老犬が水を飲まない原因は?飲水量の目安と対策を獣医さんに聞きました

犬は年を取ると、様々な理由から水を飲まなくなることがあります。ひどいときには脱水状態に陥ってしまうケースもあるので、シニア犬と暮らす飼い主さんは注意して見てあげてください。ここでは、犬の介護に詳しい獣医師の丸田先生に、シニア犬が水を飲まなくなる原因、1日に必要な飲水量、対処法などを伺います。

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シニア犬が水を飲まなくなる原因を教えてください

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水を飲まない原因① 筋力の低下

年齢とともに筋力が低下すると、体を動かすことが億劫になって、水飲み場まで行かなくなる犬は多いです。また、足腰の筋力が弱っていると、水を飲む体勢を維持することが難しくなって、水を飲まないこともあります。

水を飲まない原因② 体の痛み

シニア犬によく見られる関節疾患を発症すると、関節に痛みが出てきます。体を動かすと痛むので、水飲み場まで行くのが辛くて、喉が乾いていても我慢してしまうこともあるでしょう。また、歯周病などで口内環境が悪化しているときも痛みが出るので、水を飲まなくなることがあります。

水を飲まない原因③ 喉の渇きに気づかない

高齢になると喉の渇きに鈍感になります。体が脱水状態に陥っていても、水分が不足していることに気付かず、水を飲もうとしないケースもあります。

シニア犬が1日に飲むといい水の量を教えてください

犬が一日あたりに飲む水の量は、体重1キロにつき50ml〜60mlが目安です。つまり、体重が5キロの犬の場合は1日に250ml〜300mlの水が必要となります。しかし、高齢になった犬は水を飲まなくなることがよくあります。愛犬の水を飲む回数が減ってきたと感じたら、1日の飲水量をチェックしてみるとよいでしょう。

愛犬の飲水量を調べるには、まずメジャーカップで水の量を測ってから器に入れるようにします。水を取り替えるタイミングで、器に残っている水をメジャーカップに戻せば、どれだけ水を飲んだか簡単に測ることができます。

飲水量が減るとどうなりますか?

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脱水する

水を飲む量が減ってしまうと、脱水状態に陥ることがあります。シニア犬の中には、脱水状態になっていても水を飲もうとしない子もいるので、飼い主さんができるだけ注意して見てあげましょう。以下の症状が見られたら脱水が疑われます。

【脱水の症状】

  • 口の内が乾燥している。
  • 皮膚の弾力がなくなっている。
  • 目がくぼんだように見える。

「もしかして脱水してる?」と思ったら、皮膚の弾力を調べてみましょう。首の後ろの皮膚を軽くつまんで、優しく5センチほど持ち上げ、手を放します。正常な場合は1.5秒以内に元の状態に戻りますが、なかなか戻らず、2秒以上かかるようなら脱水を疑いましょう。

尿路系の病気のリスクも高まる

水を飲まなくなると尿が濃くなり、尿管や膀胱などに結石ができやすくなります。結石は、尿の中に含まれるミネラルが結晶化して石のように固まったもの。結石ができると尿路閉塞を起こしたり、腎臓病を発症するリスクも高まるので、そういった病気を予防するためにもきちんと水分を摂取することは大切です。

特に、腎臓の機能が低下する慢性腎臓病はシニア犬でよく見られる病気です。腎臓をできるだけいたわるためにも、きちんと水分補給ができるよう気をつけてあげましょう。

便秘がひどくなることも

水を飲む量が減ると、体は必要な水分を確保するために排出する水分量をできるだけ減らそうとします。その結果、便に含まれる水分が少なくなり、便秘になってしまうこともあります。ひどいときには動物病院でうんちを出す処置が必要になることもあるので注意しましょう。

愛犬が脱水していたらどんな処置が必要ですか?

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愛犬が脱水していることに気づいたら、どのように対処したらいいのでしょうか?ここでは自宅でできる処置の仕方や、動物病院へ連れていくべきタイミングなどを解説します。

少しずつお水を与える

愛犬の脱水に気づいたら、まずは水を少しずつ与えてみましょう。水分補給ができるようなら、そのまま様子を見ていても構いません。水を飲むことを嫌がる場合は、ペット用のスポーツドリンクや経口補水液などを与えるのも1つの手です。愛犬が年を取ってきたら、これらのアイテムを常備しておくといいかもしれませんね。

尚、人間用のスポーツドリンクには塩分や糖分が多く含まれているため、自己判断で与えるのはやめましょう。どうしても水を飲んでくれないときは、かかりつけの動物病院に連絡して指示を仰ぐようにしてください。

こんなときは動物病院へ

1日以上ほとんど水を口にしていない、お水を与えても飲もうとしてくれないときは早めに動物病院へ連れていきましょう。また、下痢や嘔吐が1日以上続いた時もやはり動物病院に連れて行ったほうがいいです。下痢や嘔吐によって急激に体の水分が失われると、重度の脱水状態に陥る可能性があるからです。

脱水が進行すると意識がなくなったり、命に関わる危険があるので、重症化する前に動物病院へ連れて行ってあげてください。動物病院では点滴で水分や電解質を補う処置をしてくれるでしょう。

シニア犬が水を飲まない時の対策を教えてください

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愛犬が水を飲まなくなってきたときは、「きっと喉が乾いていないのだろう。」で済ませず、状況に合わせて適切な対策をしてあげてください。ここでは自宅でできる対処法をご紹介します。

対策① 水の器を複数の場所に設置する

もし、いつも愛犬が休んでいるベッドから水飲み場が離れている場所にあるのであれば、ベッドの近くにも水飲み場を作ってあげましょう。その他、愛犬のよくいる場所や通り道などにも水の器を設置してあげます。どこにいても水が飲めるようにしておけば移動の負担を減らせるので、めんどくさがって飲まないことも少なくなるはずです。

対策② 水を飲む環境を見直す

水飲み場を増やすことと合わせて、水飲み場の環境も見直してみましょう。たとえば、筋力の低下によって水を飲む姿勢を維持することが難しくなっているのなら、地面まで頭を下げなくていいように台の上に水の器を置いてあげたり、足元に滑りにくい素材を敷いてあげたりすると改善することがあります。

対策③ フードの水分量を増やす

それでもなかなか水を飲んでくれないときは、フードの水分量を増やすのも1つの手です。たとえば、ドライフードにお湯をかけてふやかしたり、ウェットフードに切り替えたりすると食事から摂取できる水分量を増やすことができます。無糖ヨーグルトや茹でた野菜などをトッピングしたり、スープなどを手作りしてあげるのもおすすめです。

ただし、食事の水分量を増やすと必然的に食事の量が多くなってしまいますので、食欲が落ちている犬の場合は食欲とのバランスを取りながら、水分量を増やしてあげてください。

対策④ お水を口元まで運んであげる

犬が自力で水を飲まないときは、飼い主さんがサポートしてあげましょう。愛犬の口元まで水の入った器を運んであげたり、シリンジで口の中に水を注いであげたり、愛犬の状態に合わせて飲ませ方を工夫してあげるといいです。

ただし、飲み込む力が衰えたシニア犬は誤嚥性肺炎を引き起こしやすいため、サポートするときは十分に注意してください。誤嚥性肺炎は水や食べ物が気管に入ってしまうことから発症する肺炎で、特にシニア犬の場合は命に関わるケースも少なくありません。誤嚥性肺炎を防ぐための注意点はこちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ合わせてご覧ください。

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与える水はどんなものがいいでしょうか?

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水道水が基本

日本の水道水は軟水で、私たち人間もそのまま飲めるほど安全性が高いので、愛犬にも水道水を与えるとよいでしょう。カルキ臭が気になるときは一度沸かしてから冷ましたものを与えてもOK。

ミネラルウォーターを与えたいときは、ミネラル含有量の低い軟水を選びましょう。硬水や飲料用の温泉水はミネラル含有量が高いため、日々の飲み水には適していません。特に尿路結石などの病気がある犬には与えないようにしましょう。

水に香りをつけてもOK

なかなか水を飲んでくれないときは、水に香りをつけるのもおすすめです。鶏のささみの茹で汁を冷ましてから与えると、香りがいいので飲んでくれることもあります。カフェインレスの麦茶やコーン茶も、こうばしい香りに誘われて飲んでくれかもしれませんね。ただし、カフェインは犬にとって中毒物質になるので、カフェインを含む緑茶や紅茶などは与えてはいけません。

水分補給におすすめなおやつはありますか?

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ここでは、水分補給をさせたいときにおすすめなおやつをご紹介します。ただし、持病がある場合は食事制限が必要なこともあるので、必ずかかりつけの獣医師に相談してから与えるようにしてください。

水分補給ができるおやつ① ヨーグルト

ヨーグルトは栄養が豊富な上に水分を補うことができます。また、歯周病予防の効果や整腸作用も期待できるので、シニア犬のおやつに最適。フードにトッピングしてもいいですし、おやつとしてそのまま与えてもよいでしょう。犬に与えるときは無糖のプレーンヨーグルトを選んでくださいね。

水分補給ができるおやつ② フルーツ

ミカン、リンゴ、梨、スイカなどのフルーツも水分補給ができるおやつと言えます。甘くて香りがいいので、食欲が落ちていても食べてくれる犬は多いでしょう。ただし、フルーツはあまりたくさん与えると糖分の摂りすぎになるので注意が必要です。

また、フルーツなら何でも与えていいというわけではありません。ブドウやレーズン、イチジクなどのフルーツは犬が食べると中毒症状を引き起こす危険があります。どのフルーツを与えていいか悩んだときは、かかりつけの獣医さんに相談してみるといいですよ。

水分補給ができるおやつ③ 野菜

水分の多い野菜をおやつとして与えるのもおすすめ。ネラルや栄養が豊富なキャベツやブロッコリー、全体の95%を水分が占める白菜は、犬に与えても大丈夫な野菜です。一度茹でたり炒めたりして、火を通してから与えるとよいでしょう。生で与えるならトマトやきゅうりがおすすめです。タマネギやニラなどのネギ類は犬にとって中毒物質なので与えてはいけません。

水分補給ができるおやつ④ 犬用ミルク

水分補給ができて栄養価の高い犬用ミルクもおすすめです。犬用ミルクには子犬用のものとシニア犬用のものがあるので、愛犬の年齢にあったミルクを選びましょう。「ミルクがいいなら牛乳でもいいの?」と思われる方がいるかもしれませんが、犬に牛乳を与えると体調不良や下痢を引き起こす原因となるので与えてはいけません。

水分補給ができるおやつ⑤ 甘酒

甘酒は水分補給ができるだけでなく、栄養価が高く、消化吸収もいいので、食欲が衰えているシニア犬にもおすすめです。与えるときは必ず米麹から作られたノンアルコールのものを選ぶようにしましょう。砂糖を使ったもの、酒粕から作られたものを与えてはいけません。安心して与えられる犬用の甘酒も販売されています。

最後に

愛犬の健康を維持するためには、適切な水分補給がとても大切です。愛犬が年を取ってきたら日々の飲水量と合わせて、普段から水をきちんと飲めているか、水を飲みにくそうにしていないかなどをチェックし、体調の変化にいち早く気づいてあげるよう心がけましょう。