【老犬に多い肝臓病】症状や治療法、食事の注意点を獣医さんに聞きました!

肝臓病はシニア犬によく見られる病気の一つです。初期症状がほぼないため、気付いた頃にはかなり病気が進行していることも多く、飼い主さんは日頃から注意する必要があります。ここでは、肝臓病の症状や治療法、愛犬の肝臓を守るためにできることなどを解説します。

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肝臓はどんな働きをしている?

肝臓病について知るために、まずは肝臓の働きについて見ておきましょう。肝臓は体内で最も大きな臓器で、さまざまな役割を担っています。

肝臓の働き① 栄養素の合成・貯蔵・分解

ブドウ糖は体の細胞が活動するために必要なエネルギー源であり、別名グルコースと呼ばれます。グルコースは肝臓の中でグリコーゲンに形を変えて貯蔵されますが、血液中のブドウ糖が少なくなると、肝臓はグリコーゲンを分解してグルコースに再合成し、全身に送り届けます。

また肝臓には、胃や腸で吸収された脂質やタンパク質などの栄養素を、それぞれの組織に適した形に作り替える働きもあります。体内に吸収された栄養素は、肝臓が中心となって回っているのです。

肝臓の働き② 胆汁の生成

脂肪を分解・吸収する上で重要な働きをする胆汁を生成しているのも肝臓です。肝臓で作られた胆汁は、その後胆のうで蓄えられ、食事の刺激などで十二指腸内へ放出されて脂肪の分解吸収をサポートしています。

肝臓の働き③ 毒素の分解

タンパク質は分解される過程で有毒なアンモニアを生成します。肝臓はアンモニアをはじめとする体内の毒素を分解して無毒化し、腎臓に送って尿として体外へ排泄します。尚、心臓に流れ込む前の血液は、本来すべて肝臓を通って無毒化されています。

肝臓が悪くなるとどうなるの?症状は?

このように幅広い機能を持つ肝臓は、多少ダメージを受けても問題なく働くことができるよう、非常に高い再生能力を持っています。そのため「沈黙の臓器」と呼ばれ、肝機能が低下してもしばらく症状が現れず、気になる症状が現れた時には病気がかなり進行しているということも珍しくありません。

肝臓病の症状

肝臓病は軽度なものでは症状が出ないこともありますが、以下のような症状が見られることもあります。年齢による変化と見分けづらい症状が多いですが、気になる症状が見られたときは早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。

  • 疲れやすい
  • 食欲がない
  • 下痢・軟便が続く
  • 水を飲む量が増え、おしっこも増える(多飲多尿)
  • 嘔吐
  • 腹部を押されるのを嫌がる
  • 歯茎や皮膚・白目が黄色い(黄疸)など

老犬に多い慢性肝炎とは

肝臓病とは肝臓に起きる疾患の総称で、いろいろな種類があります。中でも老犬に多く見られるのは肝臓に腫瘍(ガン)ができる肝臓腫瘍、それから慢性的に肝臓が炎症を起こしてしまう慢性肝炎、そして長年ダメージを受け続けた肝臓が変性し、本来の機能を失ってしまう肝硬変です。ここでは主に慢性肝炎について解説します。

慢性肝炎とは

慢性肝炎は長期に渡って肝臓に炎症が生じている状態で、少しずつ進行していきます。慢性肝炎が進行すると肝硬変になることがあるため、早期発見による治療が重要です。しかし初期症状がほとんどない、徐々に進行するといった特徴から、症状だけで病気に気付くのは難しく、発見が遅れてしまうことも少なくありません。

慢性肝炎を発症しやすい犬種

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慢性肝炎の原因はさまざまですが、遺伝的な要因から発症することもあります。ラブラドールレトリバー、コッカースパニエル、ウエストハイランドホワイトテリア、ベドリントンテリア、ダルメシアン、ドーベルマンなどは慢性肝炎を発症しやすい犬種なので、飼い主さんは特に注意してあげましょう。

老犬が慢性肝炎を発症する原因

慢性肝炎はシニア犬で比較的よく見られる病気ですが、原因を特定するのが難しいケースも多いです。慢性肝炎を引き起こす原因はさまざまで、複数の原因が絡んでいることもあります。

銅蓄積性肝炎(遺伝性)

慢性肝炎の中でも原因を特定しやすいのが、肝臓に蓄積された銅が原因で起こる「銅蓄積性肝炎」です。銅蓄積性肝炎は遺伝的な要素が強く、「肝炎にかかりやすい犬種 」に見られることが多いです。全身麻酔をして肝臓の組織を一部切り取って調べる「生検」という検査で診断をつけることができます。

感染性

ウイルスや細菌、寄生虫などによって肝臓が大きなダメージを受けると、急性肝炎を引き起こし、そのまま症状が長引いて慢性肝炎に移行することもあります。犬の肝炎を引き起こす原因としてよく挙げられる「犬アデノウイルスⅠ型」と「レプトスピラ」は、混合ワクチンで予防することができます。

食事性

人間の食べ物や脂肪分を多く含む偏った食事を続けていると、肝臓に負担がかかり慢性肝炎を引き起こします。日々の食事が原因の場合、じわじわと肝臓がダメージを受けていくため症状に気付きにくく、発見が遅れてしまうことも少なくありません。

薬物・毒物性

洗剤や重金属などの毒物を誤飲すると肝臓がダメージを受けて急性肝炎を発症し、そのまま肝機能が戻らずに慢性肝炎に発展することもあります。また、ステロイド薬を投与し続けていることが原因で肝臓の数値が悪化することもあります(ステロイド性肝症)。

ステロイド性肝症の場合、投薬を中止して肝臓を休ませることで改善する場合もありますが、高齢犬の場合は持病があってステロイドを止めるのが難しいことも多く、多少肝臓の数値が悪化していても副作用の症状が出ない範囲で投薬量を加減して使い続けることも少なくありません。

他の病気が原因で引き起こされることも

肝臓や胆管・胆嚢に腫瘍があると、肝機能が低下して慢性肝炎を発症することがあります。また、シニア犬でもよく見られる胆嚢炎や膵炎、熱中症、敗血症など、他の臓器や全身性の炎症が波及して肝炎を引き起こすこともあります。外傷が化膿したときも肝炎の原因となります。これらのケースでは元の病気の治療が大切です。

肝臓病の治療

肝臓病ではどんな検査をするの?

血液検査で肝酵素の数値が高いときには、肝臓病の可能性があります。ただし、肝酵素の数値はストレスやオヤツなどの原因で上昇することもあるので、これだけで肝臓に疾患があると断定することはできません。そのため、レントゲンやエコーなどの画像検査で肝臓の大きさや状態を調べたり、腫瘤(できもの)や異常な血管、腹水があるかどうかを調べます。それと合わせて「総胆汁酸試験」という特殊な血液検査も行います。総胆汁酸試験で異常が出ると、肝機能が低下していると判断することができます。

ここまでの検査で原因がわからない場合は、CT検査や肝臓の一部を切り取って調べる「肝生検」という検査を行いますが、CTや肝生検には全身麻酔が必要になります。愛犬の体調や体にかかる負担を考えて、かかりつけの獣医師としっかり相談した上で検査に進むことが重要です。

肝臓病の治療について

検査で原因を特定できた場合は、それぞれの原因に応じた治療を行います。例えば腫瘍が見つかった時には手術で切除することもありますし、他の疾患によって肝機能が低下している場合には元の病気の治療をすることが大切です。

一方、検査で原因を特定できない場合は、投薬や食事の見直しによって肝臓の炎症を抑える治療を行います。肝臓は再生可能な臓器なので、肝臓にかかるダメージを緩和することができれば、数値が改善することもあります。肝臓保護作用のあるサプリメントも有効です。

愛犬が肝臓病になったら食事をしっかり管理して

肝臓を保護するためには、日々の食事が非常に重要です。中でも、タンパク質の与え方には注意しなくてはなりません。肝臓が再生するためには良質なタンパク質が必要ですが、タンパク質を摂取しすぎるとその分アンモニアも生成されるため、肝臓に負担をかけることになるからです。(※「肝臓の働き③ 毒素の分解」参照)

脂質の摂りすぎも肝臓に負担がかかるため、控えなくてはなりません。病状によっては、銅やナトリウムの摂取制限が必要な場合もあります。適した食事は病状によって異なるので、獣医師の指示に従って療養食を与えましょう。

療法食を愛犬が食べてくれないとき、療法食を飼い主さん自身が手作りしたい場合は、必ずかかりつけの獣医師や動物看護師に相談してください。肝臓病の栄養管理は非常に複雑なので、ネットなどの情報だけで独自に食事療法を行うと、かえって病気を悪化させてしまう可能性があります。もし、かかりつけの獣医師以外に相談したい場合は、栄養学に強い獣医師をセカンドオピニオンとして選ぶとよいでしょう。

肝臓病を予防するために飼い主さんができること

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定期的な血液検査

肝臓は初期症状が現れにくいため、愛犬の普段の様子から肝臓の不調を発見することはとても困難です。定期的な血液検査で肝臓の数値をチェックし、異変があったときすぐに気づけるようにしておきましょう。定期健診は8才以降は半年に1回、11才頃からは3~4か月に1回程度を目安にしてください。

早期発見によって病気の進行を抑えることができれば、肝硬変などのより深刻な病気を防ぐことにも繋がります。

食事の見直し

肝臓は再生能力が高いため、適切に栄養を管理することで回復が期待できます。人間と犬では適切な栄養バランスが異なるため、人間の食事を与えていたり、正しいペット栄養学の知識がないまま手作りフードを与えている場合は、食事内容を見直してあげましょう。また、ビーフジャーキーのような脂質の多いおやつは与えすぎないよう日頃から注意してください。

市販のフードを与えるときは「総合栄養食」と書かれたものの中から、愛犬の年齢に応じて最適なフードを選んであげてください。今まで問題なく食べていたフードでも、年を取ると脂肪分が多すぎたり、うまく消化できなくなったりすることもあります。カリカリが苦手な犬でもウェットフードなら食べられることが多いですよ◎『シニア犬フードの選び方は?老犬に必要な栄養素を獣医師が解説! 』の記事も参考にしつつ、愛犬にとって最適なフードを選んであげましょう。

また、手作り食を与えたいときは、栄養バランスに関する正しい知識を身につけておくと安心です。ペットの栄養学は、「日本ペット栄養学会 」で学ぶことができます。

肥満にさせない

肥満の犬は肝臓病を発症するリスクが高いと言われています。シニア期になったばかりの頃は運動量が低下して基礎代謝も衰え、若い頃より太りやすくなるので注意しましょう。低カロリーなシニア犬用フードなども取り入れると調節しやすくなります。『肥満は病気の原因にも!老犬の正しいダイエット方法 』の記事も参考にしてくださいね。

最後に

肝臓病はシニア犬によく見られる病気の一つですが、初期症状が現れにくく、気付いたときには病気がかなり進行していることもあります。愛犬が年を取ってきたら定期的に健康診断へ連れて行き、早期発見できるようにしてあげましょう。