シニア犬は年齢的な問題から、目やにの量が増えることがあります。とはいえ、あまり頻繁に目やにが出ているようだと心配になってしまいますよね。ここでは、シニア犬の目やにの原因や対処法、動物病院に連れて行くべきタイミングについて、シニア犬の介護に詳しい獣医師の丸田先生に詳しいお話を伺います。
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老犬になると目やにが増えますよね?老化現象でしょうか?
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目やには生理現象のひとつ
空気中に舞っているほこりや花粉などの異物が目に入ると、犬はまばたきをして涙を分泌し、異物を洗い流そうとします。異物や老廃物が涙と一緒に流れ出て、目の周りで固まったものが、目やにの正体です。目やには生理現象の一つで、健康なときにもよく見られます。
老犬になると目やにが増える
年を取るとさまざまな理由から体が脱水しやすくなります。喉の渇きに鈍感になってあまり水を飲まなくなることもありますし、病気が原因で脱水状態に陥ることもあります。例えば、腎臓病や糖尿病などにかかると、薄い尿が大量に出るため、たくさん水を飲んでいても体は脱水しやすくなります。
体が脱水すると、血液や体液などの水分量が減少し、当然涙の水分量も低下します。涙は水分と脂分、そしてベタベタするムチンという成分からできていますが、高齢になって体が脱水しがちになると、水分だけが減るため目やにが出ることが多くなるのです。寝ている間は特に涙が流れないため、寝起きは目やにが付きやすくなります。
目やにの臭いは放置が原因
通常、目やには無臭です。しかし、放置すると固まってこびりついてしまい、雑菌が繁殖しやすくなります。目の周りが臭い場合は雑菌が繁殖している可能性があるので、清潔なティッシュやコットンでこまめに拭き取るようにしてください。きちんと拭き取ってしばらく様子を見ても臭いが改善されないときは、一度獣医師に診てもらいましょう。
大量の目やにや緑色の目やには病気が原因ですか?
シニア犬になって目やにが増えるのはよくあることですが、病気が原因で目やにが増えることもあります。愛犬の目やにが増えたときは、「年齢のせいだろう。」と自己判断せず、必ずかかりつけの動物病院で診てもらいましょう。尚、生理現象や老化現象としての目やには白っぽい色か黒っぽい色、もしくは茶色で、臭いはしません。
緑色の目やに・黄色の目やに
目に炎症があったりウイルスなどに感染していると、涙に膿が混じって黄色の目やにが出るようになります。この黄色い目やにに埃が混じると、グレーがかった緑っぽい色に見えることもあるでしょう。また、緑膿菌という細菌が混じっていると、目やにが緑色になります。緑色の目やにや黄色の目やにが出ているときは明らかに異常があるサインですので、早めに動物病院へ連れて行ってあげてください。
大量の目やに
目の表面にある角膜に傷がついていると、痛みが出て、たくさんの涙や目やにが出ることがあります。拭いても拭いても目やにがついているときは、目に異常が起きている可能性があります。また、急に目やにが増えた時も病気が原因と考えられます。
こびりつくような粘り気のある目やに
病気が原因の目やには、通常の目やにに比べてドロッとしていたりネバネバしていて、粘り気を帯びていることが多いです。まぶた全体に目やにがべったりついているような時は要注意。目やにが乾いてこびりつき、目が開けられなくなることもあります。
目やに以外の症状を伴うケース
犬自身が目を気にしたり、擦るような仕草をするときは、病気が隠れている可能性が高いです。目が充血しているときも早めに動物病院で診てもらいましょう。また、腎臓病や糖尿病などがあると体が脱水しがちになり、目やにが増えることもあります。目やに以外の症状を伴うときも早めに動物病院を受診し、どのような症状があるのかきちんと獣医師に伝えてください。
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目やにが出ている時、どんな病気が考えられるでしょうか?
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目やにが多く出ている時に考えられる病気はいくつかあります。ここではシニア犬によく見られる目の病気を解説します。
結膜炎
細菌感染や逆さまつげなどが原因で、まぶたと眼球の間にある結膜に炎症が起きる病気です。目やにが多く出るほか、目が赤く充血したり、しきりに目をこすろうとします。比較的犬によく見られる病気ですが、放置すると重症化して治療に時間がかかってしまったり、犬自身が引っ掻いて目を傷つけてしまう可能性があります。できるだけ早めに動物病院へ連れていきましょう。
角膜炎/角膜潰瘍
目の表面を覆う薄い膜のことを角膜と言います。逆さまつげや外傷などが原因で、角膜に炎症が起きている状態を角膜炎、角膜に傷がついている状態を角膜潰瘍と言います。どちらも目やにや涙がよく出るようになります。また、強い痛みが出るケースが多く、犬自身が目を擦ったり痛がったりする様子もよく見られます。早めに動物病院へ連れて行ってあげてください。
ドライアイ
シニア犬は涙の分泌量が減るため、慢性的に目が乾くドライアイを発症しやすくなります。涙は、目に潤いを与えてくれるだけでなく、目の表面を覆って外部の刺激から角膜を保護する役割もあります。その涙の量が減り、慢性的に目が乾いてしまうと、角膜に傷ができたり大量の目やにが出るようになるのです。ドライアイは放置すると失明する可能性もあるので、早めに治療をしてあげる必要があります。
その他
まぶた付近にイボのようなできものができるマイボーム腺種、まぶたが反り返る眼瞼内反症・外反症などでも目やには増えます。また、放置すると失明の恐れがある緑内障やぶどう膜炎でも、目やにが見られることがあります。どの病気も目に違和感が出たり、痛みを伴うことが多いので、愛犬が目を気にするそぶりを見せたときはすぐに動物病院で診てもらうようにしましょう。
目やにの取り方を教えてください
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目やにを放置していると固まって毛に絡まったり、雑菌が繁殖して臭くなったりします。特にシニア犬は目やにが出やすいため、飼い主さんがこまめにとってあげましょう。ここでは犬の目やにの取り方について解説します。
気づいたらこまめに拭き取って
目やにが出ているのを見つけたら、なるべくこまめに拭き取ってあげてください。ティッシュでさっと拭いてもいいですし、コットンを少し濡らして目やにを吸い付けるようにしても取りやすいと思います。ティッシュやコットンが目に入ると眼球を傷つけてしまうので、慣れないうちは目頭の部分にたまった目やにを取ってあげるとよいでしょう。
固まった場合はふやかして取る
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目やにがついたまま放置すると、目の周りの毛にこびりついて固まってしまいます。こんなときは絶対に無理やり取ろうとしたりせず、まずは目やにをふやかすようにしましょう。少し濡らしたコットンやタオルを、目やにの固まった部分に優しく押し当てます。しばらくすると目やにがふやけて柔らかくなるので、その後さっと拭き取ると簡単に取り除くことができます。
老化現象の目やには目薬でケアできますか?
目やにを予防する
シニア犬になって目やにが増えるのは、眼球の水分量が少なくなることが原因です。毎日の点眼薬(目薬)で、目やにを予防することができるでしょう。目やにの予防として使用するなら、生理食塩水や人間用の人工涙液でも構いません。生理食塩水は自宅で作ることもできますが、塩分の濃度が濃かったり薄かったりすると危険です。必ず市販のものを使うようにしましょう。また、人間用のものには爽快感がある商品も多いですが、そうしたものは絶対に使わないようにしてください。どの商品を購入すべきか悩んだ時は、かかりつけの獣医師に相談するといいですよ◎。ここでもシニア犬が安全に使える商品を一つご紹介させて頂きます。
目薬のさし方も工夫して
点眼を嫌がる子は多いので、できるだけ愛犬が嫌がらないようさし方を工夫してあげてください。無理に押さえつけたり、叱ったりすると目薬に対する恐怖心が大きくなって、余計に嫌がるようになってしまいます。上手な目薬のさし方については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。
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元気なうちから目薬の練習しておくと◎
シニア犬になると、白内障や角膜炎など、さまざまな目の病気にかかりやすくなります。目の病気の治療は点眼薬(目薬)が中心。毎日目薬をさす必要があるため、基本的には飼い主さんが自宅で処置を行うこととなります。目薬を嫌がる犬は多いので、愛犬が元気なうちから目薬に慣らしておくと、目の病気にかかったときに治療がスムーズですよ◎
最後に
愛犬がシニアになると、今まで以上に様々なケアが必要になります。目やにのケアもそのひとつ。無理のない範囲で、愛犬の目元を清潔な状態に保ってあげましょう。もし異変を感じたときは、できるだけ早めに動物病院に連れていくと安心です。