい獣医師をセカンドオピニオンにするのもおすすめです。
食事から摂取しやすい栄養素は?
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総合栄養食で摂取できるもの
健康な体を維持するための栄養素のうち、市販のフード(総合栄養食)で必要量をしっかり摂取できる栄養素は以下の通りです。
栄養素 | 見込める効果 | 含まれる食材 |
L-カルニチン | 肝臓の保護 | 肉など |
食物繊維 | 肝臓の保護
腸内環境を整える |
穀物、野菜など |
抗酸化成分 | 肝臓の保護
脳の健康を守る 細胞の老化を防ぐ |
緑黄色野菜、果物など |
オメガ6脂肪酸 | 健康な皮膚を維持する | 肉、卵など |
これらの栄養素は通常の食事から十分な量を摂取することが可能なので、サプリメントで補強する必要はありません。
乳酸菌
歯周病予防や腸内環境を整える効果がある乳酸菌は、ヨーグルトや納豆に多く含まれている善玉菌の一種です。ただし、取り入れた乳酸菌の全てが腸で活躍できるわけではなく、ほとんどは胃酸や胆汁によって死滅してしまいます。生きて腸に届いても、ある程度時間が出るとほとんどが排泄されてしまうため、毎日継続して摂取することが大切です。
毎日のトッピングやおやつとして与えるのであれば、豆乳ヨーグルトがおすすめ◎栄養バランスが崩れないよう、1日の摂取カロリーの10%以内になるよう調節してください。継続して与えることが難しい場合には、サプリメントで摂取するとよいでしょう。シニア犬におすすめな乳酸菌のサプリメントは、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
シニア犬になると腸内環境が変化して、便秘がちになったり下痢や軟便をしやすくなります。腸内環境を整えてあげるために、私たちにできることはあるのでしょうか?ここでは、自宅でできる「おうちケア」に注力されている獣医師の林先生に、シニア犬の腸活につ[…]
BCAA
タンパク質は複数のアミノ酸が連なってできています。犬の体内で合成することのできない必須アミノ酸のうち、ロイシン、イソロイシン、バリンの三つをまとめてBCAAと言います。BCAAは筋肉を維持する役割があるため、シニア犬は積極的に摂取するとよいでしょう。また、肝機能を助ける働きがあるので、肝臓が弱っている子にもおすすめです。
BCAAは肉類や卵、マグロ、カツオなどの良質なタンパク質に多く含まれています。おやつやトッピングで取り入れてもいいですし、サプリメントで摂取してもよいでしょう。
鉄分
全身に酸素を運ぶ赤血球は、鉄分から作られています。鉄分が不足すると全身に十分な酸素が行き届かなくなるため、疲れやすくなったり、元気がなくなったり、被毛トラブルが現れるようになります。
鉄分はシニア犬に不足しがちなミネラルの一種で、牛や豚、鶏などのレバーや赤身肉に多く含まれています。おやつやトッピングで取り入れてもいいですし、サプリメントで摂取してもいいでしょう。ただし、過剰摂取すると体調不良を引き起こしてしまうので、与える際はかかりつけの獣医師に相談しながら与えるようにしてください。
αリノレン酸(オメガ3脂肪酸の一種)
健康な脳や目、皮膚、関節を維持する上で重要なオメガ3脂肪酸は、「αリノレン酸」「EPA」「DHA」という3つの脂肪酸の総称です。どれも体にとって必須の栄養素ですが、体内で合成することができないため、食事から摂取する必要があります。
市販のフードの中にはオメガ3脂肪酸を配合しているものもありますが、オメガ3脂肪酸はどれも熱に弱く、常温の環境下ではすぐに酸化してしまいます。そのため、オメガ3脂肪酸は、トッピングやサプリメントから摂取するのがおすすめです。
オメガ3脂肪酸の一種であるαリノレン酸には、血管内に付着した酸化脂質を洗い流し、血管をきれいにする効果があります。皮膚が弱い子や腎臓や胃腸などの臓器が弱っている子は、αリノレン酸を多く含む亜麻仁油を、いつものフードに少量(体重5kgで小さじ1/2、11〜15kgで小さじ1程度)ふりかけてあげるとよいでしょう。
亜麻仁油は加熱に弱いので、手作りごはんにトッピングするときは必ず冷めてから振りかけてください。保存する際はできるだけ密封した状態で冷蔵庫に入れ、1ヶ月程度で使い切るようにしましょう。
サプリメントで摂取するとよい栄養素は?
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グルコサミン・コンドロイチン
健康な関節を維持するためのグルコサミンやコンドロイチンは、食べ物から摂取することが難しい栄養素です。そのため、サプリメントで補強してあげるのがおすすめです。
ただし、シニア犬のために作られたフードの中には、あらかじめ健康な関節を維持するためのグルコサミンやコンドロイチンを配合しているものもあります。そうしたフードを与えているのであれば、さらにサプリメントを追加する必要はありません。サプリメントを選ぶときは、いま与えているフードにどんな栄養素が入っているのかも確認しながら決めるといいですよ◎
EPA・DHA(オメガ3脂肪酸の一種)
オメガ3脂肪酸のうち、「EPA」と「DHA」は食べ物から摂取することが難しいので、サプリメントで取り入れるとよいでしょう。関節の炎症を鎮め、脳神経系を活性化させ、血液をサラサラにする効果があります。関節疾患がある子や認知症のケアをしたい子の他、ドライアイなどに悩まされている場合も、EPA・DHAを摂取するといいですよ。
ちなみに、オメガ3脂肪酸の一種である亜麻仁油を取り入れながらEPA・DHAも摂取すると過剰摂取になる恐れがあります。両方摂取したい場合は毎日交互に取り入れるのがおすすめですよ◎
SAMe
筋肉や免疫などを作っているタンパク質は、複数のアミノ酸が連なってできています。SAMeは犬の体の中にあるアミノ酸の一種で、肝機能の回復や維持を促す効果があると言われています。SAMeは犬の体内で合成されていますが、加齢とともに合成量が減るためサプリメントで補ってあげるといいでしょう。肝臓が弱っている子は積極的に摂取したい栄養素の一つです。
亜鉛
亜鉛はシニア犬に不足しがちなミネラルの一つです。亜鉛が不足すると皮膚の状態が悪くなったり、免疫力の低下を引き起こします。そのため、動物病院でも皮膚トラブルを抱えた子に対し、亜鉛を与えて様子を見るというケースもあります。
また、亜鉛はさまざまな物質から肝臓を守る働きもしているので、肝臓が弱っている子は積極的に摂取するとよいでしょう。通常の食事やフードから摂取するのが難しいため、サプリメントで補強してあげるのがおすすめです。
カルシウム
丈夫な骨を作る上で欠かせないカルシウムも、シニア犬に不足しがちなミネラルの一つです。高齢になるとだんだん骨密度が低下してくるので、サプリメントで補ってあげるとよいでしょう。ただし、カルシウムを過剰に摂取すると上記で解説した亜鉛の吸収を阻害してしまったり、尿路結石の発症リスクを高めてしまうなど、体調不良に陥ることもあります。与える際はかかりつけの獣医師に相談しながら与えると安心です。
ルテイン・アントシアニン・アスタキサンチン
シニア犬になると目のトラブルが多くなります。目の炎症を防ぎ、網膜の毛細血管を保護してくれるルテイン、アントシアニン、アスタキサンチンを積極的に摂取するとよいでしょう。これらはブルーベリーに多く含まれています。
ただ、ブルーベリーは少し前まで、犬に与えてもいいと言われていたのですが、アメリカの研究で中毒性が指摘されました。そのため、これらの栄養素はブルーベリーからではなく、サプリメントから摂取した方が安心です。
老犬に優しいサプリメントの選び方
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目的を考える
まずはかかりつけの獣医さんとの相談しながら、愛犬の体調をきちんと把握しましょう。肝臓をいたわってあげた方がいいのか、関節を保護してあげた方がいいのか、その子の状態に応じて必要なサプリメントを選んであげてください。また、犬種によってかかりやすいと言われている病気があるのなら、そうした病気を予防するためのサプリメントを選ぶのもおすすめです。
該当している成分がしっかり配合されているもの
サプリメントの中には色々な成分を配合しているものもありますが、シニア犬に与えるなら、添加物が少なく、必要な成分がしっかり配合されているサプリメントを選ぶといいと思います。例えば、健康な脳を保つためのサプリメントを与えたいのであれば、EPA・DHAの配合割合が多いサプリメントを選ぶとよいでしょう。
最後に
シニア犬は消化吸収機能が衰えるため、しっかり食べていても十分な栄養を取りこめなくなっていきます。また、本来体の中で合成されるはずの栄養が、だんだん生成されなくなってしまうこともあります。愛犬の状態にあったサプリメントを活用して、必要な栄養を補ってあげてください。