老犬の肥満は病気の原因に!正しいダイエット法を獣医師が解説!

健康面での心配ごとが増えるシニア犬の飼い主さんにとって、食欲旺盛な愛犬の姿は嬉しいものです。「よく食べるのは元気な証拠!」と、たくさんごはんをあげたくなる気持ちはわかりますが、太りすぎてしまっては本末転倒。肥満には様々なリスクが潜んでいます。今回は愛犬の健康維持に役立つ、シニア犬の正しいダイエット方法について、ペット栄養学に詳しい獣医師福永先生に伺いました。

シニア初期の老犬は太りやすい

(画像:Instagram / @kplan_haru

愛犬がシニアと呼ばれる年齢に差し掛かってきたら、飼い主さんは今まで以上に体重管理に気をつけてあげてください。シニア初期の犬は徐々に運動量が落ち、代謝も衰えていく一方で、まだまだ食欲旺盛なことが多いので、太りやすい時期になります。今まで通りの食生活を送っているとあっという間に肥満になってしまうことがあるので、こまめに体重を測って肥満予防に努めましょう。

老犬は肥満に注意!太ることによるリスクは?

肥満には様々なリスクが潜んでいます。体が重くなることで腰や膝に負担がかかるだけでなく、さまざま病気の原因にもなります。

肥満のリスク① 心臓への負担が増加する

心臓は全身に血液を送る重要な役割を担っています。太ってしまうと心臓はその分多く働かなければなりません。そのため、肥満の犬は標準体重の犬に比べて心臓への負担が大きくなり、心不全などの心臓病のリスクが高くなります。

肥満のリスク② 呼吸器への負担が増加する

首回りの脂肪が増えると喉が圧迫され、呼吸器にも負担がかかります。呼吸をする際に器官が変形してしまう気管虚脱などの病気にもかかりやすくなります。

肥満のリスク③ 椎間板ヘルニアや関節炎が起きやすくなる

体重が増加すると、それを支えるための骨や関節にかかる負担も大きくなります。背骨の間にある椎間板が飛び出し、神経を圧迫してしまう椎間板ヘルニアや、関節に炎症が起きて慢性的な痛みが出る関節炎も、肥満によってリスクが高まります。

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佇む老犬

肥満のリスク④ 糖尿病や膵炎の発症リスクが大きくなる

糖尿病や膵炎などの病気も、肥満の犬がかかりやすいと言われています。糖尿病を患うとうまく栄養を取り込めなくなるためにどんどん体が弱っていきますし、膵炎は激しい痛みを伴うことが多いです。ただでさえ体力が落ちているシニア犬にとって、非常に大きな負担となります。

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肥満のリスク⑤ 尿路結石のリスクも

肥満になると、尿の通り道に石のようなものができる尿路結石のリスクも大きくなります。結石により膀胱が傷付いて血尿が出たり、尿路がふさがれることで排泄ができなくなったり、さまざまなトラブルを引き起こします。

ダイエットは必要?愛犬の現状を把握しよう

愛犬にダイエットが必要かどうか、まずは愛犬の現状を把握しておきましょう。特に毛の長い犬種はパッと見ただけで太っているかどうか判断をすることが難しいです。

セルフチェックをしてみよう

まずは自宅でも簡単にできるセルフチェックの仕方を紹介します。愛犬に触れてみて、今の状態をチェックしてみましょう。

肋骨に触れる?

手で触れた時に皮下脂肪の下に肋骨があるとわかる状態が望ましいです。肋骨に触れないほど皮下脂肪が厚いようだと太りすぎです。

腰にくびれはある?

立った状態の犬を真上から見たとき、ウエストに適度なくびれがあるのが理想です。箱型や樽型に見える場合は太りすぎです。

腹部のひだをつまめる?

太っている犬は皮が張るため、腹部(後ろ足の付け根に近い部分)のひだがつかめなくなります。ひだがほとんどない場合は太りすぎです。

背骨に触れる?

背中を触ったときにほどよい皮下脂肪の下に背骨の手応えがあり、隆起がわかる状態が望ましいです。背骨に触れないほど脂肪が厚いと太りすぎです。

自宅でもできる体重測定の仕方

次に、自宅でできる体重測定の方法をご紹介します。まずは愛犬を抱っこして体重計に乗ってみましょう。ここで、愛犬と飼い主さんの合計の体重を測定します。次に愛犬を下ろし、飼い主さん自身の体重を測定します。最初に測った合計の数値から、飼い主さん自身の体重を引けば、愛犬の体重を測定することができます。月に1〜2回を目安に定期的に体重を測り、変化をチェックすることをおすすめします。

獣医師に適正体重をみてもらおう

セルフチェックで「ちょっと太ってるかも…?」と思ったら、かかりつけの獣医さんに診てもらいましょう。その子の骨格や状態から、適正体重やダイエットのペース、適切なダイエット方法などを教えてくれます。

体重を測るためだけに動物病院を受診してもいいものか、不安に感じる飼い主さんもいるかもしれませんが、ぜひ気軽に動物病院を頼ってください。定期的に診察を受けることで、病気の早期発見にも繋がります。

急激に太ったときは病気が隠れているかも

肥満は、食べ過ぎや運動不足だけが原因とは限りません。病気によって体重が増える場合もあります。例えば高齢の犬によく見られる副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気で、食欲の増加や腹部がぽっこり膨れるなどの症状が現れます。愛犬の変化に違和感を覚えたときは、必ず獣医師に相談しましょう。副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方は合わせてご覧ください。

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老犬ならではの注意点!ダイエットの前に確認しておいて

(画像:Instagram / @mt0315

シニア犬はストレスで体調を崩しやすいため、ダイエットをするときは無理をしないよう気をつけましょう。以下のポイントに注意してください。

ダイエットの注意点① ダイエットはパーセンテージで考えて

人間で考えると1kgというのは大きな数字ではありません。しかし、体重が5kgの犬にとっては非常に大きな数字です。体重5kgの犬が1kg減量するということは、体重が50kgの人間が10kg痩せるのと同じこと。犬のダイエットはグラム数ではなく、パーセンテージを基準にして考えましょう。かかりつけの獣医師と相談してペースを決めると安心です。

ダイエットの注意点② 過激な食事制限はストレスの原因に

食事は犬の楽しみの一つです。急に量を減らすことがストレスとなることもありますし、十分な栄養を摂取できない可能性もあります。また要求吠えなどの問題行動につながる場合もあります。シニア犬用やダイエット用のドッグフード、カロリーの少ないおやつを活用して、ストレスのない体重管理をしてあげましょう。

愛犬のための正しいダイエット方法

愛犬にダイエットが必要となったら、具体的にどのような方法で進めればいいのでしょうか?ここではシニア犬ならではの注意点もあわせてご紹介します。

人間の食べ物を与えない

もし愛犬に人間の食べ物を与えている場合は、まずそれをやめましょう。愛犬がおねだりしてくる姿に負けて、つい自分の食べ物を分けてあげたくなるかもしれませんが、塩分や脂分が多く含まれている人間の食べ物はダイエット食として不向きです。なにより犬の健康によくありません。

おやつの量を工夫する

おやつの食べ過ぎは肥満の原因になります。しかし、これまであげていたおやつを一切与えないようにするというのは難しいと思うので、一回あたりに与えるおやつの量を減らしてみましょう。犬にとって重要なのは、おやつの大きさではなくもらえる回数なので、これまで一回であげていたおやつを割ったりして小さくすれば、同じ回数与えても1日あたりの量を減らすことができます。

おやつの内容を工夫する

おやつをカロリーの少ない野菜などに変更するのも有効です。茹でたニンジンやキャベツ、ジャガイモ、白米などは喜んで食べる犬も多く、ダイエットにも適した食材です。ただし、持病があるとこれらの食材を与えてはいけない場合もあります。持病がある子のおやつを変えるときは、必ずかかりつけの獣医さんに相談するようにしましょう。

しつけのご褒美におやつは必要?

愛犬が「まて」や「おすわり」などを上手にできたとき、ご褒美におやつをあげている飼い主さんも多いでしょう。このような成功報酬型のトレーニングは、愛犬との関係性を構築する上でとてもいい方法です。ただし、ご褒美として与えるおやつが犬を太らせる原因となるケースもあります。ご褒美をおやつに限定する必要はありません。ちゃんとできたら思いっきり褒めてあげたり、普段食べているドッグフードを数粒あげたりすることも、ご褒美としては十分。様々なご褒美を織り交ぜて、おやつを過剰に与えすぎないようにしましょう。

食事をシニア犬用フードに切り替える

活動量も基礎代謝も低下する老犬は、若い頃よりも太りやすくなります。そのため年齢とともに食事内容を見直すことも重要です。

成犬用のドッグフード(総合栄養食)には、犬にとって必要なカロリーと栄養素がバランスよく含まれています。そのため、ダイエットのために与える量を減らすと、カロリーだけでなく必要な栄養素まで不足してしまう可能性があります。そこで活用したいのがカロリーを減らしつつ、高齢の犬に必要な栄養がしっかり配合されたシニア犬用のドッグフード。まだフードの切り替えをしていない方は年齢に合わせて切り替えをしてください。

こちらの記事では、太りやすいシニア初期の犬のために作られたフードの情報をまとめています。ぜひご覧ください。

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運動はストレス発散程度に

(画像:Instagram / @pyu_camera

ダイエットには運動も大事ですが、肥満気味のシニア犬に激しい運動はNGです。心臓や関節に負担がかかり、体調を崩す恐れがあります。無理のない範囲で運動を取り入れましょう。

ちなみに犬の運動といえば真っ先に浮かぶのはお散歩だと思いますが、重い体で長い時間歩くと関節にかかる負担も大きくなります。シニア犬に運動をさせたいならプールがおすすめ。浮力のおかげで関節にかかる負担が軽減されるので、体を動かすことが好きな子はぜひ試してみてください。

老犬におすすめ!ダイエットのためのドッグフード6選

ダイエットのためのフードにはいくつかの種類があります。ここでは愛犬にとって最適なフードの選び方とおすすめのダイエットフードをご紹介します。

基本的には「総合栄養食」を選びましょう

ダイエット用のフードには、大きく分けると総合栄養食と療法食の二種類があります。肥満が原因でなにかしらの症状が出ている、血液検査で異常が認められるなど、健康に害を及ぼすほど太っているケースでは獣医師からダイエット用の療法食を指示される場合がありますが、そうでない限りは総合栄養食を選びましょう。療法食を食べる必要のない犬や、他の病気で食事指導が必要な犬に、飼い主さんが独断で療法食を与えてしまうと栄養の過不足が生じて健康を害するおそれがあります。総合栄養食でダイエットがうまくいかない場合にはかかりつけの獣医師と相談し、療法食を取り入れていくのもよいでしょう。

おすすめのダイエットフード6選

ここでは愛犬を減量させたい飼い主さんのために、ダイエットにおすすめな総合栄養食をご紹介します。動物病院で「少し痩せたほうがいいですよ。」と言われたときはぜひ参考にしてみてください。

■ロイヤルカナン ミニ ライト ウェイトケア(減量したい犬用 小型犬専用 成犬~高齢犬用)

筋肉量を維持するためにタンパク質はしっかり配合しつつ、脂肪分を31%カット。可溶性と不溶性、2つの食物繊維をバランスよく組み合わせており、満腹感が持続するダイエットフードです。健康な関節維持のためのオメガ3系脂肪酸を含んでいるのもシニア犬には嬉しいポイントです。

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■ヒルズのサイエンス・ダイエット™ シニアライト 小粒 肥満傾向の高齢犬用 7歳以上

カロリーを約14%、脂肪分を約26%カットしたダイエット用フード。高品質な自然素材を使った独自のレシピで空腹感をしっかりケアできます。グルコサミン、コンドロイチンなどシニア犬に嬉しいの栄養素も配合されています。

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■ナチュラルハーベスト セラピューティックフォーミュラ レジーム

日本とアメリカの獣医師が共同で開発したダイエットのための食事療法食。療法食とうたっていますが、総合栄養食をしての栄養基準を満たしているため、総合栄養食として与えることができます。小型犬でも食べやすい小粒タイプと、噛みごたえのある大粒タイプの二種類から選べます。

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■ナウ フレッシュ グレインフリー スモールブリード シニア&ウェイトマネジメント

主タンパク源に新鮮なターキー、ダック、サーモンの生肉を使用した低脂肪のダイエットフード。グレインフリーなので食物アレルギーがある場合もおすすめです。丸呑みしにくいクローバー型の粒を採用し、口内健康にも配慮しています。

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■ユーカヌバ フィットボディ

主原料にチキンや卵、ラム肉、魚など、高品質な動物性タンパク質を使用しつつ、脂肪分を40%カットしたダイエット用のフードです。健康な関節を作るグルコサミン、コンドロイチン硫酸や、健康な脳の働きをサポートするDHAなどシニア犬に嬉しい栄養素が配合されています。小型犬、中型犬、大型犬向けの三種類の中から選べます。

▼小型犬

▼中型犬

▼大型犬

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■メディコート<満腹感ダイエット>11歳から 老齢犬用

脂肪分を40%、カロリーを20%カットしたシニア犬のためのダイエットフード。関節をケアするグルコサミンや、健やかな被毛を維持する亜鉛アミノ酸複合体、シニア犬の健康をサポートするビタミン(E+B群)を強化しています。1歳以上の成犬向けフードもあります。

(公式サイトはこちら

最後に

年をとった愛犬の健康を維持するためには、適正体重を保ってあげることが大切です。はじめから太らせないことが理想ですが、もし太ってしまったら、まずはかかりつけの獣医師に相談しましょう。無理のないダイエットで健康を守ってあげてください。