老犬の認知症を予防するために脳のトレーニングを取り入れよう

犬の認知症は、一度発症すると治すことのできない脳の病気です。シニア犬に多く見られる病気なので、病気の発症や進行を防ぐためにも、お家でしっかりケアしてあげましょう。ここではシニア犬の介護に詳しい丸田先生に、お家でできる認知症のケアの仕方についてお話を伺います。

(TOP画像:Instagram / @ichigo0925 )

老犬に多い認知症とは

お散歩中の老犬

(画像:Instagram / @toshi.3mama )

犬の認知症

認知症は、高齢の犬に起こる進行性の病気です。脳神経や自立神経がうまく機能しなくなり、夜鳴きや徘徊などの行動変化が見られるようになります。残念ながら根本的な治療法は確立されていませんが、適切な対応である程度発症を防ぐことができますし、進行を遅らせることも可能です。病状が進行すると一晩中大きな声で鳴き続けたり、家族のことを認識できなくなったりすることもあるので、早めにケアしてあげましょう。

関連記事

獣医療の進歩や飼育方法の変化により、犬の平均寿命は昔と比べてはるかに伸びました。それに伴い、増えてきたのが犬の認知症です。犬の認知症は根本的な治療法が確立されていないため、できるだけ早期に発見して進行を遅らせることが大切です。ここでは犬の認[…]

認知症を予防するには

認知症を防ぐ一番有効な手段は、脳にいい刺激を与えることです。高齢になって寝ている時間が長くなった愛犬を見て、「好きなだけ寝かせてあげたほうがいいのかな?」「そっとしといてあげよう」と思うかもしれませんが、そのような生活を続けているとかえって認知症を発症しやすくなります。年をとったからといって好きなだけ寝かせておくのではなく、その子が大好きな場所に連れて行ってあげたり、ワクワクできることに取り組ませてあげたりして、無理のない範囲でいい刺激を与えてあげましょう。

愛犬の脳にいい刺激を与えて認知症を予防しよう

ひなたぼっこ中の老犬

(画像:Instagram /  @turbo_dad 

認知症対策① お散歩

シニア犬になると、大好きだったはずのお散歩に行きたがらなくなることがあります。そんなときは病気が隠れている可能性があるので、一度かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。その上で、お散歩コースやお散歩時間を見直して、愛犬が楽しく歩ける方法を探してあげてください。そよ風を全身に受け、草木の匂いを嗅ぎ、ふかふかの芝生の上を歩いて五感を刺激することは、脳の活性化に繋がります。高齢になると視覚や聴覚が衰えることも多いですが、嗅覚は最後まで残ると言われているので、無理のない範囲でお外に連れ出して色々な匂いを嗅がせてあげましょう。

関連記事

愛犬の視力が低下すると、家具にぶつかるようになったり、音に敏感になったりすることがあります。そんな愛犬の様子を見て、お散歩を続けるべきかどうか悩まれる飼い主さんも多いでしょう。そこで今回は、愛犬の視力が低下したとき、お散歩を楽しむためにはど[…]

認知用対策② おでかけ

お散歩があまり好きでない子や、自分で歩くことが難しい子は、抱っこやカートでお出かけするのもおすすめです。自分の足で歩けなくても、太陽の光を浴びたり風の匂いを感じたりするだけで気分転換になり、脳にとっていい刺激となります。また、お家の中や近所の散歩道では歩けない子が、大好きな公園や芝生の上に行くと元気に歩けることもあります。その子がストレスを感じることなく楽しめるお出かけの仕方を、ぜひ一緒に探してみてください。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

 認認知症対策③ 日光浴

シニア犬になると、寝ている時間が徐々に長くなります。愛犬の気持ちよさそうな寝顔を見ていると、好きなだけ寝かせてあげたくなるかもしれませんが、ずっと寝かせておくことは認知症の発症リスクを高めてしまうだけでなく、昼夜逆転や夜鳴きの原因にもなります。朝が来たらきちんと日の当たる場所へ移動して、日光浴をさせてあげましょう。また、日光浴をするとセロトニンという、通称「幸せホルモン」が分泌されることにより、精神的にもリラックスできることがわかっています。日光浴は体力のない子も無理なく楽しめるものなので、ぜひ取り入れてあげてください。日光浴の注意点などについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事

犬はみんな日向ぼっこが大好き♡暖かい日差しの中で愛犬が幸せそうにくつろぐ様子は、見ているこっちも幸せになれますよね。実は、適度な日光浴には愛犬の健康を維持する効果もあるそうなんです! 日光浴はメリットたくさん!ビタミンDの生成も 普段何[…]

認知症対策④ 知育トイの活用

食べるのが大好きな子なら、隠したおやつを探してもらうノーズワークマットや知育トイを活用するのもおすすめです。嗅覚を働かせることで脳にもいい刺激になりますし、自然と体を動かすことができるので、シニア犬にとってはいい運動にもなるでしょう。簡単に探せるものから難易度が高いものまでさまざまな種類の知育トイがあるので、まずは簡単なレベルから始めてみてください。少しずつ難易度をあげていくと、愛犬も楽しみながら脳のトレーニングができますよ◎

認知症対策⑤ 遊びやトレーニング

お外が苦手で、外出がストレスになってしまうような子の場合は、無理にお外に連れ出す必要はありません。お部屋の中で遊んだり、お家の中をお散歩させてあげたりして、心と体を動かしてあげましょう。年をとるとおもちゃへの関心が薄れてしまうことが多いので、飼い主さんの方から上手に誘って、遊びゴコロを刺激してあげてください。おやつを使ってその気にさせるのもおすすめです。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

また、「まて」や「おすわり」などのトレーニングをすることも脳にとっていい刺激となります。飼い主さんと一緒にトレーニングをすることが好きな子なら、新しい芸を覚えるのもいいでしょう。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿 

認知症対策⑥ 筋トレもおすすめ

シニア犬は徐々に筋力が衰えていきます。ある程度は仕方のないことですが、筋力が落ちるとますます動きたがらなくなり、さらに筋肉が衰えるという悪循環に陥ってしまいます。痩せすぎや寝たきりになるのを防ぐためにも、無理のない範囲で筋トレを取り入れて、できるだけ筋力を維持してあげましょう。筋力トレーニングは脳にとってもいい刺激になります。こちらの記事ではお家でできる簡単なトレーニングをいくつかご紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。その子が楽しく取り組めることが大切なので、くれぐれも無理はせず、楽しい雰囲気を作ってあげましょう。

関連記事

シニア犬は運動量が低下し、それに伴い筋肉量も徐々に落ちていきます。高齢になって筋肉が落ちるのはある程度仕方のないことですが、できるだけ筋力をつけてあげたいと考える方も多いでしょう。そこで今回は、犬の介護やリハビリに詳しい獣医師の丸田先生に、[…]

認知症対策⑦ マッサージを取り入れる

ずっと寝かせたままなのがよくないとわかっていても、気持ちよさそうに寝ている愛犬を無理矢理起こすのは気が引けますよね。そんなときは寝起きにマッサージを取り入れてみてください。シニア犬になると、寝ている時間が長くなって血行が悪くなったり、関節がこわばりやすくなったりします。寝起きにマッサージを取り入れることで、優しく起こしてあげることができますし、愛犬の体にかかる負担を軽減することもできるでしょう。

関連記事

シニア犬は寝ている時間が長くなり、体を動かす機会も減るため血行が悪くなりがちです。飼い主さんが優しくマッサージしてあげることで、血流を促すだけでなく愛犬のストレスを緩和してあげることもできます◎ここではシニア犬のマッサージのやり方について解[…]

認知症予防におすすめなサプリメント

食事中の老犬

(画像:Instagram / @fengmi_kh

魚の油などに多く含まれるオメガ3脂肪酸には、認知症を予防し、健康な脳を維持する効果があると言われています。ただし、オメガ3脂肪酸は熱に非常に弱く、常温でも酸化しやすいため、サプリメントで取り入れるのがおすすめです。オメガ3脂肪酸のサプリメントは、動物病院でも認知症の発症や進行を防ぐ目的で処方されることがあります。ちなみに、このオメガ3脂肪酸は「αリノレン酸」「EPA」「DHA」という3つの脂肪酸の総称で、脳にいい影響を与えると言われているのは主にEPAとDHAになります。ご自身でサプリメントを選ぶときは、EPA/DHAの含有量が多いものを選ぶようにしましょう。悩んだときはかかりつけの獣医師にも相談してみてください。こちらの記事でもオメガ3脂肪酸のサプリメントの選び方や、おすすめのサプリメントについて詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事

愛犬が高齢になったら特に、栄養バランスには気をつけてあげたいですよね。必要な栄養全てをフードから摂取することができたらいいのですが、中には日々の食事でまかなうことが難しい栄養素もあります。例えば、炎症抑制や認知症予防などの効果がある「オメガ[…]

野原の老犬

みんなが実践している脳トレの工夫・アイデア

ここでは、実際に飼い主さんたちが実践されている脳トレのアイデアをご紹介します。愛犬の体調や性格を考慮しながら、一緒にワクワクできる楽しい時間を過ごしてあげましょう。

脳にいい刺激を与えるアイデア 〜お外編〜

■今までと同じ目線でお散歩

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

外の空気に触れ、色々な匂いをかぐだけでも脳にとっていい刺激になりますが、こちらの飼い主さんは今までと同じ目線で景色を楽しめるよう工夫されています。お散歩が好きな子は介助用ハーネスを活用したり、車椅子や歩行器を取り入れるのもおすすめですよ◎

■楽しいシャボン玉ホリデー

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

ちょっとした工夫で、お庭やいつもの公園が刺激的な場所に早変わり♪いつもと少し違うだけでも、シニア犬にとっては大きな刺激になります。飼い主さんも一緒に楽しみながら、かけがえのない時間を共有できるといいですね。

■ランしないドッグラン

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

他の犬が平気な子なら、ドッグランに連れて行くのもおすすめです。他の子の匂いを嗅いだり挨拶したりするだけでも、シニア犬にとってはいい刺激になるでしょう。若い頃は他の犬が苦手でも、高齢になると平気になることがあるので、よかったら無理のない範囲でチャレンジしてみてくださいね◎

■カヤックでのんびり

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

若い頃から飼い主さんと一緒に取り組んでいるアクティビティがあるなら、ぜひ続けてあげてください。カヤックに乗ったりアジリティに取り組んだり、一緒に楽しい時間を過ごすことは体にも心にもいい影響があるでしょう。ただし愛犬の様子はしっかり見守り、くれぐれも無理はしないように気をつけて。

■雪国ならではのアイデア

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

行きは歩きたがらない子でも、帰りはサクサク歩いてくれることがあります。お散歩に行きたがらない時は、行きだけ抱っこやカートで進んで、折り返し地点でおろしてあげると歩いてくれるかもしれません。カートを使えない豪雪地帯では、こんな風にカートの代わりにソリを使うのもいいですね♪

脳にいい刺激を与えるアイデア 〜おうち編〜

■おやつはどっちだゲーム

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

ノーズワークマットや知育トイで遊ばせてあげるのもおすすめですが、飼い主さんの時間がある時はぜひこうしたゲームも取り入れてみてください。大好きな飼い主さんと一緒に遊ぶことができれば、愛犬もより楽しんでくれるはずです。

■ブラッシングも楽しい時間に

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

犬は飼い主さんの感情を読み取るのが上手な生き物です。飼い主さん自身が楽しんでいると、ポジティブな気持ちが愛犬にも伝わって、一緒により楽しい時間を過ごすことができるでしょう。いつものブラッシングも、ちょっとした遊び心を取り入れるだけでこんなに楽しい時間になるんですね♪

■新しい技を覚えた!

 

この投稿をInstagramで見る

 

Qooppy(@qooppy_dog)がシェアした投稿

ベルをチーンと鳴らすとごはんが出てくる、そんな可愛い技をシニアになってから習得した子もいます。新しい技を覚えることは、脳にとっていい刺激になりますし、愛犬の自信にも繋がりそうですね。

最後に

シニア犬によく見られる認知症は、飼い主さんの工夫である程度発症を防いだり、進行を遅らせたりすることができます。動物病院で適切な治療を受けさせてあげることとあわせて、ぜひお家でも色々ないい刺激を与えて、愛犬の脳を活性化させてあげてください。