てんかん、腎臓病と闘ったハナちゃんが教えてくれたこと

今回お話をしてくれた方

今回お話をしてくださったのは、トイプードルのハナちゃんと17年8ヶ月の年月を一緒に過ごされた小野さんです。

小野さんと暮らしていたハナちゃん

ハナちゃんはママのことが大好きで、とびっきり甘えん坊な女の子でした。他の犬が大の苦手だったので、小野さんは動物病院に連れて行くとき、いろいろな工夫をされたそうです。ハナちゃんはてんかんと腎臓病を患っていましたが、最後は肺炎でお空へ旅立ちます。

愛犬の闘病生活について

「絶対に痛い思いや苦しい思いをさせたくない。」それは小野さんがハナちゃんと暮らす上で強く思っていたことでした。色々な病気をハナちゃんと一緒に乗り越えてきた小野さんに、ハナちゃんの闘病生活について伺いました。

 定期的にてんかん発作を起こすように

14歳の時、初めて激しい痙攣発作が現れたハナちゃん。動物病院でてんかんであると診断されます。最初は1年に一度くらいの頻度で起きていた発作が、徐々に三ヶ月に一度、一ヶ月に一度と、間隔が狭まっていきました。

やがて腎臓病も発症

16歳を迎えてしばらくすると、今度は腎臓病を発症します。腎臓病では食事の管理が非常に重要ですが、気持ち悪くなって食欲が低下し、療法食を食べてくれなくなるケースが多いです。ハナちゃんも療法食を食べてくれなくなり、腎臓の数値はどんどん悪化して行きました。しかし、フードを切り替えたり手作り食を試した結果、奇跡的に体重も腎臓の数値も回復します。

最期は肺炎で

今まで何度も危険な状態を乗り越えたハナちゃんですが、最後は肺炎が原因で、17歳8ヶ月のときにお空へ旅立ちます。肺炎が見つかってから、あっという間にお別れの時を迎えます。

てんかんについて

― 苦労したことを教えてください。

仕事は好きでしたが、残念ながら職場の犬に対する理解は非常に低かったです。親のお葬式や介護を理由に休職できても、愛犬が亡くなったからと言って休めない風土でした。私からするとハナは大切な家族でしたが、会社の人たちからすると「だって犬でしょ?」って。だから定期的にてんかん発作を起こすハナを置いて会社に行くときは本当に不安で、ペットシッターにお願いしようと思ったこともありました。でも、ペットシッターは元気な犬しか預かってくれません。今後はそういった体調の優れないペットのためのサービスがもっと普及してくれたらいいな、と思っています。

― ハナちゃんはずっとお留守番だったのでしょうか?

私はずっとシングルマザーだったので、働くことが当然だと思って生きていました。子どもはもう自立して一人暮らしをしていますが、それでも自分が稼がなくてはならない、と思っていたんです。だからハナには申し訳ないけど、お留守番してもらう他ないと思っていました。でも、ハナが体調を崩した頃にちょうど今の主人と一緒に住むようになって、主人が「ハナちゃんと一緒にいてあげたら?」と言ってくれたんです。あのとき主人が背中を押してくれたので、私は会社を辞める決断ができ、ハナと一緒に多くの時間を過ごすことができました。

― 治療ではどんなことをしましたか?

発作を抑えるため抗てんかん薬を飲ませていました。闘病生活後半では、毎日きっかり8時間おきに、同じ時間に投薬する必要があったので、その時間を守るのが大変でした。普通に会社勤めをしていたら8時間おきに投薬するのは難しかったと思います。

― 投薬で症状は抑えることができましたか?

在宅勤務ができるようになったので、以前よりは投薬を管理しやすくなりました。でも、毎日時間を守っていても、薬の効果は徐々に薄れていくみたいです。薬の効果が弱まると、やがて激しい発作を起こします。発作が起きると動物病院で注射をしてもらう必要があったのですが、ハナは夜に発作を起こすことが多かったので、24時間対応してくれる動物病院で処置してもらっていました。

ただ、24時間対応の動物病院が家から遠くて・・・。なので最後は注射セットをもらって、獣医さんにやり方を教わって、発作が起きたときは自宅で処置していました

― 愛犬が激しく痙攣している様子を見るのは苦しかったでしょうね…。

発作を起こしているときは本当に辛かったです。とても苦しそうなハナの様子を見て、もう諦めた方がいいのかと思ったこともありました。でも、獣医さんが言うには、てんかん発作を起こしている本人は意識がないので、苦しんでいるわけでないそうなんです。ハナが苦しくないなら頑張ろう、そう思って闘病生活を続けました。

― 発作の後はどんな様子でしたか?

発作が激しいと体力を著しく消耗します。ただでさえ高齢で弱っていたので、発作の後は全然ごはんを食べてくれないこともありました。ハナは亡くなる半年前から立てなくなったのですが、立てなくなったのも発作がきっかけだったように思います。

また、発作の直後は脳圧が上がってしまうからなのか、とにかく立って歩きたがります。立てないのに立とうとしたり、歩けないのに歩こうとすることで、一層体力を消耗していくようでした。どうしても歩きたがる時は、身体を支えて少し歩かせてあげました。そのような状態だったので、発作の後2〜3時間は目が離せない状態が続いていました。

―てんかんの闘病中、やってよかったことを教えてください。

ハナが立てなくなった数ヶ月後、知り合いの方が車椅子を譲ってくれました。試しに使ってみたら、ハナが嬉しそうにお部屋の中を歩いていたんです。やっぱり犬って自分の足で歩くことが幸せなのでしょうね。あのとき車椅子を譲って頂いて、本当に良かったと思いました。

車椅子でご機嫌なハナちゃん

それから、てんかんで発作を起こしている間、ハナは自分のことをコントロールできないので色々なところへ頭をぶつけてしまいます。発作の頻度が高くなってからは、ほとんど外出をしなくなりました。日中はハナの様子をじっくり観察して、調子が良さそうなときにサッと買い物へ出かけ、すぐ帰宅する生活が続きました。

夜はハナをサークルの中に入れて、頭をぶつけても痛くないようにサークルの柵をバスタオルで覆っていました。夜中に発作が起きてもすぐ対応できるよう、私は自分の枕元に注射セットを置き、自分のベッドのすぐ隣にハナのサークルを置いていました。最後の方は夜ほとんど眠れませんでした。

― そんなに毎晩発作が続いたのですか?

夜、隣でガサガサ音がするときは、発作を起こしているかトイレをしているかのどちらかです。ハナは年を取ってから粗相が増えたのでオムツを履かせていましたが、オムツが汚れたままにしておくのはかわいそうで・・・。いつもトイレをしたときはすぐに取り替えてキレイに拭いてあげていました。だからハナもそれに慣れて、汚れたときは教えてくれるんです。それでハナがトイレをしたときは私も一緒に起きて、オムツを変えてあげました。また、寝たきりになってもウンチをするときは自分で踏ん張りたいみたいです。なので、いつも私が後ろから支えて、ハナがトイレの姿勢を取れるようサポートしていました。

腎臓病について

― 腎臓病はいつ頃発症したのでしょうか?

腎臓を悪くしたのは16歳になってしばらくしてからです。先代の子を16歳1ヶ月で亡くしていたので、ハナが16歳に入ってからは特に健康に気を使っていました。しばらく元気にしていてくれていたのですが、ある日食欲がなくなって…。それで動物病院で検査してもらったら腎臓の数値が悪くなっていました。ハイシニアになってからは3ヶ月に一回くらいは血液検査をした方がいいのかもしれませんね。

― 治療はどのようなことをしましたか?

血が濃くなると良くないみたいで、2日に1回動物病院へ通って、1時間くらいかけて点滴をしてもらいました。てんかんのお薬と合わせると治療費が高額になって、月に20万円くらいはかかっていたと思います。

ハナは他の犬が本当にダメだったのですが、かかりつけの獣医さんがハナの性格に寄り添った治療をしてくれる方で、動物病院で治療することがハナのストレスにならないよう、点滴するときも私が抱っこした状態でさせてくれました

― とてもいい獣医さんですね。

信頼できる獣医さんを見つけることって本当に大切だと思います。腎臓の数値が悪くなって、てんかんの発作も起きてしまって、ハナがごはんを全く食べられなくなってしまったことがありました。そのとき、「もう諦めた方がいいですか?楽にしてあげるべきですか?」って先生に聞いたことがあるんです。そしたら先生が「ハナちゃんはもう少しお母さんと一緒にいたいと思いますよ。」って言ってくださって…。もうダメだと思ったことも2、3回ありましたけど、その先生のおかげで元気になって戻ってきてくれました。

17歳のお誕生日もお祝いできました♡

― 信頼できる獣医さんってどんな方だと思いますか?

ベテランで経験豊富というのもあると思いますが、やっぱり寄り添ってくれる獣医さんは信頼できると思います。ハナの場合、先ほどもお伝えした通り、他の犬が本当にダメな子でした。そんなハナの性格をよく理解してくれていたので、本来なら入院が必要な状況でも、その獣医さんは「ハナちゃんは入院なんかさせたら絶対にダメですよ。」って言って、いつも必要な処置をした後はお家に帰してくれたんです。なので本当に信頼してました。

― 闘病中に困ったことはありましたか?

腎臓病を患うと気持ち悪くなるので食欲がなくなります。食べないと体力が落ちてしまうので、獣医さんからは「ちゃんと食べさせてください。」と言われるのですが、動物病院で出される療法食が口に合わず、全然食べてくれませんでした。「何を食べさせたらいいですか?」と聞いても、獣医さんは栄養学に詳しいわけではないので答えられず…。なので自分で色々と調べて試しました。

― 腎臓病の食事は難しいですよね。工夫したことを教えて頂けますか?

カリカリは食べてくれなかったので、腎臓病の療法食の中からウェットフードや缶詰を選んで与えていました。メインで与えていたのは、ロイヤルカナンの腎臓サポート・ウェット缶とFORZA10のリナールウェット、アニモンダのインテグラプロテクトシリーズです。どうしても食べれないときは、ロイヤルカナンの腎臓サポート・リキッドをミルクのような感じで与えてました。それも少しずつ食べなくなっていって、最後は手作り食になりました。

一度の食事で食べられる量が少ないので、回数を増やして3時間おきに少しずつ食べさせました。口に入れてもなかなか呑み込めず、吐き戻しをすることもあったので誤嚥が心配で…。胃に食べ物が流れるまで、縦抱っこをしながら食べさせました。ちょうど赤ちゃんがげっぷをするまで縦抱っこをするのと同じような姿勢で食後しばらく抱っこしていました。

― 手作り食ではどんなものを作っていたのでしょうか?

お粥が多かったです。鶏肉のミンチ肉(人間用)や療法食のウェットフードをお粥と一緒に煮込んだり、ビーフジャーキーをお湯で戻して、そのお湯を使ってお粥を炊いたりしました。腎臓が悪いときにタンパク質を与えるのはNGですが、そうやって風味をつけてあげると食べてくれたんです。

炊いたお粥をさらにミキサーにかけて、シリンジで口の中に入れて与えていました。フードを変えた結果、体重も腎臓の数値も戻って、安心していたんです。

肺炎について

― 肺炎に気づいたのはいつでしたか?

老犬になると温度調節ができなくなりますよね。だから春先までは床暖房を入れて、お部屋の温度管理にはとても気を使っていました。無事冬を乗り越えて、5月に入って日差しもポカポカしてきて、寒さが和らいできた頃です。ハナが少し咳をしているのに気付きました。もともと老犬で寝たきりだったので、様子がおかしいのに気付けなかったのかもしれません。あれだけ嬉しそうに乗っていた車椅子も使わなくなってしまって。それで動物病院へ連れていきました。

― 動物病院では何と言われましたか?

その頃も腎臓の治療のために2日に1回は通院をしていました。腎臓の数値が回復してきて、咳も軽度だったので、獣医さんからは「年齢的なものだと思います。」と言われました。それでお家に連れて帰ってきたんです。それが金曜日のことでした。

― お家に帰ってきてからはどうでしたか?

お家に連れて帰った直後は問題なさそうでした。でも翌日の夕方頃、やっぱり元気がなく、明らかに様子がおかしかったので、急いで動物病院へ連れて行ったんです。その日はいつもハナのことを見てくださる獣医さんが学会か何かで不在で、代わりに若い獣医さんが対応してくださいました。レントゲンをとったら、肺が真っ白で…。重度の肺炎にかかっていることが発覚しました。

― どのような治療が必要だったのでしょうか?

呼吸が苦しそうだったので、すぐに酸素室に入れる必要があると言われました。酸素室に入れておかないと、このまま家に連れて帰っても死んでしまいますって。動物病院が嫌いな子だったので今まで一度も入院をさせたことはなかったのですが、無理に連れて帰ると死んでしまうかもしれない。ものすごく悩みました。

でも、今まで何度も「もうダメだ」って思ったところから戻ってきてくれたので、1日酸素室に入ることできっとまた元気になって戻ってきてくれると思いました。

― それで入院させることに決めたんですね?

ネットで犬用の酸素室を探してすぐに購入しましたが、土曜日の夜のことだったので週末配送は間に合いません。それで1日だけ入院させて、その間にハナをおうちに迎える準備を整えておこうと考えました。

でも翌日の朝に、動物病院から緊急の連絡があって…。急いで行くとハナが延命処置をされていました。ずっとハナを苦しませることだけはしないと決めていたので、延命処置はお断りしました。

― ハナちゃんはママに会えたのでしょうか?

私が動物病院に到着したとき、ハナはもう意識がありませんでした。私が抱っこするとハナのつけていたオムツがびっしょり濡れていて…。いつも汚れていたらすぐに取り替えていたので、急いでオムツを外してあげたんです。そしたら「ママ、やっと帰ってきたの。」って顔をしてくれたので、きっと私が来たこと、わかってくれたのだと思います。そのまま抱っこして一緒にお家に帰りました。お家に帰る途中、私の腕の中でハナは息を引き取りました。

闘病生活を送っている飼い主さんにアドバイスがあればお願いします

信頼できる獣医さんを見つけることは本当に大切です。でも、愛犬のことを誰よりもわかっているのは、ずっと一緒に暮らしていた飼い主さんだと思います。あのとき、医学的な観点で言えば、確かにハナには入院が必要だったのでしょう。でも、いつもハナを担当してくれた先生だったら、入院させずにお家に帰してくれたかもしれません。獣医さんのアドバイスももちろん大切ですが、最後はやっぱり誰よりも愛犬のことをわかっている飼い主さん自身の判断を信じるべきだと思います。

それから、17年と8カ月のハナとの生活の中で、ハナを一番愛おしいと思ったのは、ハナの闘病生活が始まってからのような気がします。体力的にも時間的にも経済的にも大変な時には違いないのですが、一番お互いに心が通い合っていたように思います。何にも代えがたい濃密な愛あふれる時間を私はハナからもらいました。ハナにも、ハナの3年前に亡くなった先代のリズにも、今も感謝が絶えません。闘病生活は本当に大変だと思いますが、ぜひこの時を大切になさってください。

17歳8ヶ月でお空へ旅立ったハナちゃん