シニア犬の健康診断、どのくらいの頻度でどこまでやるべき?

シニア犬は体が老化し、免疫力も低下することから、さまざまな病気にかかりやすくなります。愛犬にかかる負担を最小限に抑えるためにも、早期に発見して適切な治療を受けさせてあげたいですよね。ここでは、早期発見のために重要な健康診断について、獣医師の吉田先生に詳しく伺います。

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健康診断で行われる検査について

キョトンとした老犬

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問診

問診の際、「こんなこと聞いてもいいのかな?」と思わず、愛犬の気になる様子やちょっとした変化などがあれば、些細なことでもしっかり獣医師に伝えるようにしましょう。
症状が現れているなら、疑わしいポイントを重点的にチェックできます。また、具合が悪くても動物病院で元気に振る舞う子は多いので、自宅での様子をスマホで撮影しておき、その動画を見てもらうのもおすすめです。
特にシニア犬はさまざまな病気にかかりやすく、早期発見のためには飼い主さんからの情報が非常に重要です。病気の初期症状の中には老化のサインと間違えやすいものもあるので、「おそらく年のせいだろう」と自己完結せず、きちんと獣医師に相談するようにしてください。
例えば、高齢になるとよく見られる睡眠時間の変化は、認知症の初期症状でもあります。食欲や体重の変化もシニアの子にはよく見られますが、糖尿病や腫瘍などが隠れていることもあるので注意が必要です。

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〜問診で伝えておくとよい情報〜

  • 食欲の有無、食の好みの変化
  • 運動量の変化(お散歩で歩きたがらない、フラつくことがある等)
  • お水を飲む量
  • 嘔吐の有無
  • うんちの状態(回数や色、柔らかさなど)
  • 咳の有無(呼吸音に違和感がある場合はそれも伝えてください。)
  • 皮膚の異変
  • 睡眠時間の変化や眠りの質の変化
  • 性格の変化(呼んでも反応しない、怒りっぽくなった等)
  • 口臭の有無
  • 取り入れたい食事やサプリがあれば合わせて相談してください。

触診や聴診などの身体検査

触診では犬の体に触りながら、皮膚やリンパ節、口内、眼球などに異変がないか確認します。膝蓋骨脱臼の有無も触診でわかります。ただし、短時間の診察では小さな皮膚の異変などに気づけない場合もあるので、飼い主さんも日頃のスキンシップを通じて愛犬の状態をきちんとチェックしておきましょう。
聴診では聴診器を使って、主に心音や呼吸音などを確認します。心音や呼吸音に異常がないか、確認するのが目的です。特に高齢の小型犬によく見られる心臓病などは、聴診で異常を発見できることが多いです。犬の負担も少ないので、こまめに診てもらうとよいでしょう。もし、愛犬がよく咳をするようになったり、呼吸音に違和感を覚えたりしたときは、迷わず動物病院へ連れて行ってあげてください。

血液検査

一概に血液検査といっても、ホルモンや心臓の数値、フィラリアの有無など、検査項目は多岐に渡ります。そのため、どの項目を調べるかによって検査にかかる費用や結果が出るまでの時間は異なります。一般的な健康診断の血液検査で全ての数値を調べられるわけではないので、気になる方はどんな項目を調べるのか、事前に聞いておくとよいでしょう。もし気になる症状があれば、獣医師と相談の上で検査項目を追加することもできます。
ちなみに、血液検査で異常が発見されても、それだけで病気を特定できるとは限りません。血液検査である程度病気を絞り込むことはできますが、病気を特定するためには追加の検査が必要になるケースも多いです。
なお、血液検査で異常を発見できない病気もあるので、健康診断では後述の画像検査もセットにしておくと安心です。

尿検査

尿検査では、シニア犬がかかりやすい腎臓病や膀胱炎などの病気の有無を確認することができます。血液検査でも腎臓の異常を見つけることはできますが、尿検査の方が早く異常を見つけられることもあるので、健康診断の際はぜひ尿検査もしておいてください。
自宅で採取した尿を持っていくだけなので、愛犬に負担をかけることなく検査できます。ただし、自宅でうまく採取できなかったり再検査が必要になったりした場合は、膀胱に針を刺して直接尿を採取することもあります。(無麻酔で採取可能)

〜自宅での尿の取り方〜

トイレ周りを綺麗に掃除して、トイレシーツを裏返しに置きます。溜まった尿を未使用の「お弁当のしょうゆ入れ(100均で売っています◎)」などで採取するか、スポイトやシリンジなどで取って清潔な容器に入れ、動物病院へ持っていきましょう。できれば検査当日に採取した朝一番の尿を、2〜3時間以内に持っていくのが好ましいです。

画像検査

(画像:Instagram / @yu3_moha

画像検査にも、レントゲン・エコー・CT・MRIなど色々な種類があります。ここでは、健康診断において、それぞれの画像検査がどのような役割を果たすのかを簡単に説明します。

【レントゲン検査】

所要時間:2〜3分程度

健康診断では、胸部と腹部の二箇所を撮影することが多いです。胸部レントゲンでは、肺や気管支の状態をチェックすることができます。腹部にある内臓はエコーの方が鮮明に映りますが、結石や内臓肥大などの大きすぎる異常はレントゲンの方が見つけやすいこともあるので、レントゲンとエコー両方できると理想です。
なお、レントゲンは骨を白く、空気を黒く映し出すため、頭蓋骨に囲われている脳の状態は確認しづらいとされています。

【エコー検査】

所要時間:約20分

心臓や腹部の内臓(肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、子宮など)の状態を確認できるのがエコー検査です。特に、心臓は動いている様子をリアルタイムでチェックできるので、心臓の状態を調べるのにはエコー検査が適しています。
ただし、肺や気管支、骨に囲まれた箇所はうまく映し出せません。頭蓋骨に囲まれている脳の状態も正確に確認することはできません。

【CT】

所要時間: 1日(撮影時間 約5分)

レントゲンやエコーは広域な中から異常を発見するために使われますが、CT やMRIは異常が疑われる箇所の詳細な状態を把握するために使用されます。CTでは肺の状態や腫瘍に入り込む血管の様子などを正確に確認できます。撮影にかかる時間は5分くらいですが、正確に検査するために鎮静や全身麻酔が必要となるので、実際は1日がかりになることが多いです。

【MRI】

所要時間:1日~(撮影時間 数十分)

MRI検査は非常に精度が高く、骨に囲まれた臓器の状態も確認することができるので、脳の検査や脊髄の検査に使われることが多いです。しかし、全身麻酔が必須となるため、特に麻酔のリスクが高くなるシニア犬に実施する場合は、慎重になる必要があります。また、撮影にかかる時間が長く、体全体を確認するというよりも、病気が疑われる箇所を細かく調べるためのものなので、健康診断には不向きです。

シニア犬の健康診断、どこまで検査すればいいの?

カメラマンな老犬

(画像:Instagram/ @happy.dachs )

やった方がいい検査

愛犬の健康診断では、問診・聴診・触診とあわせて、血液検査をされる方が多いと思います。ただし、この検査内容だけでは、初期の腫瘍や尿路結石などのように発見しづらい病気も多いです。特に脾臓の腫瘍は病状が進行していても異常が現れにくいため、「レントゲン+エコー」の画像検査までセットにしておくと安心です。画像検査までしておくと、気づける病気の幅が広がります。尿検査もぜひ、してもらってください。

検査の頻度はどのくらい?

愛犬が高齢になったら、これといった異変がなくても、半年に一度は健康診断を受けるようにしましょう。持病がある子は、定期的な通院で体の状態をチェックしてもらっていると思いますが、治療中の病気以外にも病気が見つかる可能性があるので、やはり定期的に全身の状態はチェックした方がいいです。タイミングや頻度については、かかりつけの獣医さんにも相談しながら決めるとよいでしょう。

最後に

嬉しそうな老犬

(画像:Instagram/ @_daiiizu_

シニア犬になると様々な病気にかかりやすくなります。愛犬が元気そうにしていても病気が隠れている可能性もあるので、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。早期に病気を発見できれば、治療の幅も広がりますよ◎