人間と犬では流れる時間の早さが異なります。小さな子犬があっという間に成犬になり、やがて飼い主の年齢も追い抜いて年老いていきます。幸せな愛犬との時間には限りがあるけれど、その時間をできるだけ長く伸ばすためにできることはあるのでしょうか?ここでは犬の寿命と、長生きしてもらうためにできることをまとめました。
犬と人間の年齢
犬は人の何倍ものスピードで成長していきます。人と犬の赤ちゃんを同時に育て始めたら、人が中学生になる頃、犬はすでに還暦を迎えることになります 。このような違いはどうして生まれるのでしょうか。
犬と人間は心拍数が違う
生き物の寿命は心拍数と関係があると言われています。哺乳類の心臓が一生に打つ心拍数は決まっていて、1分間の心拍数が多いほど寿命が短くなるとされています。体の大きさや年齢によって差はありますが、犬は人間よりも1分間の心拍数が多いので、その分寿命も短くなるのです。
愛犬の年齢、人間でいうと何歳?
犬の年齢を人の年齢に換算する方法はいくつかありますが、ここでは小型犬~中型犬と大型犬を分けて考える換算方法をご紹介します。
小型犬・中型犬 | 大型犬 | ||
犬の年齢 | 人の年齢 | 犬の年齢 | 人の年齢 |
1歳 | 15歳 | 1歳 | 12歳 |
2歳 | 24歳 | 2歳 | 19歳 |
3歳 | 28歳 | 3歳 | 26歳 |
4歳 | 32歳 | 4歳 | 33歳 |
5歳 | 36歳 | 5歳 | 40歳 |
6歳 | 40歳 | 6歳 | 47歳 |
7歳 | 44歳 | 7歳 | 54歳 |
8歳 | 48歳 | 8歳 | 61歳 |
9歳 | 52歳 | 9歳 | 68歳 |
10歳 | 56歳 | 10歳 | 75歳 |
11歳 | 60歳 | 11歳 | 82歳 |
12歳 | 64歳 | 12歳 | 89歳 |
13歳 | 68歳 | 13歳 | 96歳 |
14歳 | 72歳 | 14歳 | 103歳 |
15歳 | 76歳 | 15歳 | 110歳 |
小型犬~中型犬は生後1年で人の年齢でおよそ15歳(大型犬の場合は12歳)まで成長し、その後成長スピードが緩やかになると言われています。
また、犬の年齢を人の年齢に算出する計算式もあるので、それを使って愛犬の年齢を換算することもできます。
- 子型犬~中型犬の場合:(犬の年齢+4)× 4
- 大型犬の場合:12+(犬の年齢-1)× 7
犬の寿命はどのくらい?
「平成30年全国犬猫飼育実態調査(一般社団法人ペットフード協会)」によると、犬の平均寿命は14.29歳です。内訳としては超小型犬が15.01歳、小型犬が13.91歳、中型・大型犬が13.36歳となっています。
大型犬は小型犬に比べると寿命が短い
大型犬は小型犬に比べて体が大きい分、成長スピードが速く、細胞分裂が盛んなことから、ガンなどの病気を発症しやすいと言われています。また、大型犬は体の大きさに対して心臓などの臓器が小さいため、体に負担が掛かりやすくなることも、寿命が短い原因と考えられています。
雑種の方が寿命が長いって本当?
様々な犬種の掛け合わせによって生まれた雑種犬は、純血種に比べて遺伝性の病気を発症するリスクが低くなると言われています。また、遺伝子を引き継ぐ際には、より生命力の強いものを受け継いでいくため、体が丈夫になりやすいとも言われています。しかし、だからと言って雑種が純血種よりも寿命が長いと言うわけではありません。これらはあくまでも遺伝による体質の話であり、犬の寿命には生活環境も関わっているからです。
犬の寿命は年々伸びてきている
一昔前まで犬の寿命は7~8歳と言われていましたが、現在の平均寿命は約14歳となっており、2倍ほど寿命が伸びたことになります。その理由は、ペットフードと動物病院の普及にあると言われています。
昭和の頃の犬のごはんと言えば、人の食べた残り物が主流でした。しかし人の食べ物は味が濃く、犬に与えるとミネラルや脂肪分・たんぱく質などの栄養素が過剰だったり、反対に犬にとって必要な栄養素が不足していたりするため、犬にとって適切な食べ物とは言えません。今でこそ、人間の食べ物を犬に食べさせてはいけないと知られていますが、当時はそれが当たり前だったため、犬にとって大きな負担となっていたと想像できます。
また、ここ20年の間に獣医療も飛躍的に進歩してきました。動物病院の数が増え、ペット保険も普及し、愛犬のちょっとした体調の変化を気軽に獣医師に相談できるようになりました。健康診断や予防医療の需要が高まり、病気が早期に発見できるようになったことも 大きいと言われています。
ギネスの最長記録はなんと29歳!
ギネスブックには、平均寿命を遥かに超える29歳まで長生きをした犬が掲載されています。それは、オーストラリアのビクトリア州で暮らしていたオーストラリアン・キャトル・ドッグのブルーイ。1910年に家族として迎え入れられ、1939年に29歳5ヶ月でその生涯を閉じましたが、この記録は90年近くが経過しようとしている今でも塗り替えられていません。
それからギネスブック非公式ではありますが、同じくオーストラリアのビクトリア州で暮らしていたオーストラリアン・ケルピーのマギーが、30歳の世界最高長寿記録を更新したのではないかと言われています。飼い主のブライアン・マクラーレンさんによると、マギーはマクラーレンさんの息子さんが4歳の時に家族の一員となり、息子さんが34歳の時に息を引き取ったことから30歳と推定されるものの、年齢を証明するものがないことから、公式の記録として残ることはありませんでした。とはいえ、犬の30歳を人の年齢に換算すると134歳(上記表を参照。オーストラリアン・ケルピーは中型犬)となることから、マギーはかなりの長寿だったと言えるでしょう。
愛犬の寿命を伸ばすためにできること
(画像:Instagram / @hanahana.shii)
愛犬との幸せな暮らしを伸ばしたいのであれば、ただ寿命を伸ばすのではなく、健康に過ごせる時間を伸ばすよう意識したいものです。愛犬の健康寿命を伸ばすためには、どのようなことに気を付けるとよいのでしょうか。
食事の管理
シニア犬用のフードは、シニア犬にとって不足しがちな栄養をバランスよく含んでいます。そのためフードを購入する際は、年齢に合わせたものを選ぶことが大切です。もし食べにくそうな場合は、カリカリを水でふやかしてあげたり、ウェットフードに変えてあげると食べやすくなるでしょう。そうすることで水分を補うこともできます。1回で食べきれない時は量を減らし、回数を増やしてあげてください。
運動の習慣
高齢になるとお散歩に行きたがらなくなる犬もいますが、だからといって運動を止めてしまうと足腰の筋力が衰え、さらに運動不足になるという悪循環を招いてしまいます。疲れている時や体調が優れない時はもちろん体を休めた方がよいのですが、できるだけ運動を習慣にすることが大切です。
ただし、坂道などの起伏があるコースや階段、歩きにくい砂利道などは犬への負担が大きくなってしまうので、できるだけ体に負担がかかりにくい道を選ぶようにしましょう。お散歩の時間を短めにしたり、途中で休憩を挟んだりしつつ、無理のない範囲で体を動かしてあげてください。
歯磨きの習慣
健康を維持するために欠かせないのが、歯のメンテナンスです。歯磨きをしないと歯垢が溜まり、歯垢を放置しているとやがて石灰化して歯石になります。歯垢や歯石は細菌の塊で、歯肉炎を引き起こしたり歯の骨組織を破壊する原因になるため、放置していると歯がぐらついたり、抜けたりするようなります。また、繁殖した細菌が毛細血管を通じて心臓や脳に到達すると、心臓疾患や腎臓疾患などの重篤な病気の原因になることもあります。毎日歯磨きをする習慣をつけておくことが、健康に長生きする秘訣となります。
ストレスの軽減
ストレスは、犬の寿命と大きな関係があります。特に高齢になるとちょっとしたストレスで体調を崩しやすくなるので、愛犬に健康で長生きしてもらうためには、ストレスフリーな環境を整えてあげる必要があります。
ちなみに犬は集団行動をする生き物なので、単独でいるよりもいつも近くに家族の気配が感じられる方がリラックスできると言われています。飼い主さんに触れられることでもストレスを軽減できるので、毎日のブラッシングなどでスキンシップを取るのもよいでしょう。
動物病院による健康診断
獣医師による健康診断を受けている犬はそうではない犬と比べて、長生きする傾向にあることがわかっています。少なくとも年に1回、シニアになれば年に2回は定期的に動物病院に通い、体の状態をチェックしてもらいましょう。
セルフチェックの実施
愛犬の体調の変化は、毎日を共に過ごしている飼い主さんだからこそわかるもの。食事や水分の量が減ってはいないか、大量の目ヤニがでていないか、耳を触られるのを嫌がらないか、皮膚に掻きむしった跡や出来物がないか、下痢や便秘をしていないか、歩き方がおかしくないかなど、愛犬の様子をしっかりと観察しましょう。
最後に
獣医療の進歩によって、犬の平均寿命は大きく伸びました。とはいえ、犬が元気なシニアライフを送れるかどうかは、飼い主さんのお世話の方法によって変わってきます。不安なことや疑問点があればかかりつけの獣医さんに相談して、犬にとって過ごしやすい環境を作ってあげてください。