年齢とともに愛犬に様々な変化が現れるようになると、飼い主さんとしては不安になりますよね。早い段階から愛犬の介護について考えておくことで、飼い主さんの精神的・体力的な負担を減らすことができますし、愛犬がより快適なシニア期を過ごすための環境を整えてあげることもできます。いざという時に慌てないためにも、老犬介護について情報を仕入れておきましょう。
犬を老化は突然現れる
人間は少しずつ年を取ります。だんだん歩けなくなって、少しずつ耳が聞こえにくくなります。しかし犬の場合、老化の進行がわかりにくいため飼い主さんが気付けないことがよくあります。飼い主さんからすると、ある日突然愛犬が歩けなくなったり 、耳が聞こえなくなってしまったように見えて、大きな不安を感じることもあるでしょう。
愛犬の異変を感じたら、病気が隠れている可能性もあるので、まずは動物病院できちんと診察してもらいましょう。その上で、老化による変化であることがわかったら、次に考えなくてはいけないのが愛犬の介護です。
どんな介護が必要になるの?
老犬に必要な介護の内容は、基本的に人間と同じです。ただし犬は言葉を話せないので、飼い主さんがより注意して愛犬の変化に敏感になる必要があります。ここでは、シニア期の犬に訪れる変化と、サポートの方法についてご紹介したいと思います。
食事のサポート
犬も高齢になると消化器官の働きが鈍くなり、噛む力も弱くなります。硬くて大きいフードは食べにくく食欲低下の原因となるため、食欲が落ちてきたと感じたら、フードを細かくする、水でふやかす、ミキサーにかけて流動食にするなどして食べやすくしてあげましょう。最近は介護用のフードが販売されているので、そちらを利用するのもオススメです。
また、筋力が衰えると床の上に置いたお皿まで頭を下げることが大変になる場合もあります。高さ調節のできる台を用意し、その上にごはんの入ったお皿を置いて、犬が食べやすい姿勢を取れるよう工夫してあげてください。
排泄のサポート
加齢によって足腰の筋力が衰えると、トイレに間に合わないことが増えてきます。また、寝ている間に尿道や肛門 の括約筋が緩んで、おもらしをしてしまうこともあります。「最近、トイレの失敗が多いな」と感じたら、トイレの場所 を近くに移動する、トイレの数を増やす、オムツを活用するなどして対処しましょう。排泄時に足がふらついてお腹や足回りが汚れることも多くなるので、トイレの後はこまめに体を拭いてあげてください。
歩行のサポート
筋力や体力が低下してくるとお散歩を嫌がるようになりますが、だからと言って全くお散歩をしなくなるとさらに筋力が衰えてしまい、寝たきりの状態になってしまいます。無理は禁物ですが、距離を短くする、できるだけ平坦な道を選ぶなど、負担の少ない形でお散歩を続けるようにしてください。ケアハーネスなどのアイテムを利用することで、再び歩く意欲を取り戻す犬も多いです。
寝返りのサポート
自分で上手に起き上がれなくなり、寝たきりの状態になった犬は床ずれができやすくなるため、寝返りのサポートをしてあげる必要があります。床ずれは長時間ずっと同じ姿勢で寝ていることで引き起こされます。床やマットと接している箇所が圧迫されて血流が悪くなり、やがてその部分の皮膚や筋肉が壊死してしまうのです。床ずれは老化によって肉が落ちた骨の出っ張り部分に起こることが多いですが、長時間圧迫されなければ防ぐことができます。寝ている愛犬の体勢を数時間おきに変えてあげたり、床ずれ防止マットなどのアイテムを利用して床ずれを防ぎましょう。
愛犬の介護、まず何をすればいいの?
さて、ここまでシニア犬に必要な介護の内容をザッとご紹介してきました。しかし、いざ愛犬の介護をする必要が出てきたら、一体なにから始めればいいのか迷いますよね。ここでは介護の基本的な心構えと、必要な準備について解説します。
介護の基本的な考え方
長年連れ添った愛犬に対して、献身的なお世話をしてあげたくなる気持ちはわかりますが、あれもこれも手伝ってしまうことは愛犬のためになりません。これは人間の場合も同じで、介護をするときは「できないことのみをサポート」するようにしましょう。できることまで手を出してしまうと、できることもだんだんできなくなってしまいます。昔のように上手くできなくても、ゆっくり時間を掛けてできるのであれば、見守る気持ちを持つことが必要です。
愛犬が今できること・できないことを整理する
愛犬ができること、できないことを整理することで、より具体的に介護の方向性が見えてきます。ここでは、年齢に伴って犬ができなくなることをまとめておきますので、独自のチェックリストを作るのに役立ててください。
- 耳が聞こえにくくなる
- 物が見えづらくなる
- 食欲が低下する
- 元気に歩くことができなくなる
- 階段や段差を昇り降りできなくなる
- トイレの失敗が増える
- 寝たきりになる
必要な介護用品を揃える
犬の介護も度合いによっては飼い主さんにかかる負担が大きくなります。何でも人の手だけで行おうとすると限界があるので、介護用品を上手に活用しましょう。オムツなどを利用することに抵抗がある方もいるかもしれませんが、飼い主さんの負担が減って愛犬と一緒に穏やかな時間を過ごせるなら、犬にとっても嬉しいことです。
あると便利な介護用品
(画像:Instagram / @hanahana.shii)
愛犬の状態に合わせて、必要な介護用品を揃えていきましょう。ここではあると便利な介護用品をご紹介します。
スロープや緩衝材で優しいお家づくり
足腰が弱ってくると、玄関やソファーなどの段差を自力で登ることができなくなります。愛犬がよく昇り降りするような場所には室内用スロープを設置してあげるといいでしょう。また、視力が低下したりふらつくようになると、テーブルや椅子の脚、壁の直角部分などに体をぶつけることも増えます。そんなときは家具の角に緩衝材を貼ってあげると怪我の心配がなくなります。
歩行のサポートをしてくれる介護用ハーネス
介護用ハーネスは胴体全体を包むタイプ以外にも、前足のみ、後ろ足のみをサポートするタイプ、男の子用、女の子用など様々な種類があります。愛犬の状態に合わせて最適なものを選びましょう。胴体全体を包むタイプは、犬の体全体が持ち上がるので歩きやすくなりますが、部分サポートのタイプを利用していくうちに筋力がついてハーネスを必要としなくなるケースもあります。最初は部分用サポートタイプを試してみるといいでしょう。
トイレの失敗が続くなら犬用オムツ
年齢とともにトイレの失敗が増えるのは仕方のないことですが、愛犬の粗相が続くと飼い主さんにかかる負担が大きくなってしまいますよね。そんなときは犬用オムツがオススメです。介護が必要になって初めてオムツをつけると、犬が想像以上に嫌がる場合があるので、元気なうちから時々使用して慣れさせておきましょう。
人間用のオムツを愛犬の体に合わせてリメイクしてもいいですが、犬用のオムツはあらかじめしっぽを出す穴があり、犬の足に合った形状をしているので装着しやすいです。なお、オムツを着用しているときに排泄をしたら、すぐに脱がせて体を拭いてあげましょう。
シニア犬に最適なマットやベッド
もこもこした場所が好きな犬は多いですが、愛犬が年を取ってきたらマットやベッドはある程度固さがあるものに変えてあげましょう。足腰が弱くなるとふわふわしたところが歩きにくくなります。
また、寝たきりの場合は床ずれ防止の専用マットや体圧分散マットがあるので、ぜひ活用してください。体への負担が減り、床ずれを防ぐことができます。介護用のドーナツ型クッションを床と体の間に入れてあげてもいいでしょう。
シニア期に入ったら病気の予防も意識して
シニア期の病気は体力だけでなく、愛犬の気力も失わせてしまいます。愛犬にずっと元気で過ごしてもらうためには、病気の予防はとても重要です。
刺激のある毎日を送ろう
脳に刺激を与えることは、認知症の予防に効果があります。無理のない範囲でお散歩に連れて行ってあげましょう。外に出て匂いを嗅ぐことだけでも刺激になるので、歩けない場合は抱っこやカートで連れ出してあげてください。おもちゃで遊んだり、おすわりや伏せのトレーニングをすることもいい刺激になります。愛犬が興味を示してくれるようなおもちゃを探してみましょう。
適正体重の維持を目指そう
シニア犬は代謝が落ちたり、腸の働きが低下することから、体重が変動しやすくなります。シニア初期は運動量が減り、代謝が低下することから太りやすくなる と言われています。肥満は糖尿病などの病気の原因になるだけではなく、関節や心臓にも負担がかかり、さらに運動をしなくなるという悪循環を招く恐れがあります。すでに肥満になってしまった愛犬をダイエットさせることも大事ですが、それよりも日ごろから体重の管理をしっかりと行い、ダイエットをしなくてもいい状態を維持することが必要です。シニア犬のダイエット方法については『肥満は病気の原因にも!老犬の正しいダイエット方法 』の記事を参考にしてください。
尚、シニア後期になると腸の働きが衰えるため、食べても食べてもどんどん痩せてしまうことがあります。痩せすぎも体力が衰える原因となり、様々な病気にかかりやすくなるので注意が必要です。見た目だけで愛犬の体重の変化に気付くのは難しいので、こまめに体重測定をしてあげましょう。
定期的な健康診断をしよう
定期的な健康診断は病気を早期発見できる以外に、犬種によってかかりやすい病気や怪我、その予防法などを獣医師から教えてもらうことができます。医療やグッズなどの最新情報も入手できることがあるでしょう。また、健康なときから動物病院へ通うことで、愛犬に「病院は怖い場所ではない」と覚えてもらいやすくなります。動物病院への苦手意識が払拭できれば、いざという時スムーズに治療を受けやすくなります。
最後に
愛犬の介護を漠然と考えると、「何をすればよいのだろう」と不安になってしまうかもしれませんが、事前に情報を集めておくと慌てずにすみます。悩んだときは自分1人で抱え込まず、かかりつけの獣医さんや老犬ホームなどの専門家を頼ってください。