シニア犬(老犬)の食事はどうサポートする?介護の仕方を獣医師が解説

愛犬が年を取ってくると、食事のときに飼い主さんのサポートが必要になることがあります。ここでは具体的にどんなサポートが必要になるのか、注意すべきポイントも踏まえて、シニア犬の介護に詳しい獣医師の丸田先生にお話を伺います。

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シニア犬を介護するときの心構え

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できることは自分で

人間の介護も同じですが、愛犬を介護するときは「できないことだけをサポートする」のが大前提です。愛犬が可愛いからと言ってなんでも手を差し伸べてしまうと、本来自分でできていたこともやがてできなくなってしまいます。

もし愛犬がごはんを食べにくそうにしているのなら、まずは愛犬が食べやすい環境を整えることでサポートしてあげましょう。自力で食べられなくなったときには、飼い主さんが口元まで運んだりして食べさせてあげる必要があります。

無理しないことも大切

一方で、頑張りすぎないというのも大切なポイントです。どんなに食べて欲しくても、無理に食べさせようとするのは絶対にやめましょう。そのことが犬にとってストレスになり、余計に食欲をなくしてしまいます。

また、犬は飼い主さんの顔色をよく見ているので、ごはん中に飼い主さんが落ち込んだり暗い顔をしていると、だんだん食事の時間が苦痛になってしまいます。シニア犬になったら、食欲にムラが出るのはある程度仕方のないこと。今日食べてくれなくても、明日もりもり食べてくれることもあります。愛犬に食事の時間を楽しいと思ってもらえるよう、できるだけ明るい雰囲気作りを心がけましょう。

食事の介護で気をつけるポイント

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誤嚥性肺炎に注意

シニア犬の食事をサポートするときに最も注意したいのが、誤嚥性(ごえんせい)肺炎です。誤嚥性肺炎とは、本来食道を通るはずの食べ物や水、唾液などが誤って気管に入ってしまい、その結果肺で炎症が起きるというもの。免疫力が低下しているシニア犬は重症化しやすく、命に関わるようなケースに陥ることも少なくありません。誤嚥性肺炎を防ぐためには食事の時の姿勢が非常に重要です。正しい体勢を保てるようサポートをして、食事中から食後しばらくは注意して様子を見守ってあげましょう。誤嚥性肺炎についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

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シニア犬は歯周病にかかりやすい

もう一つ注意したいのが歯周病です。シニア犬は唾液の分泌量が低下し、若い頃よりも歯周病にかかるリスクが高まります。悪化すると歯が抜け落ちてしまったり、原因菌が血液に乗って全身を巡るようになると、心臓や肝臓、腎臓などに重篤な病気を招く恐れもあります。

食後は歯磨きシートや歯ブラシを使ってお口の中をキレイにしてあげましょう。歯周病を予防して健康な口内環境を保つことは、食欲維持にも繋がります。歯磨きの仕方はこちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしてくださいね。

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犬が自力でごはんを食べられるときの介護方法

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愛犬が自力でごはんを食べられる場合は、ごはんを口元に運んであげたり流動食を与えたりする必要はありません。食べやすい環境を整え、自力で食べるためのサポートをしてあげましょう。

食事環境の見直し

高齢になって筋力が衰えると、食事の体勢をとることが難しくなります。愛犬がシニアになってきたら、ぜひ食事台を使ってください。脚のついた器で高さを出してあげるのでも構いません。食事をとる時に頭を高い位置でキープできると、食べやすくなるだけでなく誤嚥性肺炎も予防できます。

また、食事場所をフローリングの上に設けている場合は滑り止めシートを敷いてあげましょう。足元が滑らないので体が安定して食べやすくなります。

柔らかく消化の良いフードを選んで

年を取ると噛む力や飲み込む力も衰えてくるので、食べ物を見直すことも大切です。ドライフードをお湯でふやかしたり、ウェットフードに切り替えたり、スープなどをトッピングしてあげるのもおすすめ。

また、シニア犬は消化吸収機能が低下するため、しっかりごはんを食べていても痩せてしまったり、下痢をするようになったりします。愛犬の年齢に応じて、消化のよいフードを選んであげましょう。

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水分量にも気をつけて

シニア犬は喉の渇きに鈍感になったり、水場まで移動するのが億劫になったり、さまざまな理由から水を飲まなくなることが多いです。自分でも気づかないうちに脱水していることもあるので、シニア犬と暮らしている飼い主さんはお水を飲む量もチェックしてあげましょう。犬が一日あたりに飲む水の量は、体重1キロにつき50ml〜60mlが目安です。飲水量の測り方や水分摂取量を増やすための工夫については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

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寝たきりの犬のための食事の介護

食事をとる姿勢を維持できなくなったり、寝たきりになって自力で食事ができなくなってしまった場合は、飼い主さんによる食事の介助が必要となります。

 ごはんを口元まで運んであげる

固形物を食べられるようであれば、スプーンにごはんを載せて愛犬の口元まで運んであげます。嫌がらないようであれば、舌の上にごはんをのせてあげるとよいでしょう。固形物を飲み込むのが難しい場合は、スポイトやシリンジなどで流動食を与える必要がありますが、流動食へ切り替える際は必ずかかりつけの獣医さんに確認してから切り替えるようにしましょう。

食べさせてあげるときは体勢に注意

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自力で食べることができない愛犬にごはんを与えるときは、とにかく体勢に注意してください。愛犬が寝ている状態のままごはんを口の中に入れたり、顎下を持って上向きの状態でごはんを流し込もうとすると、食べ物が気管に入りやすくなるので絶対にやめましょう。

誤嚥性肺炎を防止するためには正しい食事の体勢を保つことが大切です。愛犬の頭のてっぺんが一番上に来るように保つのがポイント。寝たきりの場合は頭の下にクッションなどを入れて、頭の位置を体より高くしてあげると正しい姿勢を取りやすくなります。

また、歩行器や車椅子があると、立ったときと同じ姿勢を維持できます。飼い主さんの食事のサポートが楽になるのでおすすめです。

 

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シニア犬によくある食事トラブル

シニアになると、ごはんの時間にも様々な変化が現れるようになります。そんな愛犬の変化を見て、不安になる飼い主さんも多いでしょう。ここではよくあるシニア犬の食事トラブルと、対処法について解説します。

食べても痩せていくのはなぜ?

しっかりごはんを食べているのに徐々に痩せていくのは、シニア犬にとって珍しいことではありません。年を取ると消化吸収機能が衰えるため、今までと同じ量を食べていてもうまく栄養を吸収できず、少しずつ痩せてしまうのです。

ただ、糖尿病やガン、ホルモン疾患などが隠れているときも、食べているのに痩せていくことがあるので、愛犬の変化に気づいたらまずはかかりつけの獣医さんに診てもらいましょう。動物病院で年齢によるものだと診断された場合は、消化吸収のよいフードに切り替えてみてください。

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ごはんを食べてくれないときの対処法

食べることが大好きだったはずの愛犬がごはんを残すようになったり、昔ほどごはんを欲しがらなくなったりするととても不安になりますよね。ただ、シニア犬は代謝や運動量が落ちるため、昔と同じ量を食べる必要がないのかもしれません。

まずはかかりつけの動物病院に相談した上で、年齢的な問題だと判断された時は、飼い主さんが工夫をしてうまく食欲を刺激してあげましょう。ドライフードのカリカリの食感が食べにくいようならお湯でふやかしたり、ウェットフードに替えてみると食べてくれることがあります。また、食事の途中で食べるのを止めてしまう場合は、一回の食事の量が多いのかもしれないので、一日の食事の量は変えずに、一回あたりの食事の量を減らして回数を増やしてあげるとよいでしょう。他にも工夫できることはたくさんあるので、ぜひ色々試してみてください。詳しくはこちらの記事で解説しています。

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嘔吐するときはフードがあってない?

若い頃は問題なく食べていたフードでも、年齢とともに体に合わなくなって嘔吐してしまうことがあります。フードが原因で嘔吐しているのであれば、年齢にあったフードに切り替えてあげるとよいでしょう。

ただ、シニア犬が嘔吐するときは病気が原因となっていることもあります。また、嘔吐したことがきっかけで誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあるので、少しでも様子がおかしいと感じたら必ず動物病院で診てもらうようにしましょう。詳しくはこちらの記事で解説しています。

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何度もごはんを要求するときはどうすべき?

年を取ってからも食欲旺盛な愛犬の姿を見て、安心する飼い主さんは多いでしょう。しかし、ごはんを食べたばかりなのにすぐにまた要求したり、一日に何度も食べたがったり、突然食欲が旺盛になった時は病気が原因となっている可能性があるので注意が必要です。こちらの記事を参考に、できるだけ早めに動物病院で診てもらうようにしましょう。

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最後に

食事のサポートで悩んだ時は、かかりつけの獣医さんに相談してみましょう。動物病院は病気の治療をする場所と思っている方もいるかもしれませんが、愛犬がシニアになった時は色々と頼れる存在です。獣医さんに相談しながら、愛犬がいつまでもごはんを楽しく食べられる工夫をしてあげてください。