犬の歯磨きの仕方を獣医師がわかりやすく解説!シニア犬こそ習慣化してあげて

愛犬の歯を健康に保つためには、日々の歯磨きがとても大切です。特にシニア犬になると歯周病のリスクが高まるため、できれば毎日歯磨きをしてあげたいもの。ただ、歯磨きを嫌がる犬は多く、なかなか習慣化するのは難しいですよね。ここでは犬の歯磨きの仕方について、わかりやすく解説していきます。

老犬だからこそ歯磨きは大切

歯周病の予防ができる

3歳以上の犬の約8割に歯周病の心配があると言われていますが、特にシニア犬の場合は唾液が分泌されにくくなるため、より発症のリスクが高まります。

歯周病の原因となっているのは、歯石と呼ばれる細菌の塊です。口内の食べかすを栄養にして細菌が増殖すると、やがてネバネバした歯垢になり、それが唾液中のミネラルと結びついて歯石となります。歯垢のうちは歯磨きで除去できますが、歯石になってしまうと歯磨きで取り除くことはできません。そのため、歯垢のうちにしっかり歯磨きをしておく必要があります。

歯周病の症状や治療法、歯石の取り方については『愛犬がシニアになったら気をつけたい歯周病!症状や治療法は?』で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。

食欲を維持できる

(画像:Instagram / @mt0315

高齢犬は消化吸収機能が低下するため、きちんと食事をとっていても痩せてしまうことが多いです。そのため、食欲を維持する工夫はとても大切です。口内環境が悪化すると食べるときに痛みが出ることから、食欲が衰えてしまうケースも多いです。そしてそれに伴い、ガクッと体力が落ちてしまう可能性もあります。シニアになってもごはんの時間を楽しんでもらえるよう、できるだけキレイな歯を保ってあげましょう。

歯磨きを習慣化するためのポイント

日々の歯磨きはとても大切ですが、口に触られるのを嫌がる犬は多く、苦戦している飼い主さんも多いと思います。歯磨きを習慣化するためにはどんなことを気をつければいいのか、ポイントをチェックしてみましょう。

 どのくらいの頻度で歯磨きすべき?

人間の場合、歯垢が歯石になるまで25日ほどかかりますが、犬の場合は3~5日程度で歯石になってしまいます。しかも、高齢になるとその期間はさらに速くなると言われているため、歯磨きをする頻度は【毎日】がオススメです。また、毎日歯磨きをすることで、飼い主さんにとっても犬にとっても習慣化しやすくなるでしょう。

最初から1度の歯磨きで完璧な状態を目指そうとすると、犬に大きなストレスを与えてしまいます。慣れるまでは毎日1~2分でいいので、「今日は右側の歯だけ、明日は左側の歯だけ」というように、無理のない範囲で歯磨きを続けていきましょう。

 タイミングを工夫する

(画像:Instagram / @pino_hana

歯磨きトレーニングで愛犬が暴れてしまう場合は、タイミングを工夫してみてください。元気いっぱいの時は大暴れしていた子でも、少し疲れている時には大人しく触らせてくれことがあります。お散歩の後、おもちゃで遊んだ後などのタイミングで試してみましょう。

嫌がったらすぐにやめて

歯磨きを習慣化するには、犬に「歯磨きは楽しいもの」と思ってもらうことも大切です。愛犬が歯磨きを嫌がったら深追いせず、すぐにやめましょう。嫌がっているのに無理やり続けると、歯磨きは怖いもの・嫌なものと認識されてしまいます。焦らず気長に取り組んでいきましょう。

ご褒美におやつやフードを用意して

歯磨きの練習がうまくできた時には、たくさん褒めてあげることも大切です。ご褒美には愛犬が特にお気に入りのおやつを用意しましょう。歯磨きをした後におやつを食べると歯垢の原因になってしまうのではないかと心配になるかもしれませんが、まずは愛犬に歯磨きを好きになってもらうことが優先です。

歯磨きの練習の仕方をわかりやすく解説

ここでは、愛犬に歯磨きに慣れてもらうためのトレーニング方法をわかりやすく解説します。ただし、シニア犬にストレスは禁物。絶対に無理せず、可能な範囲で進めていきましょう。

まずは口の中を触わることに慣れさせて

(画像:Instagram / @kplan_haru

口の中にいきなり歯ブラシを入れると、驚いて嫌がる犬は多いです。そこで、まずは手で口に触ることに慣れさせましょう。

  • 手のひらにおやつを置いたら、それを軽く握ります。
  • コングのようなイメージで、握りこぶしの中にあるおやつを愛犬に食べさせましょう。こぶしの中に愛犬のマズルの先端が入るようにします。
  • 愛犬がおやつに夢中になっている間、もう片方の手で愛犬の唇を優しく持ち上げ、口の中にタッチします。慣れるまで続けてください。口の中を触れられることに慣れたら次のステップです。
  • 愛犬に「マテ」をさせたら、片手におやつを持って愛犬の目の前に持っていきます。愛犬が待っている状態のまま、おやつを持っていない方の手で唇を優しく持ち上げ、歯にタッチしましょう。奥歯付近の唇を持ち上げるとやりやすいです。ここまでできたら、おやつをあげてたっぷり褒めてあげましょう。

この流れを繰り返すことで徐々に口の中を触られることに慣れていきます。

 慣れたら歯ブラシで優しくタッチ

口の中に触れることに慣れてきたら、今度は歯ブラシに慣れる練習です。

  • 片手におやつを持ち、反対側の手に歯ブラシを持ちます。
  • 愛犬の目の前におやつを持っていき、「マテ」をさせてください。
  • 愛犬が待っている間に歯ブラシをそっと口に当ててみましょう。できたらすぐにおやつを与え、思いっきり褒めてあげます。
  • 歯ブラシに慣れてきたら、今度は唇をめくって歯ブラシで愛犬の歯に優しくタッチします。できたらすぐにおやつを与え、たくさん褒めてあげましょう。タッチする歯を変えながら、何度も繰り返して慣らしていきます。
  • 歯ブラシに犬用の歯磨きジェルを塗ってみるのもよいでしょう。ただし、歯ブラシをガジガジ噛みそうになった場合は、ダメと言ってすぐに取り上げてください。

 汚れがたまりやすい部分を丁寧にブラッシング

愛犬が歯ブラシに慣れてくれたらあと一歩です!上下の犬歯や奥歯、歯と歯茎の間に汚れが溜まりやすいので、磨き残しがないよう丁寧に磨いていきましょう。歯周ポケットの汚れをかき出すように磨くのがコツ。特に上顎の奥にある大きな歯(第四前臼歯)のへこんだ部分は、近くに唾液腺がある関係で歯石化しやすいため、重点的に磨いていきましょう。

ただし、最初からゴシゴシすると嫌がってしまう子も多いので、慣れるまでは優しくシュッシュとこする程度にしてください。

デンタルグッズも上手に活用して

犬用のデンタルグッズはたくさん種類があって、何を購入すればいいのか悩んでしまいますよね。ここではデンタルグッズの目的と合わせて、それぞれの使い方を解説します。

 歯ブラシを嫌がる時はガーゼや歯磨きシートで練習する

歯周ポケットの汚れまでしっかり落とすためには歯ブラシがオススメですが、なかなか歯ブラシに慣れてくれないときは、先にガーゼや歯磨きシートを使って練習するとよいでしょう。

歯ブラシの硬い感触を嫌がる犬でも、飼い主さんの指の感覚がするガーゼや歯磨きシートなら受け入れてくれることが多いです。シートをしっかり指に巻き付けたら、まずは歯を軽く触ってみましょう。慣れてきたら歯の並びを確認するように全体を触り、それもできたら歯の表面を擦ってみてください。

内側もキレイに磨きたい時はフレーバーがおすすめ

歯磨きに慣れてきたら、歯の内側の汚れもキレイにしてあげましょう。愛犬に口を開けてもらう必要があるので、そんな時はチキンフレーバーなどの歯磨きジェルを取り入れるとよいでしょう。おいしい匂いに口を開けてくれやすくなります。

 歯磨きガムやおもちゃの効果は?

(画像:Instagram / @kayololo

補助的に取り入れるのが◎

歯磨きガムやおもちゃには、噛むことで唾液の分泌を促して口内をキレイに保つ効果、配合成分によって口臭を抑える効果などがあります。ただし、歯磨きガムやおもちゃだけでは歯の間や歯周ポケットの汚れを落とすことはできないので、あくまでも歯磨きと並行して、補助的に取り入れるようにしてください。

歯磨きガムは、そのまま1本与えると、ほとんど噛まずに飲み込んでしまって効果が得られないことがあります。飼い主さんがガムを手に持ったまま、愛犬に噛ませるようにしてみましょう。特に汚れが溜まりやすい第四前臼歯(上顎の奥にある大きな歯)を狙って噛ませるのがポイントです。

選び方の注意点

おもちゃを選ぶ際は商品の表示を確認して、必ず愛犬の口のサイズに合ったものを選んでください。大きすぎると口内をケガしてしまう可能性がありますし、小さすぎると誤飲の危険があります。

また、蹄や骨などの硬いものを噛ませると第四前臼歯が破折してしまうことがあります。骨折した歯をそのまま放置すると、歯の根っこに膿がたまる根尖膿瘍を起こします。硬すぎるおもちゃ、おやつは与えないよう注意しましょう。

最後に

歯磨きをする習慣をつけることは、愛犬の健康のためにとても大切です。デンタルグッズなども上手に活用して、愛犬と一緒に楽しみながら歯ブラシができる状態を目指していきましょう。