シニア犬が薬を飲んでくれない。嫌がる愛犬に無理なく飲んでもらうには?

愛犬に薬を飲ませるのが苦手という飼い主さんも多いのではないでしょうか。高齢になると、今まで薬を飲んでくれていた子も、嫌がったり飲まなくなったりすることが増えてきます。今回は、シニア犬にやさしい薬の飲ませ方について、おうちケアに注力されている獣医師の林先生に、詳しいお話を伺います。

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老犬が薬を嫌がります…

2匹の老犬

(画像:Instagram/ @alotofraisingrans

シニア犬になると薬を処方される機会が増えますよね。しかし、いざお家で飲ませようとすると、薬だけ上手に吐き出したり、薬の入ったごはんを食べてくれなくなったりして、「うまくいかない!」と頭を抱える飼い主さんも多いはず。犬自身は薬が必要なものと理解できないので、嫌がるのは仕方のないことですが、だからと言って無理に飲ませようとするのはストレスになりそうで心配ですよね。

そんな時に無理なく飲ませる方法を知っていれば、投薬時間をストレスなく乗り切れるでしょう。ここでは、シニア犬に優しい投薬方法をいくつかご紹介します。ただし、病気によっては使えない方法があるので、特に栄養管理が必要な子は注意して、必ずかかりつけの獣医師に相談の上、取り入れるようにしましょう。

老犬の負担にならない薬の飲ませ方はありますか?

薬と老犬

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薬にはいろいろな種類があり、大きくシロップ、錠剤、カプセル、粉薬の4つに分けられます。動物病院で薬を処方してもらう際、物によってはどの種類の薬がいいか聞いてもらえることがあるので、「うちの子、粉薬は特に苦手」「シロップなら飲んでくれる」など、希望がある時は伝えるようにしましょう。

シロップの飲ませ方

甘く味付けしてあるシロップは他と比べると飲みやすい薬です。ただ、中にはなかなか飲みたがらない子もいるでしょう。味の好みや体調が変化して、前は飲んでいたのに急に飲まなくなることもあると思います。もし愛犬がシロップをそのまま飲んでくれない場合は、ウェットフードやスープ、犬用ミルクなどに混ぜるという方法もあるので、愛犬の好みにあわせて試してみてください。

錠剤・カプセルの飲ませ方

錠剤やカプセルを飲ませるときは「犬の舌の奥に薬を乗せてから口を閉じて飲み込ませる」というのが一般的な方法です。これなら薬を飲み込むところまでしっかり確認できますよね。しかし、愛犬が嫌がったり薬を吐き出そうとしてもがくような時は、無理に押さえつけたりせず、愛犬の好きな食べ物に薬を包んで与えてみてください。例えば、茹でたキャベツに包んだり、蒸したさつまいもやジャガイモに埋め込んだりしてもよいでしょう。犬用チーズに埋め込めば薬の味や匂いを感じにくくなります。肉や魚が好きな子の場合は、湯がいた肉や魚をフードプロセッサーでペースト状にすると、薬を包みやすくなりますよ◎包む際は、食べ物に薬の匂いがつかないよう、薬を持つ手と包む手を分けるとよいでしょう。その他、投薬をサポートしてくれる市販のおやつもおすすめです。

粉薬の飲ませ方

粉薬の一番シンプルな飲ませ方は、お水やぬるま湯に溶かして、スポイトやシリンジで愛犬の口に入れてあげる方法です。ただ、愛犬が嫌がってしまう場合は、無理なく飲める方法を見つけてあげるといいですね。粉薬の飲ませ方としては、ペースト状やとろみのある液状の食べ物に混ぜるのがおすすめです。

  • ウェットフード
  • とろみをつけたスープ
  • 無糖のヨーグルト(少量)
  • アイスクリーム(少量)
  • 砂糖水
  • 甘酒(※必ず米麹からできたノンアルコール・ノンシュガーのものを選ぶこと)

老犬に薬を飲ませるときの注意点はありますか?

ごはんを食べる老犬

(画像:Instagram/ @hamamahanabi

飼い主さんもリラックス

犬は飼い主さんの感情を敏感に察知します。飼い主さんの緊張は、長年一緒にいる愛犬には特に伝わります。薬を飲んでほしくて、つい真剣な表情になってしまうかもしれませんが、そこはグッと抑えてできるだけいつも通りに振る舞ってあげてください。飼い主さんがリラックスしていると、愛犬も自然と落ち着きます。そして、愛犬が薬を飲めたら思いっきり褒めてあげましょう。

体調の悪い日が続くと、犬自身も不安を感じやすくなります。そんな時、ごはんの中に苦い物体が入っていたり飼い主さんがピリピリしていたりすると、犬はますます不安になってしまいます。そうなると気持ちが先に弱ってしまって、病気と戦えなくなってしまいますよね。たとえ体が弱っていても心はずっと元気でいられるよう、「お薬の時間は楽しいんだ!」「頑張ったらたくさん褒めてもらえるんだ!」という雰囲気を意識して作ってあげてください。

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薬を加工するとき

錠剤やカプセルを与える際、愛犬の好きなもので包んであげても、口の中で上手により分けて吐き出してしまうことがあります。そんな時は砕いた錠剤や割ったカプセルを、とろみのあるスープや無糖ヨーグルトなどに混ぜてあげるとよいでしょう。ただし、薬によっては粉砕することで苦くなってしまったり、体内で早く溶けてしまったりするものもあります。加工したい時は必ず事前にかかりつけの獣医師に確認してくださいね。また、手作りスープなどに混ぜるときは温度が高い状態の時に混ぜてしまうと成分が変わってしまうおそれがあるので、必ず冷めてから混ぜるようにしましょう。くれぐれも加熱はしないでください。

ちゃんと飲み込んだか確認

いろいろ工夫を凝らしても、飼い主さんの見ていないところで上手に薬を吐き出してしまう子もいます。しっかり飲み込んでいるかどうかきちんと確認するようにしましょう。また、薬が口内や食道に張り付いてしまうこともあるので、投薬後は必ず水を飲ませてあげてください。正しく服用できていなければ薬の効果が得られず、症状が悪化してしまうこともあります。

なお、口内に張り付きやすいカプセルは、水に濡らすと喉を通りやすくなります。飲ませる前にさっと水で濡らしておくといいですよ。

すべて飲み切りましょう

獣医師はその子の体の大きさや健康状態に合わせて、適切な分量を処方しています。必ず全て飲み切るようにしましょう。特に粉薬などを液体に混ぜて与える場合は水分量に注意して。食欲が低下していると、液体の量が多すぎて全部飲みきれないことがあります。こうなると薬の効果が得られないので、必ず飲み切れる量に調節してください。

ごはんに混ぜると犬が警戒することも

シニア犬になると食欲が低下して、なかなかごはんを食べてくれないことも増えてきます。食欲が落ちている状態でフードに薬を混ぜてしまうと、ますますごはんを嫌がるようになるので注意しましょう。このようなときはごはんの時間と薬の時間を別々に分けたほうがいいです。ごはんタイムとは別に、「薬と一緒においしい物がもらえて、飼い主さんにも褒めてもらえる時間がある」と愛犬に思ってもらえるよう、工夫してみてください。

投薬サポートアイテムは使用量に注意

薬の服用をサポートするアイテムとして肉や野菜、おやつなどを使用する場合は、与えすぎに注意しましょう。1日あたりの分量やごはんとの兼ね合いにも気をつけて。また、投薬補助食品として売られているものは投薬時に使用する前提のものなので、おやつとして与えすぎないようにしてください。

それから、病気によっては避けた方がいい食べ物もあるので、新しい方法を取り入れる際は必ずかかりつけの獣医さんに相談するようにしましょう。

老犬に薬を飲ませる時に役立つアイテムはありますか?

薬を飲む老犬

(画像:Instagram/ @erierieri311

錠剤クラッシャー(ピルクラッシャー)

錠剤が苦手だった場合に、飼い主さん自身で簡単に粉薬を作れるアイテムが錠剤クラッシャーです。しかし、薬によっては砕くと苦くなるものもあるので注意しましょう。カプセルや錠剤の中には中身を出したり砕いたりしてはいけないものもあるので、事前に錠剤クラッシャーを使用してもいい薬かどうか獣医師さんに確認してください。

スポイトやシリンジ(針のない注射器)

シロップ薬や、粉薬を水に溶いて与える時は、スポイトやシリンジを活用すると確実に飲ませられるでしょう。食欲がなくて食事に混ぜて与えられない時、もしくは愛犬があまり嫌がらない場合は、これらを使って投薬してみましょう。ただ、勢いよく口に入れるとむせたり気管に入ったり(誤嚥)する恐れがあるので、使い方に注意が必要です。初めて使用するときはかかりつけの獣医師さんに方法やコツを聞くようにしてください。シニア犬の誤嚥は命にかかわることもあります。誤嚥が引き起こす危険性や予防方法については、こちらで詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

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老犬に薬を飲ませる時のおすすめ商品を教えてください。

パンケーキと老犬

(画像:Instagram/ @jubilee2011 )

最近は投薬をサポートしてくれる商品も増えてきました。そういったアイテムも上手に活用しながら、無理なくお薬タイムを乗り越えていけるといいですよね。ここではアイテムの選び方と、おすすめ商品をご紹介します。

体に優しいものを選ぶ

シニア犬は免疫力が低下し、内臓の機能も衰えてくるため、ちょっとしたことで体調不良を引き起こすようになります。毎日の投薬に使うサポートアイテムも、できるだけ体に優しいものを選んであげたいですよね。

化学合成された添加物を使用しているものは避け、できるだけ無添加のものを選ぶとよいでしょう。全てを無添加にすることは難しいと思うので、そのような場合は自然由来の添加物を使用したアイテムを選ぶと安心です。また、小麦に含まれるグルテンは腸の粘膜を傷つけることがあります。特にシニア犬はお腹の調子が悪くなりがち。お腹が弱い子はできるだけ小麦の入っていないアイテムを選ぶとよいでしょう。ここでは化学合成の添加物不使用、小麦不使用のアイテムをご紹介します。

投薬のお助けグッズ おすすめ8選

■PEペティッツ投薬補助トリーツ<低アレルゲン><ミネラルコントロール>

錠剤やカプセルを包むためのトリーツで、チーズ風味とチキン風味の2種類があります。尿石症や心臓病、腎臓病の治療中の犬にも与えることができます。グルテンフリーなので、おなかが弱い子やアレルギーがある子にもおすすめ。化学的防腐剤や防カビ剤を使用していないので、毎日の投薬を優しくサポートしてくれるでしょう。

■らくらく投薬チーズ

塩分を調整した犬猫用の国産無添加ナチュラルチーズ。ビタミンやカルシウムが豊富に含まれた、消化しやすいチーズを使用しています。ひとつひとつ個包装でラッピングしてあるので、直接チーズに手を触れることなく潰して薬を包むことができ、手を汚したり薬の匂いをチーズの表面につけたりすることもありません。薬の匂いに敏感な子におすすめです。

■いぬぴゅーれ無添加

原材料と米粉のみを使用した国産の無添加ピューレおやつ。気になる増粘剤・甘味料・グルテン・調味料・着色料は全て不使用なので安心して与えることができます。味のバリエーションが豊富なので、愛犬好みのものが見つかりやすいでしょう。味のバリエーションを変えれば、飽きることなくお薬生活を続けられますね。

■鹿ピューレ/鹿ピューレ乳酸菌配合

脂質が少なく、良質なたんぱく質を含む国産の鹿肉を使用したピューレ状おやつです。鹿肉は比較的アレルゲンになりにくく、添加物不使用・グルテンフリーなのでアレルギーの心配も少ないでしょう。整腸作用のある成分も含まれており、おなかに優しい商品です。「植物エキス発酵液」配合と「乳酸菌H61」配合の2種類から選べます。お肉好きだけど、おなかが弱くて心配という子の投薬におすすめです。

■無添加スナッピーピューレ

【数量限定】無添加スナッピーピューレ 犬用 鶏ささみ 5本入り

(画像引用元:CAINZ ONLINE SHOP

原材料にはすべて国産の鶏ささみや米粉、野菜などを使用し、余計なものは加わっていないシンプルなピューレ状のおやつです。増粘剤・着色料・グルテン・甘味料・調味料は全て不使用なので、アレルギーやおなかが弱い子にも安心して与えることができます。味は「鶏ささみ」と「野菜ミックス」の2種類。お試ししやすい低価格なのも嬉しいポイントです。

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■おくすりちょーだい

チーズ味で、塩分が0%の犬猫用投薬補助食品です。合成着色料や合成保存料などの添加物は使用していないものの、細菌の繁殖を抑える工夫により保存可能期間が比較的長くなっています。チューブに入った適度な粘りのある製品で、水にも溶けやすく、様々なタイプの薬に使えるのが特徴です。チーズ風味はお薬の味や匂いを軽減してくれるので、食いつきやすくなるでしょう。

■ココボン

こだわりの飼料と環境のいい平飼いで育てられた高品質チキンを使用した犬猫用ペースト状おやつです。ヒューマングレードのチキンを丁寧に調理しているので、愛犬の食いつきも期待できます。自然派由来のビタミンEを酸化防止剤として使用しているため、比較的長期保存が可能です。

■わんみぃ

国産素材にこだわったシンプルな材料で作られたペースト状おやつで、味は「ささみ」「まぐろ」「ビーフ」の3種類から選べます。国内工場にて人間用と同等の衛生基準で製造。保存料・着色料・防腐剤・香料は一切不使用で、米でんぷんを使ってとろみがつけてあるので、体への負担が少なく安心できる商品です。おなかや関節の健康をサポートする成分も入っており、投薬にあわせて愛犬の健康をサポートできますね。

最後に

寝ている老犬

(画像:Instagram/ @makomikantan

長いお付き合いになるかもしれないお薬生活。できるだけ愛犬に負担のない方法で続けてあげたいですよね。ただ、食欲が落ちていると投薬を続けるのが難しくなることもあります。どうしても薬を飲んでくれない時は、一度かかりつけの獣医師に相談してみてください。