シニア犬(老犬)の毛並みが気になる…。毛並みが変化する原因と対策

フワフワした被毛は犬のチャームポイントのひとつですよね。愛犬が高齢になってくると毛質が変化してくることは多いですが、できるだけフワフワな被毛を維持してあげたいと思う飼い主さんも多いでしょう。そこで今回はシニア犬の毛並みを維持するためにできることを、獣医師の丸田先生に伺います。

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シニア犬は毛並みが変化することも多いですよね?

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犬の毛並みは年齢とともに少しずつ変化していきます。毛色が白っぽくなったり、毛の量が全体的に減って薄くなったり、毛質が変化することもあります。毛が細くなったり、パサパサと乾燥してツヤがなくなったり、中にはクルクルとカールするようになる子もいるでしょう。

こうした変化はシニア犬で多く見られるものではありますが、中には病気が原因となっていることもあるので注意が必要です。

毛並みが変化する原因を教えてください

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毛並みが変化する原因① 病気の可能性

年齢とともに毛質が変化するのはある程度仕方のないことですが、中には病気が隠れていることもあります。愛犬の被毛の変化に気づいたときは、一度かかりつけの動物病院できちんと診てもらうようにしましょう。

中高齢の犬で比較的よく見られるクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、初期症状が老化現象とよく似ていて、飼い主さんが気付けないことも多いです。毛が抜けるようになったり、皮膚が黒ずんだりすることがあります。また、多くの高齢犬が発症する慢性腎臓病腎臓でも、被毛がボソボソになることがあります。

 毛並みが変化する原因② 皮膚が弱くなる

犬の皮膚は人間と同じように、表皮、真皮、皮下組織の三つの層からできていて、犬の被毛は一番外側の表皮で作られています。表皮では常に新しい細胞が生まれていて、古くなった細胞はフケや角質となって体の外へ剥がれ落ちていきます。一定のサイクルで細胞が生まれ変わることで、皮膚は健康な状態を保つことができるのです。

しかし、シニア犬は新陳代謝が衰えてこの生まれ変わりのサイクルが乱れたり、免疫力が落ちたりすることから、皮膚の状態が悪くなりがちです。被毛は皮膚から作られているため、皮膚の状態が悪くなると被毛の状態も悪化するのです。

毛並みが変化する原因③  血行不良

健康な被毛を保つためには、被毛を作り出す表皮に十分な栄養や酸素が届けられなくてはなりません。しかし、年齢とともに運動量が徐々に少なくなっていくと、筋力の衰えや寝る時間が長くなることなどから血行不良を起こしやすくなります。栄養や酸素は血液によって運ばれているため、血行が悪くなると皮膚に十分な栄養が届かなくなり、健康な被毛が育たなくなります。

特に耳の先は血管が細く、血行不良を起こしやすいと言われています。高齢になって耳の毛がポロポロと抜けていくようになることもあります。

毛並みが変化する原因④ フードが合っていない

犬の体を作るもととなっているのは肉や魚などに多く含まれるタンパク質です。皮膚や被毛もタンパク質から作られているので、十分なタンパク質を摂取できていないと当然毛並みは悪くなります。

一般的に、市販のフード(総合栄養食)には必要最低限のタンパク質が含まれていますが、愛犬の体に合わないフードを与えていると消化・吸収がうまくできず、被毛の状態が悪化することがあります。犬は高齢になると胃腸の働きが衰え、消化吸収機能が低下します。今まで問題なく食べられていたフードも年齢とともに体に合わなくなることがあるので注意しましょう。

キレイな被毛を保つためにできることはありますか?

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年齢にあったフード選び

被毛や皮膚はタンパク質から作られているので、質のよいタンパク質を与えることは大切です。しかし、だからといって偏った食事内容にならないよう注意しましょう。皮膚や被毛だけでなく、体全体を健康な状態に保つためには、栄養バランスのいい食事が何よりも大切です。

シニア犬の場合、消化吸収力が衰えていることも多いので、年齢にあったフードを選んであげるといいでしょう。シニア犬用として販売されているフードの中にも、シニアになったばかりの子に向けて作られたものと、消化機能が衰えるハイシニア期の子に向けて作られたものがあります。愛犬の状況に応じて、最適なフードを選んであげてください。

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また、愛犬のごはんを手作りされている方は、必要な栄養をバランスよく取り入れられているのか見直してみましょう。もしペット栄養学の知識がないまま手作りしている場合は、市販の総合栄養食をベースにして、トッピングだけ手作りすることで栄養バランスがとりやすくなります。ごはんをすべて手作りしたい場合は、栄養学に詳しい獣医師と二人三脚で取り組むといいでしょう。

血行を促進する

愛犬がシニアになったら、ぜひブラッシングやマッサージを日課として取り入れてください。どちらも血行促進の効果があるので、健康な皮膚・被毛を維持するために役立ちます。

また、毎日スキンシップを取ることで愛犬のストレスを和らげることができますし、イボやしこり、リンパの腫れなどの異変に気付きやすくなります。シニア犬に優しいマッサージのやり方については、こちらの記事でご紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。

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また、血行促進のためには鍼灸もおすすめです。鍼灸は細い鍼や温かいお灸を使って全身のツボを刺激するもので、血行を促進してくれるだけでなく、免疫力を高めたり、体の不調を改善する効果も期待できます。鍼灸治療に興味がある方は、まずはかかりつけの獣医師に相談してみましょう。東洋医学に詳しい獣医師をセカンドオピニオンとして頼るのもいいと思います。

清潔な状態を保つ

愛犬が高齢になって外出する機会が減っても、体を清潔な状態に保つためには定期的なシャンプーが必要です。皮膚炎の予防にも繋がるので、できれば2〜3週間に1回くらいの頻度でシャンプーしてあげるといいでしょう。

ただし、シニア犬は体力が衰え、足腰も弱くなるので、シャンプーをするときはできるだけ体に負担をかけないよう気をつけてあげる必要があります。シニア犬に優しいシャンプーの仕方はこちらの記事で紹介しているので、あわせてご覧ください。

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最後に

毎日ブラシをかけてお手入れしてあげたり、愛犬の年齢に応じてフードを見直したりすることは、美しい被毛を維持するだけでなく、愛犬の健康を守ることにも繋がります。もし、毛並みの変化に気づいたときは、一度かかりつけの獣医さんに診てもらうと安心ですよ◎