愛犬の見た目と行動に現れる老化のサイン。どう対処すべき?

犬もシニア期を迎えると、様々な変化が現れるようになります。しかし、これらの変化を老化によるものだと思い込んでしまうと、愛犬の体調不良を見過ごしてしまうかもしれません。ここでは、愛犬の見た目や行動に現れる老化や病気のサインについて取り上げ、適切な対処法を紹介します。

愛犬の老化と向き合うために

愛犬が年を取っていく様子は見ていて切ないもの。でも、愛犬に対する愛おしさは年々増していく、という方も多いでしょう。犬の老化について飼い主さんが正しく理解をしておけば、いざというときに愛犬を守る助けになります。まずは犬が年を取ったときに現れる変化から見ていきましょう。

犬は何歳くらいから老化する?

一般的に犬は7~10歳ごろにシニア期を迎え、見た目や行動などに老化の兆しが現れ始めます。シニア期が進んでハイシニアになると、さらに様々な変化が起こるでしょう。ただし、何歳からシニア犬、ハイシニア犬になるという明確な定義があるわけではありません。犬種やサイズ(小型・中型・大型)、また個体差によっても老化の現れ方は異なります。そのため愛犬が7歳くらいになってきたら日々の生活の様子に気を配り、変化が現れたときすぐに気付けるようにしておくことが大切です。

老化のサインにはどんなものがある?

老犬になるとどのような変化が出てくるのでしょうか?ここでは、見た目や行動にどのような変化が現れるのか、老化のサインについて具体的に取り上げます。

  • 顔まわりや手足の先などの被毛に白髪(白い毛)が増え始め、体全体の毛色が薄くなる。
  • 体全体の毛量が減り、毛艶やコシがなくなる。
  • 皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみや色素沈着など引き起こしやすくなる。イボなどのできものができることもある。
  • 口臭がきつくなる。
  • 目やにが増え、眼の奥が白く濁る。
  • 耳が聞こえにくくなる。
  • 眠っている時間が増える。
  • 散歩に行きたがらない。散歩に出かけても途中で歩くのをやめたり、すぐに帰ろうとする。
  • 排泄の粗相が増える。
  • 壁や家具などにぶつかる。ふらつく。
  • 息切れしやすくなる。
  • 食の好みや食欲に変化が現れる。

老犬に現れる変化についても個体差があるため、ここでは取り上げていない変化が現れることもあります。そのため愛犬がシニア期に入り、以前とは異なる様子が見られたら、老化のサインかもしれないという意識を持ち、適切なケアを行ってあげましょう。

これって老化のサイン?それとも病気?

次に、老化のサインとも病気の症状とも取れる変化について解説していきます。以下のような変化を、老化によるものか病気によるものか、飼い主さんが自分で見分けるのは難しいため、少しでも気になる変化が現れたら、まずは動物病院を受診するようにしましょう。

食欲・体重の変化

シニア期にさしかかったばかりの7〜10歳頃は、運動量が徐々に減っていく一方で、まだまだ食欲旺盛な時期。そのため、この時期は若い頃よりも太りやすくなるケースが多いです。そこからハイシニアになっていくと少しずつ食欲が落ちていき、胃腸の消化吸収機能も低下するため、体重は減っていきます。このように、年齢とともに食欲や体重が変化するのは自然なことです。

しかし、しっかり食事をとっているにも関わらず体重が減っていくときは、何かしらの病気が隠れている可能性が考えられます。例えば、糖尿病やクッシング症候群、腫瘍などの病気が隠れていると、うまく体にエネルギーを取り込むことができないため、食べても徐々に痩せていきます。

体力の衰え

犬も加齢に伴い、運動機能が低下していきます。筋肉量が減るため、段差を登れなくなったり、歩くスピードが遅くなったりすることもあるでしょう。しかし、体力の衰えは必ずしも老化が原因とは言い切れません。体のどこかに腫瘍ができていると、元気がなくなってふらついたり、咳や息切れなどの症状が見られることもあります。また、ぐったりしていたり、お水をいつもよりたくさん飲んでおしっこをたくさんするようになった場合は、腎臓病や子宮蓄膿症などの病気が隠れていることも考えられます。他にも、散歩に行きたがらない、行ってもすぐに帰りたがる場合は関節に痛みが出ている可能性があります。

毛艶がなくなる

犬は年を取ると、人間と同じように新陳代謝が悪くなります。そのため、皮膚の水分量や油分量が減り、徐々に毛艶がなくなっていきます。しかし、腎臓病の場合も被毛の艶がなくなり、パサつくようになりますし、クッシング症候群を発症したときも脱毛や毛艶を失ってしまうなどの症状が現れます。

口臭がきつくなる

老犬になると代謝が落ちて飲水量が低下するため、口内が乾燥して口臭がきつくなりがちです。ただし、腐敗臭のようなきつい臭いがする場合は歯周病の可能性が高く、アンモニアのような臭いがするときは腎臓などの内臓疾患の恐れがあります。特に歯周病は多くの高齢犬で見られる疾患で、悪化すると他の病気を併発させることもあるので注意が必要です。

目やにが増える

愛犬が年を取るとともに、目やにの量が増えたと感じることもあるでしょう。老犬の場合、代謝が衰えることによって目やにが増えることがありますが、目やにの色が黒や茶色、また白やグレーであれば心配いりません。しかし、黄色や黄緑色の目やにが現れたり、白目の部分が赤く炎症して涙が出ている場合には、結膜炎の可能性があります。また目やにや涙の量が増え、瞬きを頻繁にしている場合は角膜炎の恐れがあります。

愛犬に変化が現れたら

まずは動物病院へ

上記のような変化が見られたときは、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。もしも病気が隠れていた場合、早期発見・早期治療によって治療の幅が広がり、回復させられる確率も高くなるからです。発見が遅れると、その分愛犬の体に負担をかけますし、症状が重くなってしまいます。

「ただ被毛がパサついてきただけで動物病院に行ってもいいのかな…。」と不安に思う方もいるかもしれませんが、そこは遠慮なく足を運んで大丈夫です。動物病院では定期的に健康診断を行なっており、特にシニア犬になると症状がなくても、年に二回は定期検診を受けることを推奨しています。飼い主さんのちょっとした気づきが愛犬を救うこともあるので、どんなに些細なことでも気になることがあったら、動物病院で気軽に相談してみましょう。

老化が原因の場合は適切な対応を

愛犬を獣医師に診てもらって、「年齢によるもの」と判断されたら、飼い主さんは状況に応じて適切なケアをしてあげましょう。

例えば、運動量が低下して体重が増えてきた場合は、シニア犬用のフードに切り替えてあげる必要がありますし、長距離のお散歩に疲れるようになってきたら、歩行のペースを落とす、休憩を挟む、お散歩コースを見直す、などの工夫が必要です。段差にステップを設置してあげたり、床に滑りにくいカーペットを敷いてあげたり、生活環境も整えてあげてください。

また、犬も老化が進むと介護が必要になることもあります。老犬介護で気になることや不安なことがあるときは、『老犬の介護は何が必要?介護の基本的な考え方と役立つ介護用品』の記事もあわせてご覧ください。

老化を予防するためにできること

(画像:Instagram / @pyu_camera

老化を止めることはできませんが、愛犬の老化の進行を少しでも遅らせたいと思う方は多いでしょう。ここでは、犬の老化を遅らせる方法を4つ紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

定期的な健康診断を

1つ目の老化予防は、定期的に健康診断を受けることです。シニア犬がかかりやすい関節炎やヘルニア、糖尿病などの病気は、早期発見して適切な処置をすれば、健康な時と同じように生活することが可能です。放置するとどんどん歩けなくなったり、衰弱したりしてしまうので、早めに異常を発見するためにも、定期的に健康診断を受けましょう。飼い主さんからは元気そうに見えていても、健康診断で何かしらの病気を発見できるケースもあります。

無理のない範囲で運動を

老化の進行を遅らせるためには、適度な運動も必要です。年齢とともに筋力が落ちていくのは仕方のないことですが、だからと言って歩かせないでおくとどんどん筋肉が衰えて、そのうち寝たきりになってしまいます。ある程度の筋肉をつけておけば、運動能力を維持できるだけでなく、血液循環や内臓機能の保護など体内のあらゆる臓器の健康を維持することに繋がります。無理させるのは禁物ですが、愛犬に健やかなシニア期を過ごしてもらうためにも、適度な運動を心掛けて筋力維持を目指しましょう。

脳に刺激を与えて

犬も高齢になると、認知症を発症する恐れがあります。愛犬が認知症にかかると今までのような意思疎通ができなくなったり、夜鳴きに悩まされたり、飼い主さん側の精神的な負担が大きくなります。認知症は一度発症すると治療することはできませんが、脳に刺激を与えることで予防すること、進行を遅らせることは可能です。愛犬とのコミュニケーションを増やしたり、おやつを与える際にゲームを取り入れたり、無理のない範囲でお外に連れ出してあげたりして、毎日の生活に工夫を加えながら脳に刺激を与えましょう。

サプリメントもおすすめ

老犬になると免疫力や運動能力、視力など様々な機能が低下していきます。そのため、年齢に合わせたフードを与えることはもちろん、愛犬の状態に合わせて犬用サプリメントを取り入れるのもおすすめです。サプリメントには関節の健康を維持するもの、目のケアができるもの、皮膚トラブルを改善してくれるものなど、様々な種類があります。犬用サプリメントについては『シニア犬にサプリメントは必要?効果や注意点は?』で詳しく解説しているので、合わせて読んでみてください。

最後に

愛犬がシニア期にさしかかってきたら、体や行動に変化がないか、常に注意を払うことが大切です。そして、何か異変を感じたときは絶対に放置せず、必ず獣医師に相談しましょう。また、愛犬が健康で快適な老後を過ごせるように、日頃から老化の予防も心掛けてください。