老犬のお散歩、どうすればいい?飼い主さまたちの疑問にお答えします!

「高齢になった愛犬とのお散歩で悩んでいることはありますか?」以前、Qooppy読者のみなさんにアンケートを実施した際、お散歩に関する疑問が数多く寄せられました。若い頃には見せなかった行動をするようになったり、持病と付き合いながらお散歩したりするのは、飼い主さまも不安になりますよね。
そこで今回、Qooppyの記事を監修してくださっている二名の獣医師に、飼い主さまたちのリアルなお悩みを相談してみました!とても親身に回答してくださっているので、皆様ぜひご覧ください♡

(TOP画像:Instagram/ @ortensia10 )

今回質問に答えてくれた獣医師

シニア犬の介護とリハビリに詳しい丸田獣医師

日本大学卒。動物病院勤務後、「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。
ペット栄養管理士、ホリスティックケア・カウンセラー、メンタルケアカウンセラーなどの資格を生かし、病院での診療の他にシニアケアや介護、飼い主の心のケアにより力を入れた往診診療を行う。

▷ 今まで監修した記事一覧はこちら

犬の行動学および行動治療に詳しい菊池獣医師

日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。日本獣医動物行動研究会所属。獣医行動診療科認定医。
現在は東京大学の動物医療センターと、往診専門の「ペット問題行動クリニックBLISS」にて、犬猫の問題行動治療に従事。ペットと飼い主さま双方の気持ちに寄り添う行動治療をモットーに日々取り組んでおります。

▷ 今まで監修した記事一覧はこちら

老犬のお散歩時間に関するギモン

葉っぱのお耳と老犬

(画像:Instagram/ @mafinplum )

適切なお散歩時間を知りたいです。どのくらいお散歩すればいいのでしょうか?

【菊池先生】

適切なお散歩時間はその子その子によって大きく異なります。時間というよりも愛犬の様子をしっかり見て、その子にとって最適なお散歩時間を見つけてあげてください。例えば、途中までウキウキ歩いていたのに急に歩かなくなったときは疲れてしまった可能性が高いので、早めに切り上げたり帰り道は抱っこしてあげたりするとよいでしょう。また、お散歩から帰った後に疲れ切って爆睡しているような時も、お散歩時間を少し短くしてあげてください。

愛犬がお散歩大好きですが、放っておくとずっと歩きます。体の負担になりそうなのですが、愛犬の好きにさせて大丈夫ですか?

【丸田先生】

お散歩が好きなのはとてもいいことですね!しっかりお散歩ができていれば、年齢とともに衰えやすい筋力を維持できますし、ストレス発散にもなります。夜もぐっすり眠れるでしょう。
ただし、お散歩から帰ったあとにぐったり疲れ切って眠ってしまったり、疲れから食欲が落ちてしまったり、歩き方に違和感が見られるようなら無理は禁物です。また、どんなに楽しそうにしても、呼吸が早くなるなどの症状が現れたら必ずストップしてください。
シニア犬は長時間のお散歩で疲れてしまうことが多いです。一回あたりのお散歩時間を短くして、お散歩回数を増やしてあげると、無理なく運動量を確保することができます。また、疲れにくいようなお散歩コースを探してあげるのもおすすめですよ◎
帰りたくなった時にすぐ帰れるように、お家の近くをぐるぐる回るコースもいいですし、休憩がこまめにとれる公園まで抱っこで連れて行ってあげて、こまめに休憩を挟みながら歩かせてあげるのもいいと思います。

【菊池先生】

元気な子であれば好きなだけお散歩させてあげればいいと思います。ただ、認知症がある子は体が疲れていても限界を知らずに歩こうとすることがあります。若い頃に満足していたお散歩時間を目安にして、それと同じくらいか少し短いくらいで考えるといいかもしれません。

お散歩中の愛犬の行動に関するギモン

落ち葉と芝生と老犬

(画像:Instagram/ @lala___robin

他の犬がトイレした後をクンクンさせないほうがいいですか?感染症が気になります。

【菊池先生】

犬にとってトイレのにおいは名刺代わりのようなもの。においを嗅ぐことで他の犬に関する様々な情報を得ています。脳にもいい刺激になるので、ぜひ愛犬の気が済むまで嗅がせてあげてください。
また、高齢になると視覚や聴覚が衰えてくることが多いですが、嗅覚は他の感覚機能よりも長く働くと言われています。目が見えにくくなっても耳が聞こえにくくなっても、昔のようにたくさん歩けなくなっても、クンクンしながら歩くお散歩はシニア犬にとってとても充実した時間になるでしょう。

【丸田先生】

犬は、お散歩中に他の犬のトイレのにおいを嗅ぐことで様々な情報を収集します。また、においを嗅ぐことがストレス発散にもなると言われているので、ぜひ好きなように嗅がせてあげてください。
ただ、レプトスピラ症など尿から感染する病気があることも事実です。体力的に問題なさそうならしっかりワクチン接種をしてあげてください。また、他の犬の尿をなめさせない、お散歩から帰ったら全身をきれいに拭くなどして、しっかり予防してあげましょう。

関連記事

愛犬をウイルスや病原体から守るためのワクチン接種。しかし年齢を重ねるにつれて外出する機会が減ってくると、「果たしていつまで接種すべきなのだろう。」と疑問に思う飼い主さんもいらっしゃると思います。徐々に体力が衰えてくると、副作用についても気に[…]

徘徊のようにぐるぐる同じ場所を回っているとき、犬は楽しいのでしょうか?

【菊池先生】

楽しいかどうかを知ることは難しいですが、徘徊していた方が落ち着くのなら、好きなだけ徘徊させてあげればいいと思います。ただ、認知症の子は体が疲れていても徘徊し続けることがあるので、放っておくと止まらないような場合は、様子を見ながらどこかで飼い主さんがストップをかけてあげてください。

3歩歩くとクルッと一周するのを繰り返します。何か対策はあるのでしょうか?

【菊池先生】

情報量が少なすぎて、ちょっと答えるのが難しいのですね…。
その場から離れることに不安があるのかもしれませんし、その場所を動きたくない理由があるのかもしれません。また、そうした行動をすることで、飼い主さんが抱っこをしたり優しく声をかけてあげているなら、それがご褒美になっていてそうした行動を繰り返しているのかもしれません。
認知症の可能性も否定はできませんが、この情報だけでは判断ができないです。

老犬がお散歩を嫌がる・歩かない時はどうすべき?

嫌がる老犬

(画像:Instagram/ @fengmi_kh )

健康面では問題なさそうなのですが歩きたがりません。どうしたらいいですか?

【菊池先生】

そもそもお散歩が好きではないのなら、無理矢理連れて行ってもストレスになるだけなので、無理に連れて行く必要はありません。ただ、愛犬が歩かない時に飼い主さんがどういう対応をしているのかは、一度振り返ってみてください。例えば、愛犬が歩かない時に抱っこをしたり、おやつをあげたりしていたら、それがご褒美になっている可能性はあります。「抱っこして欲しいから、おやつが欲しいから、歩かない」という現象が起きているなら、そうしたご褒美を一旦ストップしてみましょう。
その上で、その子が喜んで歩いてくれる場所を探したり、歩きやすいお散歩コースに変えたりして様子を見ます。ちなみに行きよりも帰りの方が歩いてくれる子は多いので、楽しく歩けるようなら抱っこで連れ出し、帰り道だけ歩かせてあげるのもおすすめです。

心臓病や関節疾患を抱えている子がお散歩に行きたがらない場合、連れて行かないほうがいいですか?

【丸田先生】

体調が悪くてお散歩を嫌がっている可能性もあるので、無理に連れていくことはお勧めできませんが、外の世界を感じるということはとても大切なことです。お家の近くでは歩かなくても、芝生の上やお気に入りの公園では歩けることもあるので、無理なく歩けるところがあるなら、そこまで抱っこやカートなどで連れて行ってあげてください。ただし、ハァハァと呼吸をする、足を引きずるなど歩行に違和感が見られる場合には、無理に歩かせるのはやめておきましょう。
歩けなくても、抱っこやカートに乗せてお外に出かければ、草木や土の匂いを嗅いだり、いろんな音を聞いたり、そよ風を感じたりすることができます。脳にとっていい刺激になりますし、ストレス解消にもなるので、ぜひ愛犬の様子を見ながら無理のない範囲でお外に連れ出してあげましょう。

突然歩くのを嫌がって動かなくなります。足が痛いのか、その方向に行きたくないのか、よくわかりません。

【丸田先生】

まずはお散歩コースを変えて様子を見てみましょう。もしかしたらその先に歩きにくい地面があるのかもしれませんし、怖い思いをしたり嫌な思いをした何かがあるのかもしれません。お散歩コースを変えてみても歩くのを嫌がるのなら、足が痛い可能性が高いと言えます。

【菊池先生】

歩き方に違和感があるなら、かかりつけの動物病院で診てもらってください。ただ、行きたくない方向以外は元気に歩けるなら、気持ち的な問題と考えてよいでしょう。その子が喜んで歩ける場所を探してあげてください。

うちの子は車椅子を使っています。家の中では歩くのですが、外では歩いてくれません。何かいい方法はありますか?

【丸田先生】

外には様々な刺激があるので、歩くことに集中できなかったり怖かったりするのかもしれません。まずは家の前を数歩歩くところから慣らしてみましょう。おやつを使って誘導したり、たくさん褒めてあげたりするのもおすすめです。愛犬の好きだった場所があるなら、そこまで移動してから歩かせてあげるのもいいと思います。
もともとお散歩が好きだった子なら、徐々に車椅子に慣れて、いずれ楽しそうに歩いてくれるようになりますよ。

介助ハーネスをつけてあげたいけど、自分で歩きたいのかつけると止まってしまいます。どうしたらいいでしょうか?

【丸田先生】

初めて介助ハーネスを付けられると、異物感があったり体の重心が変わったりして、それに戸惑ってしまう子も多いです。少しずつ装着に慣れさせてあげましょう。歩かなくても、最初は装着して少し体を持ち上げるだけでもいいです。

お散歩コースに関するギモン

コキアと老犬

(画像:Instagram/ @ichigo0925 )

芝生や砂浜のお散歩は関節にいいと聞いたのですが、アスファルトのお散歩は関節に悪いのでしょうか?

【丸田先生】

アスファルトのお散歩が関節に悪いということはありません。ただ、「トレーニング」という意味では、平坦なアスファルトを歩くだけでは不十分です。芝生やジャリなど、足裏の刺激が変わるようなところを歩いたり、アスファルトでも無理のない坂道を上り下りするといいトレーニングになります。
ただし階段の上り下りは関節に負担がかかることがあるので、避けた方が無難です。

脳に刺激を与えるために新しいルートを進みたいです。でも逆にストレスにならないか心配です。

【丸田先生】

いつものお散歩コースに少しだけ変化をつけてあげると、マンネリ化しやすいお散歩を楽しむことができるのでおすすめです。ただし、変化をつけることで愛犬が怖がってしまったり、いつも以上に疲れてしまったりするのなら、無理にお散歩コースは変えない方がいいでしょう。
いつものお散歩コースでも時間帯をずらして歩いたり、時には途中で帰路についたりするだけでも、その子にとってはいい刺激になると思います。

【菊池先生】

知らないエリアを歩くのが大好きな子であれば、新しいルートはとてもいい刺激になるでしょう。しかし、知らない場所だと緊張してしまって、ストレスを感じる子もいます。新しいルートを楽しんで行こうとするかどうか、よく見てあげてください。楽しく進めるなら、新しいルートを歩かせてあげるといいと思います。

持病がある子のお散歩に関するギモン

バギーに乗った老犬

(画像:Instagram/ @aim_mai

うちの子は持病があって、獣医さんからお散歩は控えるよう言われています。でもお散歩が大好きです。何かしてあげられることはないでしょうか?

【丸田先生】

お散歩を控えなければいけない理由によると思います。もし、椎間板ヘルニアのように整形外科的なことが原因なのであれば、やはり安静にしていなくてはなりません。とはいえおうちの中にずっといるのがストレスになってしまうようなら、かかりつけの獣医さんにも相談しながら、抱っこやカートにのせてお外の匂いを嗅がせてあげるとよいでしょう。
また、心臓病のように内科的なことが原因な場合は、疲れない程度に少しだけ歩かせてあげても大丈夫です。興奮させないように気をつけて、体調に変化がないかよくよく注意しながらお散歩させてあげてください。
なお、お散歩の代わりに知育トイを使ったおやつ探しゲームなどを取り入れてあげると、お家の中でも楽しくリフレッシュすることができます◎

【菊池先生】

安静な状態を維持しつつ、その子が好きだったことはできるだけ続けてあげるといいでしょう。かかりつけの獣医さんの許可が降りたら、お外にはできるだけ連れ出してあげてください。お散歩はできなくても、抱っこやカートで公園に行って匂いを嗅がせてあげたり、他の犬や飼い主さん以外の人が好きな子なら無理のない範囲で挨拶させてあげたりするのも、いい気分転換になるはずです。ベンチや芝生に座って、飼い主さんと一緒にのんびりした時間を過ごせるだけでも、十分満足できると思いますよ。

気管虚脱があり、お散歩中に咳き込むと倒れてしまいます。どうしたらいいでしょうか?

【丸田先生】

他の犬を見かけて興奮するなどの原因があるのであれば、他の犬に会わない時間帯を選んでお散歩に行ったり、他の犬と出会わないコースを探したりして工夫してあげるとよいでしょう。
ただ、お散歩のたびに毎回咳き込んで倒れてしまうなら、それ自体がリスクになってしまうのでお散歩をやめなくてはなりません。

抗てんかん薬を飲ませているせいか、時々何かに追われるように小走りになります。

【菊池先生】

抗てんかん薬の副作用に幻覚作用があるので、薬の副作用である可能性は否定できません。しかし、幻覚はてんかんの症状のひとつでもあり、抗てんかん薬が効いていないということも考えられます。一度かかりつけの先生に相談してみた方がいいでしょう。その場合、そのときの行動を動画で撮っておくと診断の助けになります。

うちの子は大型犬なのですが、何かあっても私一人では抱き抱えられないので、一人でお散歩に行くことが不安です。何かいい方法はありますか?

【丸田先生】

何かあった時に助けを呼べる友達を作っておくことはとても大切です。大型犬が乗れるペットタクシーがないかも事前に調べておきましょう。また、かかりつけの動物病院以外に、いつものお散歩コースの近くに動物病院がないかどうかもチェックしておいてください。一人でお散歩をするときは家の周りを回るようなコースを選び、疲れたらすぐにおうちに帰れるようにしておくといいと思います。

【菊池先生】

お散歩の時は必ずスマホとお財布、それから風呂敷を一枚お散歩バッグに入れておきましょう。風呂敷はいざというときに広げれば、即席の担架になります。何かあったときのために、助け合える犬友達と事前に連絡先を交換しておくのも大切です。
すぐに動物病院へ連れて行けるよう、お財布の中にかかりつけの動物病院の診察券を入れておくといいですよ。

最後に

お花と老犬

(画像:Instagram/ @mizu321 )

愛犬が高齢になると、お散歩ひとつとっても色々なことが気になりますよね。かかりつけの獣医さんや信頼できる犬友達としっかり連携しながら、愛犬が楽しく安全にお散歩できるよう、色々な工夫をしてあげてください。