愛犬が突然意識を失って、痙攣を始めたらどう対処すべきなのでしょうか?初めての経験なら飼い主さんもびっくりして、強い不安に襲われることと思います。しかし、年を取った犬が痙攣を起こすことはわりと多く、その原因も様々なので、落ち着いて対応することが必要です。ここでは老犬が痙攣を起こす原因と対策について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
老犬が痙攣発作を起こしたらどうすべき?
痙攣発作とは
痙攣発作は何かしらの原因で無意識に筋肉が勝手に収縮している状態です。激しく震える、硬直したようにつっぱるなど、症状の現れ方はさまざまですが、全身症状が現れているときは意識が朦朧としていることが多く、犬は周囲のことをはっきりと認識できる状況にありません。
愛犬が苦しむ姿に動揺して抱きかかえたり、大きな声で呼びかけたりする飼い主さんもいらっしゃると思いますが、まずは愛犬の身に起きている痙攣が、緊急事態なのか様子を見るべきものなのか、きちんと判断をして適切に対処しましょう。
痙攣の症状は?
痙攣発作といっても、原因によって症状が少しずつ変わってくることがあります。体の一部だけが震えたり、全身が激しく震えたり、硬直したりすることもありますので、その後の治療のためにも犬の様子をしっかり観察することが重要です。痙攣の症状には、以下のようなものがあります。
- 全身が硬直したようにつっぱる
- 体を反らせるようにして激しく震える
- 倒れた状態で全身をガクガクさせる手足をバタバタと動かす
- 体や顔の一部などが震えだす、つっぱる
全身が痙攣して意識が朦朧としている状態のときは、よだれを流したり失禁してしまったりするケースもあります。尚、痙攣が起きる時間帯は夜中や明け方、寝ているときに起こることが多いと言われています。
老犬が痙攣発作を起こした時の対処法について
突然、愛犬が痙攣を起こしてしまったら、飼い主さんはびっくりして慌ててしまうものです。しかし、適切な治療をするためには、飼い主さんが愛犬の状況をしっかり把握する必要があります。ここでは犬が痙攣発作を起こしたときに、飼い主さんがとるべき対応をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
痙攣の対処法① できるだけ落ち着いて
今まで一度も愛犬が痙攣発作を起こしたことがないのなら、突然のことに動揺してしまっても無理はありません。しかしできるだけ落ち着いて、愛犬のためにできることをしてあげましょう。まず、犬が痙攣発作を起こしたときにやってはいけないことを把握しておく必要があります。
- 痙攣をとめようと無理に犬を押さえつけない。
- 犬を抱きかかえたり、体を揺らしたりしない。
- 大きな声で犬に呼びかけたり、音で刺激したりしない。
痙攣発作を起こしている犬は意識が朦朧としていることがほとんどです。そのため、抱っこしたり、さわったりすると噛みつくことがあります。しかも無意識の行動のため、噛む力を加減することができず、非常に危険です。痙攣中の犬に触れるときは十分注意してください。
顔や体の一部が痙攣しているケースでは、犬の意識がはっきりしていることもあります。ただ、この場合も意思とは無関係に起きていることなので犬自身が強い不安を感じ、混乱している状態にあります。むやみに口の前に手を出したり、犬を刺激したりしないようにしましょう。
痙攣の対処法② 周りのものを片付ける
痙攣発作を起こしたときは、愛犬がどこかにぶつかって怪我をしないように周りのものを片付けてあげましょう。また、段差のある場所や階段付近で痙攣発作を起こしたときは、落ちないように注意して見守ります。
痙攣の対処法③ 緊急事態かどうか確認する
犬の痙攣発作には緊急処置が必要なものと、少し様子を見ていても大丈夫なものがあります。例えば夜間に痙攣発作が起きたとき、すぐに救急病院へ連れて行くべきか、朝まで待ってかかりつけの動物病院へ連れて行くべきか、飼い主さんは判断しなければなりません。とはいえ、目の前で愛犬が痙攣を起こしていたら、冷静に判断することは難しいと思いますので、迷ったときは救急病院に電話をして獣医師の指示に従いましょう。
ここでは緊急レベルの高いケースとそうでないケースをご紹介しますので、参考にして頂けたらと思います。
<緊急レベルの高いケース>
- 痙攣を起こす前から具合が悪そうだった。
- 痙攣以外にも食欲不振、嘔吐、体重減少など他の症状が見られる。
- 痙攣がおさまった後もぐったりして元気がない。
- 10分以上痙攣が続いている。
- 腎臓病、心臓病、肝臓病など治療中の病気がある。
<朝まで様子を見ても大丈夫なケース>
- なんの前触れもなく、いきなり痙攣を起こした。
- 痙攣がおさまったあと、ケロリと元気に過ごしている。
もし緊急処置が必要となった場合、事前に連絡をしておいた方が動物病院側も準備することができるので、到着後速やかに処置を始めることができます。
痙攣の対処法④ 可能であれば記録を取っておく
痙攣発作の原因を特定するためには、痙攣が起きたときの様子を獣医師に詳しく説明する必要があります。そこで、愛犬が痙攣発作を起こした時は、動画でその様子を撮影するといいでしょう。飼い主さんが口頭で説明するよりも、より正確な情報を獣医師に伝えることができます。
また可能であれば、痙攣の時間も合わせて記録しておきます。愛犬が元気な時から下記のようなチェックリストをつくっておくと、より多くの情報を獣医師に伝えられるので大変おすすめです。
- 痙攣発作の日付と時間帯
- 痙攣が始まってから、終わるまでの時間
- 過去に何回痙攣発作があったのか
- 初めて発作が起きたのは何歳だったか
- 痙攣発作前に食べたものはあるか
- 嘔吐をしたか
- よだれを垂れたか、泡を吹いたか
- 痙攣発作を起こしたときの様子(前後の行動も含めて)
- 犬が生活していた室温
- 全身の痙攣か、部分的なものだったか
- 痙攣の様子をみて気がついたこと
痙攣発作のケース別の対処法について
痙攣したとき、口から泡を吹いた
痙攣発作を起こした犬が口から泡を吹くことはよくあります。泡を吹く時は意識がなく、瞳孔が開き、失禁や脱糞、嘔吐することも多いです。激しい症状に飼い主さんは強い不安を感じることと思いますが、基本的な対処法は変わりません。まずは落ち着いて、愛犬の様子を見守ってあげてください。
痙攣しながら吠える、鳴く
痙攣発作を起こした犬が鳴き叫ぶように吠えることがあります。意識がないまま声が出ることもありますし、意識がある状態で違和感を感じて鳴くこともあります。愛犬の鳴き声を聞くと飼い主さんも心苦しいと思いますが、この場合も対処法は変わりません。
尚、認知症や体の痛み、体調不良などが原因で、震えながら吠えることがあります。これは痙攣発作とは異なるものの、適切な治療が必要となります。痙攣発作なのか、震えなのか自分で判断できない場合は、一度かかりつけの動物病院に相談してみるとよいでしょう。
痙攣後に徘徊する、歩き回る
痙攣発作を起こした犬は、発作の直後にウロウロと歩き回ることがあります。脳の興奮が完全に収まっておらず、朦朧としながら徘徊することもありますし、意識はハッキリしているものの、犬自身が混乱している状態を自分で落ち着かせようとして歩き回ることもあります。
このようなときは歩き回るのを無理に止めようとせず、落ち着くまで様子を見守ってあげてください。下手に触れると、そのことが刺激になって再び発作を誘発させてしまう可能性があります。ただ、犬の方から助けを求めて近寄ってくるようであれば、声をかけて落ち着かせてあげるとよいでしょう。普段から抱っこをされると落ち着くような子の場合は、抱っこしてあげても構いません。
老犬が痙攣するときに考えられる原因は?
痙攣発作は様々な原因が考えられるため、特定するには色々な検査をする必要があります。何かしらの病気が原因で痙攣が起きているときは、食欲の低下や体重の減少、元気の喪失などの症状も一緒に現れることもあります。ここではシニア犬によく見られる痙攣発作について取り上げます。
脳の暴走(てんかん)による痙攣
脳が異常な興奮状態に陥ることによって痙攣発作を起こすことがあります。いわゆる「てんかん」によるもので、激しい全身発作が現れることが多く、痙攣しながら口から泡を吹いたり、お漏らしすることもあります。
てんかんは大きく、以下の二つに分けられます。
- 特発性てんかん:脳に目で見てわかるような原因がないのに、てんかん発作が周期的に起きるもの。
- 症候性てんかん:脳の外傷や脳腫瘍、脳炎、水頭症などが原因で、てんかん発作を繰り返すもの。
①の特発性てんかんは遺伝的な要素が関連していると考えられており、若い犬(1歳前後)で発症することが多いです。一方、高齢犬の場合は②の症候性てんかんの可能性が高いと考えられます。
てんかんによる痙攣は、他の痙攣と違って前触れなく現れることが多く、通常2分くらいでおさまります。痙攣がおさまった後ケロリとしている、痙攣がおさまった後しばらく朦朧とした状態が続き、だんだん普通の状態に戻っているのであれば、てんかんが原因となっている可能性が高いでしょう。
てんかん発作を初めて見る飼い主さんは非常に動揺してしまうと思いますが、痙攣がおさまったら緊急処置をする必要はないので、夜間に発作が起きたときは翌朝かかりつけの動物病院へ連れて行っても大丈夫です。ただし、痙攣が長く続いたり1日に何度も起きたりする場合は危険です。痙攣が10分以上止まらないとき、1日に2回以上痙攣が起きたときは、すぐに動物病院へ連れていきましょう。
腎臓病
腎臓病を患っている犬が痙攣発作を起こしたときは注意が必要です。本来、尿として体外に排出されるはずの毒素が体にたまって、痙攣を引き起こしている可能性があります。この場合、早急な治療が必要になりますので、夜間であってもすぐに動物病院へ連れていきましょう。痙攣以外の症状としては、元気の喪失、嘔吐や下痢が見られます。
心臓病
心臓病を患っている犬が痙攣発作を起こしたときも早急な治療が必要です。心臓がうまく機能せず、酸素を取り込めていない可能性があります。非常に危険な状態で、一刻も早く治療をする必要がありますので、愛犬の異変に気づいたら早急に動物病院へ連れていきましょう。移動中、動物病院に連絡をしておくと、到着後速やかに処置をしてもらうことができるはずです。連絡をする際は心臓病を患っていること、痙攣を起こしていることをきちんと伝えましょう。
低血糖症
糖尿病を患っている犬が痙攣発作を起こした時も注意が必要です。自宅でインスリンを投与する際、量を間違えて過剰に与えてしまうと、低血糖症に陥って痙攣発作を起こすことがあります。
低血糖症の場合、てんかんのような激しい痙攣ではなく、前足だけが突っ張ったり、意識がないのに歯を食いしばったりするような症状が見られるのが特徴です。こちらも緊急処置が必要なので、夜間であっても動物病院へ連絡を入れましょう。低血糖症が原因の場合、自宅で緊急処置を指示される場合もあります。動物病院へ連れて行く前に、電話を入れて獣医師の指示を仰ぎましょう。
中毒
人間用の薬や、犬が食べると危険な食べ物など、毒物を摂取した場合も痙攣発作を起こすことがあります。痙攣以外にもぐったりしていたり、意識を失う、口から泡を吹くなどの症状が現れることもあります。中毒症状は早急な処置が必要なので、すぐに動物病院に連れていくようにしましょう。
熱中症
犬は年をとると体温調節が苦手になり、熱中症にかかりやすくなります。前日より気温が急に上がった日や猛暑日に痙攣発作が起きたら熱中症の可能性があります。熱中症にかかると痙攣発作以外にも、ふらふら歩く、ぐったりしている、息苦しそうにハァハァと呼吸をする、大量によだれを垂らすなどの症状も見られます。早急な対応が必要となりますので、気付いたらすぐに動物病院へ連絡して獣医師の指示を仰ぎましょう。
最後に
犬は年をとると様々な体調不良が現れるようになります。痙攣発作もその一つ。いざというときに適切な対応ができるよう、普段から情報を仕入れる、チェックリストを作るなどして備えておきましょう。